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太陽の夜  作者: フジシン
3/11

真実の答え

ジャックは、困惑した自分に何を言い聞かせれば良いのか分からないでいた。


「最後のチャンスってなんだよ!?」


ジャックは血の気が引いたのを覚えていた。


「所でジャック君。私の名を覚えているかね?」


ジャックは忘れていた。

夢の中で確かに名前を言ったはずだった。


「…」


「やはり、覚えていないな。」


男は笑いながら話を続けた。


「私の名はジョニー=バウアー。思い出したかな?ジョニーでいい。」


ジョニーは空に浮かぶ月を見上げ、最後のチャンスについて話しはじめた。


「ジャック君。最後のチャンスって何だと思う?」


「分からない。あんたの存在も。チャンスの意味も。」


「そんなに怖い顔しなくてもいいだろ?私は、助けに来たんだよ。」


「意味を説明しろよ!話しはそこからだ!」

「わかったよ。じゃあ、説明するよ。」


ジョニーは白髪混じりの髪と髭を生やしていたが、喋る口調は年寄り染みていなかった。見た目は50代のオジサンだが何処か若い感じがした。


「ジャック君。君の人生は無駄が多すぎる。まず、家族がいない。彼女がいない。友達もだ。」


「別に関係ないだろ!両親は僕が産まれてすぐに事故で死んだ!友達だって必要だと思ったことがない!彼女なんてなおさらだ!」


「では、仲間はどうだろう?仲間はいるのか?自分を助けてくれる。自分を守ってくれる。そんな仲間は?」


「もういいだろ。僕にはそんな人はいない。だからって困ったこともない。もう、ほっといてくれ。」


「ほっとく訳にはいかない。君には時間がない。このビルの横で起きた事故を覚えているかね?」


「あぁ。車同士の事故だろ?」


「あれは、私が起こした。」


「!?」


「運転手のルーシー=キャメロン22歳女性と対抗車のマッド=ステイサム36歳男性。両方とも死亡。」


ジョニーは内ポケットから白い手帳を取り出し読みながら見ている。


「その手帳に書いてあるのか?」


ジャックは手の込んだ冗談だと笑っていた。

ジョニーは、屋上から事故現場を見下ろし、話を続けた。


「ルーシーは彼氏にフラれてね。今から彼氏を殺しに行くところだったんだ。マッドは麻薬の売人。何人もの人生を潰してきた。だから、私が二人を事故に合わせてこの世から消したんだ。」


ジャックは頭のおかしい人の話しは聞けないと思った。


「悪いがジョニーさん。俺は帰るよ。楽しかったよ。それじゃ。」


ジャックは、帰ろうと屋上の出口に向かって歩き始めた。

「いいのかい?君は死ぬかもしれないんだよ?」


ジョニーは得意気に言い放った。


「死ぬ?面白いじゃないか!やってみろよ!」


ジャックはジョニーに言い寄った。


「だから、最後のチャンスなのだよ。君には2つの人生が選べる。」


「2つの人生!?」


「1つは、このまま腐って生きる人生か。もう1つは、死してなお薔薇色の人生をおくるか。」


ジャックは、頭を抱えていた。

ジョニーの言っていることが何一つ理解できないからだ。


「つまり、どうゆうことなんだ?解りやすく説明してくれ!」


「無駄な人生を送る君はもうすぐ死ぬことになっている。だが、神がそれを同情した。そこで君にはもう1つの人生を用意した。それが、死神としての人生だ。」


「死神として?」


「さっきも言っただろ?事故は私が起こした。無駄な人生を送る予定の人だったからだ。」


「あんた、本気で言ってるのか?ただの偶然だろ!」


「じゃあ、試してみればいい。死神になるにも、人として生きるにも、一度は死ぬ必要がある。」


「わかった。そこまで言うなら死神になってやるよ!だから、殺してみろよ!」


ジャックは、呆れ果てていた。

頭をかきむしりながら屋上の出口に向かって歩き始めた。








「君は合格だ。」

ジョニーはジャック に手をかざした。

後ろを向いているジャックは気づくはずはなかった。

ジャックは出口の階段の一段目を踏んだ時、異変が起きた。


「あんた、俺に何をした…」


ジャックは胸を押さえ、膝から崩れ落ちた。


「ジャック君。君は合格だ。君なら優秀な死神になれる。第2の人生に幸運を…」


そう言い残すと、ジョニーは何処かへ行ってしまった。


「こんなの…嘘だろ…これは夢なんだ…」


視界はやがて狭くなり、ボヤけはじめた。

心臓の鼓動が大きくなり、頭が割れそうな位、大きな音に聴こえる。


「こんなの…嫌だ…」







ジャックの心臓は止まった。

人としての人生に幕を下ろしたのだ。

目を見開いたまま、階段で胸を押さえ、仰向けに倒れている。






ジャックは死んだ。

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