日の光
ロイとジャックは話しながら歩いていた。
「ワイズさんは何処にいるんですか?だいぶ歩きましたよ。」
「そう文句言うなよ。もうすぐ着くから。そんなことより、ワイズさんの部屋見ても驚くなよ。」
「ワイズさんの部屋?今さら何見ても驚きませんよ。昨日まで人間だったのに、今は死神ですよ。他に驚くことがあります?」
ロイとジャックは笑っていた。
同じ年齢くらいの少年が二人揃えば会話も弾む。
ジャックにとってはロイの存在は大きなものだった。
「さて、着いたぞ。」
ロイは路地裏に入る狭い路地で足を止めた。
そこは部屋なんてない、ビルとビルに挟まれた小さな路地。
一体どこに部屋があるのかジャックは辺りを見回した。
「何処にも部屋なんてないじゃないですか?部屋どころか入り口すらありませんよ。」
ロイは指をさした。
ロイは自分の足元をさしていた。
「マンホール!?」
ジャックは素直に驚いていた。
「まさか、ここからはいるんですか?」
「そうだ。」
「だってこの先は下水道ですよ!」
「そうだ。」
ロイは本気のようだ。
ジャックは冗談だと思いたい所だったが、この様子では入らないといけないようだった。
「それじゃ行こうか。」
ロイはマンホールに手をかけ、蓋をずらした。
中からは異様な臭いがする。
ロイは下水道へジャックを誘ったが、ジャックは拒絶していた。
「ロイが先に入ってくださいよ!」
「先輩の命令は絶対だぞ。」
「まったく…」
ジャックは呆れていた。
マンホールをどかし、ジャックは下水道へ降りはじめた。
手すりがヘドロまみれでヌルヌルしている。
下水道へつく頃には引き返したい気持ちでいっぱいだった。
地下は地上の世界とはまるで違う。
ジメジメとした空気。
異様な臭い。
薄暗い世界。
足元にはゴキブリやネズミがうろうろしている。
「こんな所に住んでるんですか?」
「あぁ、ワイズさんは人目が嫌いなんだ。」
「だからって何も下水道に住まなくても…」
「だからここを選んだんだよ。ここにだれかが住んでるなんて思わないだろ?」
ロイは得意気に話してくれた。
下水道の道は地上の道とは違いとても歩きにくい。
ヌルヌルしているうえに薄暗い。
湿っぽさまである。
あまり好んで人が出入りする場所ではなかった。
「さぁついたぞ。別名地獄の扉だ。」
下水道のつきあたりには大きな鉄の扉があった。
丸く大きな錆び付いた扉で、銀行の金庫の扉のようだった。
「覚悟はいいか?腰を抜かすなよ?」
ロイは楽しそうにジャックの方を見た。
扉に手を駆けたロイは目を閉じてゆっくりと息を吸い込み吐き出した。
次の瞬間。
重そうな扉がゆっくりと動き始めた。
「ロイさん!何をしたんです!?」
「この扉は死気に反応する仕掛けだ。」
「死気?」
「死神が持ってる気だよ。死気が大きいほど死神としての力が強いことになる。ジャックだって少ないけど死気を持ってるはずだ。」
「僕もですか!?でも、使い方が…」
「いいよ。使えないとしても時期に使えるようになるさ。」
扉が完全に開く頃、部屋の様子がハッキリとわかっていた。
「何なんですかこれ…」
そこには見たこともない生き物の標本や、機械。
読めない文字で書いてある本や、書類が散乱していた。
どれを手にとっても興味深いものばかりだった。
「ここは、研究室ですか?」
「研究室以外に何に見える?こんなリビング嫌だろ?」
ロイは冗談で返した。
「ほら来た。お出ましだ。」
研究室の奥の方から人が歩いてきた。
背丈は小さく、まるで白衣を着た子供のような姿だ。
年齢は50歳を過ぎている様に思った。
肌を見たときにシワが多いからだ。
「死神が来るとは珍しいじゃないか。」
ワイズの声はか弱く、おじいちゃんのような口調だった。
「ワイズさん。お久しぶりです!」
「丁度良いところに来た!早速だが1つ頼まれてはくれんか?」
「何をです?」
「新開発した物があってな。その実験をしたいじゃが、なかなかはかどらんくてのぉ。」
「何を開発したんです?」
「悪霊が近くにいたら教えてくれる装置。その名も"ラグーン"じゃ。」
「ラグーン?」
「この装置を腕にはめてるだけで、悪霊が近くにいたら音で教えてくれる。仕事中に悪霊に邪魔されたくないじゃろ?」
「でも、悪霊なんて大したことありませんよ。襲ってきたら返り討ちにしてやればいいだけですから。」
ロイは淡々と答えた。
「どうやら君の所にはまだ話がいってないようじゃな。」
「何かあったんですか?」
「君のところの、ブラキとズールの2人が大変なんじゃよ。」
一体、ブラキとズールに何が起こったのか!?