【第29章】仲間との別れ
——ベルディアの地下市場・崩壊後の静寂
悠月たちは、"神託の書"の力を完全に封じ、未来を選ぶ自由を勝ち取った。
「……本当に、終わったんだな」
仁典が剣を収め、静かに呟く。
悠月は周囲を見渡した。
崩れかけた建物、宙に舞う光の粒子——
「"決められた未来"が消えた今、これからは自分たちで未来を作るしかない」
悠月はそう言いながら、拳を握る。
「でも、それでいいのよ」
桃子が微笑む。
「未来が決まっているより、どうなるかわからない方が"生きている"って感じがするでしょ?」
悠月は彼女の言葉を聞き、静かに頷いた。
「そうだな……これからは、"選んだ未来"を歩んでいくんだ」
***
——数日後・ベルディアの城門前
戦いが終わり、それぞれの仲間たちが新たな道へ進む時が来ていた。
「じゃあな、悠月!」
仁典が大きく手を振る。
「俺は各地を回って、"帝国の残党"がこれ以上暴れないようにしてくるぜ!」
悠月は彼と拳を合わせた。
「お前がいるなら、どこだって大丈夫だな」
「へへっ、まあな!」
仁典は笑い、背を向けて歩き出す。
「私は、学問の地で"未来の知識"を広めるつもりよ」
樹絵里が静かに告げる。
「"選ばれた未来"がないなら、私たちは自分の知識で世界を導いていかないとね」
悠月は微笑み、頷いた。
「お前なら、きっとできる」
「当然よ!」
樹絵里は誇らしげに笑い、去っていった。
「俺は、世界がどう変わるか見てくる」
賢有が軽く手を上げる。
「新しい時代が始まるんだ……どんな風に人々が生きていくのか、見ておきたいんだよ」
悠月は深く頷いた。
「じゃあ、またどこかで会おう」
「おう!」
賢有もまた、新たな道へと歩いていった。
「……じゃあ、私も行くね」
佐弥香が悠月の前に立つ。
「私は、自分の町を復興させる……"未来が自由になった"なら、今度こそ"自分の居場所"を作るわ」
悠月は彼女の手を握る。
「お前なら、きっとできる」
「……ありがとう!」
佐弥香は笑い、振り返らずに走り去っていった。
***
そして、最後に残ったのは——
桃子だった。
「桃子……お前は?」
悠月が尋ねると、彼女は少し寂しげな微笑みを浮かべた。
「私はね……"まだ決めてない"」
悠月は驚き、彼女を見つめる。
「決めてない?」
「うん。未来が自由になったなら……ちょっとゆっくり考えたいの」
桃子は夜空を見上げながら、静かに続けた。
「でもね、悠月……私は、またどこかで会う気がするんだ」
悠月は彼女の言葉を聞き、微笑んだ。
「俺も……そんな気がする」
「だから、今はここで"またね"って言わせて」
桃子は悠月に手を振り、ゆっくりと歩き出した。
悠月はその背中を見送りながら、小さく呟いた。
「……またな」
そして——
悠月は、一人になった。




