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悪夢

リリアは自室に戻ると、そのままベッドに身を沈めた。

先ほどの出来事を、頭の中で何度も思い返す。


ずいぶん前からアルフレッド殿下に魔法が使えることをバレてしまっていたのだ。

でも、リリアの望みを聞き入れて、この力を内緒にしておいてくれた。

しかも、魔法について教えてもらえるという。


(アルフレッド殿下が、理解のある人で良かった・・・)


そう安心したからなのか、リリアは瞼がだんだん重くなるのを感じた。

今日はレリーフの一件から、アルフレッドからの呼び出しまで大忙しだった。

その疲労からか、リリアはすぐに目を瞑り、深い夢の中へと誘われていったのだ。



その日、リリアは夢を見た。

気が付くとリリアは深い森の中に立っている。

だがそこはアステル領ではなく、見たことのない森だ。

周りには見慣れない木々が生い茂り、ウサギやリスなどの小動物もいた。

近くに谷があるのか風が強い。その風が木々をざわめかせ、不気味な音を立てている。


少し先には、大きく険しい山が見える。

気温は暖かいのに、その山頂には雪が冠のように積もっていた。

リリアは、まるで何かに導かれるようにその山を目指して歩きはじめる。


しかし、歩くにつれて景色は一変する。

先ほどまでは明るく暖かい中にいたのだが、急激に辺りが薄暗くなっていった。

肌に痛みを感じるような寒さが押し寄せ、思わず両腕を抱く。

どんよりとした雲が太陽を遮り、森の不気味さが増していく。


そして、段々と生臭いにおいが漂ってくるのを感じた。


ふとリリアの視線の先に、水たまりのようなものを見つけた。

引き寄せられるように近寄ると、匂いがさらにきつくなり、それが地面に広がる赤黒い血であったと気が付いた。

そこには、大きな血だまりができていたのだ。


(人?何の血なの?)

リリアが疑問に思っていると、引き裂かれるような獣の鳴き声が聞こえた。

その声のする方を見た瞬間、悪夢は最悪の形となる。


視線の先、不気味に曲がった木の枝に、アークの首だけがぶら下がっているのが見えた――。



はっとリリアは飛び起きた。

全身にはねっとりとした冷たい汗がびっしょりついている。

激しく脈打つ心臓がうるさく響いて鳴りやまない。


「・・・ひどい夢。一体なんなの」

あれほど鮮明で生々しい悪夢は初めてだった。

まるで現実の出来事かのように、肌寒さや血の匂いもリアルに感じたのだ。


(すごく嫌な感じがする。まさか、正夢なの・・・?)


言葉にできないほどの不安と嫌悪感に包まれながら、リリアは重いため息をつく。

しかし極度の疲労に抗えず、再び瞼を閉じて深い眠りへと落ちていった。


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