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太陽の夜  作者: フジシン
2/11

夜の空

ジャックは、事故の起きた方を見た。

すぐに、野次馬が集まりはじめ、車を囲むようにガヤガヤと騒いでいる。

車を覗き込む人。

痛々しい表情をして通り過ぎる女性。

少し笑いながら見ている若い男性。

携帯で誰かに連絡をしているサラリーマン。

色々な人が車の周りに集まっていた。


「何もこんなに集まらなくても。」


ジャックはコンビニの出入り口から家の方へと歩きだそうとしていた。

一瞬だった。

ほんの一瞬だけ野次馬の中の誰かと目があった気がした。


「!?」


ジャックはすぐに気づいた。

薄明かりの中、野次馬の群れに紛れてこっちを見ている。

そんな気配を感じていた。


「あいつだ…」


野次馬に紛れてこちらを見ていたのは、夢に出てきた男だった。


「嘘だろ…あれは夢だったはず…」


ジャックは身に覚えのない衝動にかられていた。

夢であった人物が、目の前にいる。

その男がこっちを見ている。

何者なのか?

何の目的で?

近づきたい。

でも怖い。

ありとあやらゆる感情が津波のように押し寄せてきた。

脳は危険を察知し、体を震わせている。

興味なんかでは絶対に関わってはいけない。

本能的に理解していた。

ジャック自身も分かっていた。

あり得ないことが起きている。

また、夢を見ているのかと。

ジャックは、体を小さく震わせながら男と目があっていた。

男はジャックをしばらく見つめると、ニヤリと笑ったように見えた。


ジャックは裏切った。

脳が危険信号を出し、体を震わせ、ジャックの思考も危険を察知していた。


ただ、細胞だけが素直だった。

買い物袋を手から落とすと、ジャックは男の方へと歩き始めた。

男も、ジャックが近づいてきたのを確認すると事故現場を後にするように歩き出した。


「ちょっ、ちょっとまて!」


ジャックは、全速力で男を追った。

男は事故現場の真横に建っている古いビルへと入った。


「くそっ!どこ行きやがった!」


ジャックもビルの中へと入っていった。

しかし、そこは廃墟のビル。

人などいるはずもない。静かなビルの中、風の音と暗い世界だけが広がっていた。

唯一、自分の心臓の鼓動だけはきこえる。

ジャックはゆっくりと階段を上がって行く。

コツコツと自分の靴の音がビルの中を走り回っていた。

ジャックは上へと階段をゆっくりと上がって行った。

どこからか風の音がする。


「風の音がする。どこか、ドアが開いてるのか?」


上に進むにつれて、風の音と、風圧が増してゆく。


「屋上か!屋上のドアが開いてる!」


ジャックは屋上へと飛び出した!

屋上は、完全に夜の世界へと姿を変えていた。

月は三日月の形をしていた。

程よく冷たい風が頬をかすめている。

屋上の出入り口の最も遠い場所に人影が見えた。

その影は、街の明かりに反して大きな影になっていた。


「そこにいるのは誰だ!」


ジャックは声を張り上げた。

依然として影は動かない。

ジャックは近づき押さえきれない感情をぶつけた。


「正体を見せろ!あんたは何者なんだ!俺に何の用だ!」


影はゆっくりとジャックの方へと近づき、話しはじめた。


「ジャック=デップ君。私だよ。君も気づいているだろ?前に一度会ってる。」


「前に一度会ってる?あれは、夢の中の話だ!現実にはあり得ない!」


「私の言葉を覚えてるかね?」


「言葉!?」


「私は君に伝えたはずだ。近いうちに君にまた会うと。」


ジャックはどうしたらいいのか困惑した様子だった。


「君にチャンスを与える。最後のチャンスだ。」


「最後のチャンス?」



一体、最後のチャンスとは何か?

この男の目的とは?

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