表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/26

森の動物達②

「まぁ、大変!」

リリアは思わず声をあげ、すぐにうさぎへと近づいた。

うさぎは怯えた様子で耳をぴくぴくと震わせている。


罠が足に食い込んでいる、すぐに外してあげないと

出血もしているし、腫れも酷いわ

この場所での猟は禁止されているのに、いったい誰が・・・

リリアは罠に挟まったうさぎの足を見ながら、考えを巡らせていた。


『リリア、たすけてあげて」

ふとそんな声が聞こえて後ろを振り返ると、アークがこちらをじっと見つめていた。


今のはアークの声・・・?

植物たちの声だけではなく、動物の声も聴けたことに、リリアは驚いた。

だが今は、そのことについて考えている暇は無い。


リリアはうさぎの足に付いている罠を、慎重に取り除いた。

足の傷は相当深いようだ。

深く息を吸い、意識を集中させる。傷が治るよう強く願うと、うさぎの傷ついた足が淡く光った。


数秒後光が消えると、うさぎは傷が完全に癒えたかのように、ぴょこんと立ち上がった。

傷ついていた足を確認するように動かすと、リリアの目を見つめた。

『ありがとう』

そう聞こえたような気がする。うさぎはリリアに背を向け、元気に森の奥へと駆けていった。


「この力は動物の声を聴いて、怪我を癒すこともできるのね」

無事に元気になったうさぎの後ろ姿を見ながら、リリアは安堵の息をついた。


魔法の力の余韻に浸っていたリリアだったが、急に全身から力が抜けるような感覚に襲われ、膝から崩れ落ちそうになった。

まるで休みなく半日ほど全力疾走したかのように、全身が重く感じる。

温室で花を咲かせた時に感じた疲労感とは、比べ物にならないほど強い。


これは魔力を消耗しすぎたのかしら?

リリアは近くの木の幹に寄りかかり、大きく息を吐いた。


アークはそんなリリアの様子を、まるで心配しているかのような目で見つめた。

そして、彼女の腕にそっと鼻を擦り寄せる。

アークの温かさと優しさを感じたリリアは、ふっと微笑み、語りかける。

「大丈夫よ、アーク。少し疲れてしまっただけなの。休めばすぐに元気になるわ」


どのくらい時間がたったのだろうか。

アークは、まるでリリアの体を支えるかのように、そばでじっと寄り添っていた。

「もう大丈夫!支えてくれてありがとう」

リリアがそう言うと、アークは鼻を鳴らし返事をする。

そして森の奥へと姿を消した。


「罠の件はお父様に報告しないとだめね。あと治癒魔法のことも伝えないと」

そうつぶやいたリリアは、ようやく落ち着いた心で、食べ損ねていたサンドウィッチを取り出し、口に頬張った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