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奉仕活動③

次の瞬間。


馬車は一段と大きく揺さぶられ、遠心力でリリアとアリアの身体が宙に浮く。

動くものすべてがゆっくりと見えた。

景色は斜めに倒れていき、馬車が横転するのだとリリアは本能的に悟った。


(なんとかしないと二人とも無事では済まない。今は命が最優先よ!もう、どうにでもなれ!)


リリアは覚悟を決め、激しい揺れの中で素早く体勢を立て直した。

そして体中に膨大な魔力を巡らせ、全神経を集中させ詠唱を始める。

つい先日、アルフレッド殿下と練習した浮遊魔法の原理を思い出す。


「我に宿る力よ、地の重力より解き放て――」


アリアは、リリアが発した聞き慣れない言葉に驚き、リリアの顔を凝視した。

その瞬間、リリアの瞳がまるで黄金の光のように強く揺らぎ、輝いていることに気が付く。

アリアの頭の中には『魔法』という言葉が思い浮かんだ。


「バランス・アラインメント!」


リリアの詠唱と共に、馬車全体が一瞬、淡く光輝いた。

斜めに傾いていた馬車は、まるで見えない巨大な手に支えられたかのように、転倒寸前の状態から奇跡的にバランスを取り戻す。

馬の暴走そのものは止まらなかったが、馬車は辛うじて体勢を保ち、坂道の下でようやく御者によって停車させられた。

大きな怪我無く停まれたことに、リリアは安堵の息を吐く。


「アーリィ!!大丈夫?」


リリアはすぐにアリアの無事を確認すると、彼女も打撲程度で大きな怪我は無かった。

だが、リリアが魔法を使っているという信じられない事実に直面したアリアは、目を見開いたまま息をすることも忘れて固まったままだ。


「・・・っ!アーリィ。あのね――」


魔法について全て洗いざらい話してしまおうと心に決めたリリアだったが、外から聞こえる甲高い叫び声がその告白を中断せざるを得ない状況にした。


「きゃーー!!」


リリア達がその声に急いで馬車の扉を開けると、先ほどまでいた坂の途中、わきの木にぶつかって停止している別の馬車があった。


そしてその開いたドアから、信じられない光景が飛び込んでくる。


「なんなのよ・・・なんなのよ、これ!!!」


頬を押さえているセシリアが、怒りと混乱に満ちた顔をしている。

彼女の手は、鮮血で赤く染まっていたのだ。


御者はこの世の終わりかのように青白い顔をしており、同乗していた取り巻きはセシリアの周りであたふたしていた。


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