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【第14章】真の敵の存在

 ——帝国要塞・脱出

 悠月たちは、"もう一人の自分"との戦いに勝利し、帝国要塞からの脱出を図っていた。

「……警備がまだ厳しいな」

 仁典が壁の影から様子を窺う。

 帝国兵たちは、要塞の警戒をさらに強めている。

「侵入者がいたことがバレたか」

 賢有が低く呟く。

「でも、ここで足止めを食っている場合じゃない」

 桃子が鋭く言う。

 悠月は拳を握りしめた。

("神託の書"の真実は、"オルディアの地下都市"にある……そこへ向かうには、ここを突破するしかない)

「行くぞ。できるだけ目立たずに抜ける」

 ***

 ——帝国要塞・地下通路

「ここから外へ出られるはず……」

 佐弥香が地図を見ながら小声で言う。

「でも、帝国の兵士がいたら?」

「その時は、戦うしかないな」

 仁典が剣を握る。

 悠月は静かに息を整えた。

(出口はもうすぐ……ここを抜ければ)

 しかし——

 ——ザッ……ザッ……!!

「……誰かいる」

 悠月はすぐに足を止めた。

 通路の奥から、黒いフードを纏った人物が歩いてくる。

「……また"影の爪"か?」

 賢有が警戒を強める。

 だが、相手はゆっくりとフードを外した。

 そして、彼の姿が明らかになった瞬間——

「……!?」

 悠月の心臓が大きく跳ねる。

 そこにいたのは、帝国の最高評議員、クロイゼン。

「お前が……帝国の黒幕か?」

 悠月が静かに問うと、クロイゼンは不敵に微笑んだ。

「そう思うか?」

「"神託の書"を独占しようとしているのは、お前たち帝国だろう」

 悠月は剣を握りしめた。

「俺たちは、その未来を阻止する」

 クロイゼンは悠然と微笑む。

「"未来"とは、そんなに簡単に変えられるものではない」

「……何?」

 悠月の眉がひそめる。

「お前たちはまだ知らない。"真の敵"の存在を」

 クロイゼンの言葉に、悠月たちは息を呑んだ。

「真の敵……?」

 明日望が囁く。

 クロイゼンは冷たく言い放つ。

「"オルディアの地下都市"へ向かえ。お前たちが何を"選ぶ"のか、見届けさせてもらおう」

 その瞬間、クロイゼンの影が揺らぎ、彼の姿は消えた——。

「くっ……!」

 悠月は拳を握りしめる。

("真の敵"……それが何なのか、オルディアへ行けば分かるはず)

「行こう。"オルディアの地下都市"へ!」

 悠月たちは、帝国要塞を抜け、新たな目的地へと向かった——!




 ——帝国要塞・脱出直後

 悠月たちはクロイゼンの言葉を胸に刻みながら、要塞の外へと駆け抜けた。

「追手が来る前に距離を取るぞ!」

 仁典が素早く周囲を確認する。

「このまま東へ進めば、"オルディアの地下都市"へ向かう道に出るはずだ」

 桃子が地図を広げながら言う。

「……だけど、気になるわね」

 明日望が小さく呟く。

「"真の敵"って、どういう意味なの?」

 悠月は拳を握りしめた。

(帝国が"神託の書"を独占しようとしていたのは確かだ……だが、クロイゼンはまるで"帝国以外に、もっと大きな脅威がある"ような言い方をした)

「答えは、"オルディアの地下都市"にある」

 悠月はそう言い、前へと進んだ。

 ***

 ——オルディアの地下都市・入り口

 悠月たちは、険しい山道を進んだ先にある、古びた石造りの門の前に立っていた。

「これが……"オルディア"?」

 佐弥香が驚きの声を上げる。

「都市……とは言えないわね。むしろ、"廃墟"のような雰囲気がある」

 桃子が辺りを見回す。

 悠月はゆっくりと門に手を触れた。

 ——ザザッ……!

 突然、門の表面に文字が浮かび上がる。

「これって……!」

 賢有が驚く。

 悠月は慎重にその文字を読んだ。

 "選ばれし者よ、未来の行方を問うため、この扉を開け"

「……やはり、この都市が"神託の書"の鍵を握っている」

 悠月は深く息を吸い、門を押した。

 ——ゴゴゴゴ……!

