旅路
ハンズは小さく震えだした。
「ちょ、ちょっと!どうなってるんです?」
ハンズの目が白くなりはじめ、黒目の部分がなくなりはじめた。
「大丈夫なんですか!?」
「心配ない。それよりもハンズの言葉をよく聞くんだ。」
ハンズの震えも止まり、目も普通の目に戻っていた。
「ジャックとか言ったな?」
「私は、死神にパワーを与える能力を持っている。今、お前に少しパワーを与えた。はじめは使いづらいかもしれないが、時期に使えるようになる。用件は済んだろ?早く帰ってくれ。」
「な、何なんです?」
ジャックには何が起こったのか、見当もつかなかった。
ハンズは、積み木の所に戻り、積み木を重ね始めた。
「あの…。ありがとうございました。」
ジャックは訳もわからず、お礼を言うしかなかった。
「ところでロイ。黒魔天団の話は聞いているのか?」
ロイはジャックの方を見ると、こう答えた。
「あぁ。話では聞いてるよ。でも今はその話はやめよう。今日はジャックを色々と案内しないといけない。また来るよ。」
ロイはハンズにそう言うと、ハンズは鼻で笑い、こう言った。
「次に会うとき生きてたらな。」
ロイは部屋を出た。
ジャックもロイに続き、部屋を出ようとしていた。
「ちょっと待て!お前に話がある。少し時間はあるか?」
「えぇ。まあ少しなら。」
ジャックはハンズに呼び止められた。
「お前、子供の頃の記憶ってあるか?」
「子供の頃の記憶?」
「そうだ。例えば、母親の顔とか、父親の顔とか、とりあえず何でもいい。子供の頃の記憶だ。」
「正直何も覚えてない…。」
「やはりな…。」
「どうかしたんですか?」
「いや。こっちの話だ。気にするな。それより死神の仕事を早く覚えろよ。」
ジャックは不安になりながらも、外で待つロイの所まで急いで飛び出した。
「ジャック!何してたんだよ!今日は忙しいんだぞ!あともう一軒寄る所があるんだ。遅れるなよ。」
ロイがジャックにそう言うと、二人はまた歩き始めた。
「もう一軒は誰なんです?」
「ワイズっていう男に会いに行く。」
「ワイズ?どんな人なんです?」
「そうだなぁ。死神界のエジソンってところだな。」
ジャックとロイは、歩きながら会話を楽しんでいた。
「ロイさん、1つ聞いてもいいです?」
「なんだ?」
「黒魔天団のことなんですけど…。」
「やっぱりな。そう来ると思ったよ。」
「俺だって死神ですよ!話くらい聞かせてくれても…。」
「わかったよ。教えてやるよ。黒魔天団て言うのは、俺たち死神にとって厄介な奴らなんだよ。」
「どんなふうに厄介なんです?」
ジャックは、ロイの話に興味があった。
ジョニーに聞いても教えてもらえなかったが、ロイなら教えてくれる。
ジャックは、そう確信していた。
「黒魔天団は、理由もなく人の魂を死昇させたりしている。それだけじゃない。奴らも正真正銘の死神なんだ。」
「ただ、理由を詳しく知る者はいない。ただ、存在しているのは間違いない。」
「でも同じ死神なら何故、厄介なことを。」
「これは絶対に誰にも言うなよ!」
ロイはジャックの耳元で小声で話しはじめた。
「噂なんだけど、黒魔天団のメンバーに元ジョニーのグループに入ってた奴がいるみたいなんだ。」
「えっ!じゃあ、俺たちみたいな死神だったって言うことですよね。」
「そういうことになる。俺が死神になったときにはすでに黒魔天団の存在は噂されてた。はっきりいって俺にもどんな奴等なのか想像がつかない。」
黒魔天団の存在は明らかだった。
しかし、ロイでさえもあまりよく知らない存在だった。