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生徒会室①

アルフレッドは、リリアの顔を見ていつもの爽やかな笑みを浮かべた。

「リリア嬢。また君と話せて嬉しいよ。体調の悪い中、無理をさせてすまないね」


その言葉にリリアは、警戒を強めた。

(展覧室の出来事はつい先ほど起きたのに・・・私が体調を崩しているとなぜ分かったのかしら?顔色のせい?それとも誰かが報告したの?)


表面上は冷静を装いながら、リリアはにこりと笑った。

「いいえ、殿下。ご無沙汰しております」


「寂しいな。以前アルフレッドと呼んでほしいと伝えたのに」

そう言いながら柔らかく笑うアルフレッドに促され、リリアは向き合うように椅子へ腰を下ろした。



「早速だが、先ほどのレリーフの件で聞きたいことがあってね。あれは生徒会保管のものだ。調査のためにその時の状況を教えてほしいんだ」

変わらぬ口調でそう言うアルフレッドに、リリアは平静を装って答えた。


「はい。私の友人が誤って台座に触れてしまったことで、不幸な事故が起きてしまったようです。ですが幸い、あのレリーフには王宮の保護魔法が施されていたようで・・・」


リリアが言葉を続ける中、アルフレッドは静かに首を横に振った。

その瞳にはいつものような優しさは消え失せ、鋭い光が宿っていた。


「リリア嬢。君は、あのレリーフがなぜ生徒会で代々保管されてきたか知っているかい?」

リリアが戸惑うと、アルフレッドは静かに告げた。


「あの”黄金のレリーフ”には、先代国王の強大な魔力が込められている。そして、もし女神の力を継ぐ者が現れた時は、魔術が発動するように設計されていたんだよ」


アルフレッドの言葉に、リリアは全身の血の気が引くのを感じた。


「その魔術のは、王族だけが知覚できる。だからこそ、生徒会長は代々王族が担い、レリーフを見守ってきたんだ。そして、先ほどその術は確かに発動した。・・・あのレリーフは、保護魔法などではない、君の女神の魔力によって復元されたのだ」


アルフレッドは、リリアが隠していた全てを把握しているという揺るぎない事実を、冷静に突きつけた。

その顔に、もう笑顔はない。

次期王としての威厳が強く醸し出されていた。


もはや否定しても無駄だと悟り、リリアは覚悟を決めて顔を上げた。


「・・・はい、その通りでございます」


アルフレッドの表情は変わらない。


「そうか。では、聞かせてもらおう。なぜ君はその事実を、今まで王家はおろか、みなに隠していたんだ?普通ならば、すぐに報告してきてもおかしくないと思うのだが」


リリアは静かに、しかし決意を込めた声で自らの願いを口にした。


「私は・・・父と母のような自由な恋愛をして、結婚したいのです」


「恋愛?」

アルフレッドはわずかに眉を上げる。

彼の考えていた返答とはかけ離れた理由だった。


「はい。私は、政略結婚は嫌なのです。私が魔力を持つことが王家に知られれば、私の意思とは関係なく、王家や高位貴族の方との婚約を進められてしまうでしょう。ですが私は、心から愛し愛される相手と結ばれたい。そのためにただの男爵令嬢として、この学園で静かに過ごしたかったのです」


リリアの言葉にあるのは、ただ一人の少女としての純粋な願いのみだ。

アルフレッドは、その真剣な眼差しから、彼女の言葉に嘘がないことを感じ取っていた。

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