【第19章】世界の真実を知る老人
——帝国本拠地への道中・廃墟と化した図書館「知識の墓所」
悠月たちは、帝国本拠地へ向かう途中、ある場所に立ち寄っていた。
「ここが……"知識の墓所"か」
悠月は、崩れかけた石造りの建物を見上げる。
「帝国に焼かれたはずなのに……まだこれだけの書物が残ってるのね」
桃子が埃まみれの書棚を見渡した。
「この場所に、本当に"神託の書"の全貌を知る者がいるのか?」
仁典が慎重に辺りを見回す。
悠月は静かに頷いた。
「俺たちが探している"世界の真実"……それを知る"最後の証人"がここにいるはずだ」
すると——
——コツ、コツ、コツ……
静寂の中、奥からゆっくりと足音が響いた。
「来たな……"未来を選ぶ者"よ」
一本の杖を突きながら現れたのは、白髪の老人だった。
「……あんたが"最後の証人"か?」
悠月が問いかけると、老人は微かに笑みを浮かべた。
「そうとも言える……"歴史を見届ける者"、とでも名乗ろうか」
「……俺たちは知りたい。"神託の書"の本当の意味を」
悠月が真剣な眼差しで言うと、老人はゆっくりと頷いた。
「よかろう……"神託の書"とは、本来何のために存在していたのか……すべて話してやろう」
悠月たちは息を呑み、老人の言葉に耳を傾けた。
"世界の真実"が、今明かされようとしていた——!!
——知識の墓所・奥の部屋
悠月たちは、白髪の老人の前に座り、"神託の書"の真実を聞こうとしていた。
「……"神託の書"とは、何なのか?」
悠月が静かに問いかける。
老人は、長い白髪を撫でながら深く息をついた。
「それは……"未来を定める書"ではなく、"未来の可能性を記す書"だ」
「可能性……?」
佐弥香が首を傾げる。
「つまり、未来を決定するものではないってこと?」
老人はゆっくりと頷く。
「そうだ。"神託の書"には、この世界が辿るかもしれない"複数の未来"が記されている。しかし、それをどう活かすかは"選ぶ者"次第だった」
悠月の心臓が高鳴る。
(じゃあ……"帝国"は、それを"支配の道具"として利用しようとしていたのか?)
「帝国は"神託の書"を独占し、一つの"定められた未来"を強制しようとした」
「そんなこと、させるわけにはいかない……!」
賢有が拳を握る。
老人は静かに目を閉じる。
「だが、それは"過去に何度も繰り返されたこと"なのだ」
「……どういう意味?」
悠月が尋ねると、老人は深く頷きながら続けた。
「"神託の書"の力を巡り、この世界は幾度となく争いを繰り返してきた。"未来を選ぶ者"が現れるたび、誰かがそれを"支配の道具"として利用しようとし、戦乱が起こった……」
悠月は言葉を失う。
「つまり……俺たちは、"同じ過ち"を繰り返そうとしているのか?」
老人は悠月をじっと見つめ、静かに言った。
「お前が"どう選ぶか"次第だ」
悠月は拳を握る。
(俺は……"未来を選ぶ者"として、本当に正しい選択ができるのか?)
その時——
——ドンッ!!
突然、外で爆発音が響いた。
「な、何!?」
佐弥香が驚く。
「帝国軍か!?」
仁典が剣を握る。
悠月は剣を手にし、老人を見つめた。
「答えは、俺が見つける……行こう!!」
悠月たちは、"神託の書"を巡る最後の戦いへと向かった——!!
——知識の墓所・外部
悠月たちは、突如響いた爆発音の正体を確かめるため、外へと飛び出した。
「敵襲か!?」
仁典が素早く剣を構える。
「帝国軍なら、ここが"神託の書の秘密を知る場所"だと気づいたのかも……」
桃子が険しい表情を浮かべる。
「悠月、どうする?」
賢有が問いかける。
悠月は素早く状況を確認し、奥の崩れた門の向こうに見えた黒い軍勢に目を凝らした。
「……帝国の精鋭部隊だ」
「ちっ、やっぱり……!」
佐弥香が緊張で拳を握る。
悠月は剣を強く握りしめた。
「ここで食い止める……"神託の書"の真実を、奴らに渡すわけにはいかない!」
「なら、やるしかねえな!」
仁典が叫び、前に出る。
その瞬間——
「……"未来を選ぶ者"よ」
背後から静かに声がした。
振り向くと、先ほどの老人が悠然と立っていた。
「……お前たちの"未来の選択"が、今試される時だ」
悠月は迷いなく頷いた。
「俺たちは、この世界の未来を帝国に支配させはしない!」
「そうか……ならば、これを持って行け」
老人は、悠月へと小さな石のようなものを差し出した。
「これは……?」
「"神託の鍵"。それを持つ者こそが、本当の意味で"神託の書"を開くことができる」
悠月は息を呑んだ。
(これが……"神託の書"の本当の鍵!?)
「お前がこれをどう使うか……それが、最後の"未来の選択"となるだろう」
悠月は、石をそっと受け取り、強く握りしめた。
「……ありがとう」
老人は微笑み、静かに言った。
「行け、"選ぶ者"よ……お前たちの戦いを果たせ」
悠月は仲間たちを見渡し、力強く叫ぶ。
「行くぞ!! 帝国軍を止める!!」
悠月たちは、最後の戦いへと走り出した——!!