 門がゆっくりと開き、悠月たちは慎重に中へと足を踏み入れた。

 そこには——

 かつて栄華を誇った都市の廃墟が広がっていた。

「ここが……"オルディアの地下都市"……?」

 仁典が目を見開く。

 悠月は、都市の中心にそびえ立つ巨大な建物を見つめた。

「行こう……"神託の書"の真実が、ここにあるはずだ」

 悠月たちは、廃墟の奥へと進んでいった——。




 ——オルディアの地下都市・廃墟

 悠月たちは朽ち果てた石造りの建物が立ち並ぶ都市の奥へと進んでいた。

「まるで……"時が止まった"ような場所ね」

 桃子が辺りを見回す。

 建物の壁には、かつてこの都市に住んでいた人々の痕跡が残されていた。

「ここには、誰もいないのか……?」

 佐弥香が不安そうに呟く。

「……いや、何かの気配がする」

 仁典が警戒を強める。

 悠月は慎重に歩を進め、都市の中央にある巨大な建物の前で立ち止まった。

「これは……"神殿"か?」

 悠月は、その建物の扉に手を触れた。

 すると——

 ——ザザッ……!

 またしても、門の表面に古代文字が浮かび上がる。

「読める?」

 賢有が問いかけると、明日望が静かに頷いた。

「"未来を問う者よ、ここで真実を知れ"……そう書いてある」

 悠月は拳を握りしめた。

(ここに、本当に"神託の書"の真実があるのか?)

「行くぞ」

 悠月が扉を押すと、重々しい音を立てて神殿の中へと通じる道が開かれた。

 ***

 ——オルディアの地下神殿

「……これは……!」

 悠月たちの目の前に広がっていたのは、巨大な円形の空間だった。

 中央には、宙に浮かぶ黒い石板——"神託の書"があった。

「"神託の書"……!」

 佐弥香が息を呑む。

 悠月は慎重に前へ進み、その石板に手を伸ばそうとした——

 ——その時!

 ——ゴゴゴゴゴ!!

「地面が揺れてる!?」

 桃子が叫ぶ。

 すると、神殿の奥から黒い影が現れた。

「これは……"何"だ?」

 悠月は目を見開く。

 影はゆっくりと形を取り、やがて人の姿へと変わっていく。

 そして、その姿が完全に露わになった瞬間——

「……クロイゼン!?」

 仁典が驚愕の声を上げる。

 だが、クロイゼンは静かに微笑むと、悠月たちを見下ろした。

「いいや……"私はクロイゼンではない"」

「……何?」

 悠月は警戒を強める。

「私は"影の王"……この世界を"真の未来"へ導く者だ」

 悠月の心臓が高鳴る。

("真の敵"とは……こいつのことか!?)

「さあ、選べ……"未来"を支配するのは、お前たちか、それとも私か」

 影の王が手をかざすと、"神託の書"が黒い光を放つ。

「悠月!」

 明日望が叫ぶ。

 悠月は木剣を強く握りしめ、目の前の"真の敵"を見据えた。

 "神託の書"を巡る最後の戦いが、今始まる——!




 ——オルディアの地下神殿

 悠月たちは、"影の王"と名乗る存在を前にしていた。

「お前が……"真の敵"なのか?」

 悠月が木剣を握りしめながら問いかけると、影の王は静かに微笑んだ。

「"敵"とは限らない。私はただ、"世界の未来を統べる者"として存在しているだけだ」

「統べる……だと?」

 仁典が険しい表情を浮かべる。

「それじゃあ帝国と変わらないじゃないか!」

 影の王はゆっくりと宙に浮かび、悠月たちを見下ろした。

「帝国は"世界を支配しよう"としているが、私は違う。"未来そのもの"を創造し、世界をあるべき形へと導く」

 悠月はその言葉に反発を覚えた。

「未来は……"創る"ものじゃない。"選ぶ"ものだ!」

 影の王は一瞬、目を細めた。

「それが、お前の"答え"か?」

「……そうだ」

 悠月は強く頷く。

「お前が決める未来なんていらない。俺たちが自分の意思で未来を選ぶ!」

 すると、影の王は静かに腕を広げた。

「ならば、"証明"してみせろ……"お前の選ぶ未来"が、私に抗えるものかどうか」

 ——ゴゴゴゴゴ……!!

 神殿全体が揺れ、黒いエネルギーが渦を巻く。

「来るぞ……!」

 悠月たちは、武器を構えた。

「"影の王"……俺たちの手で倒す!」

 こうして、"神託の書"を巡る最後の決戦"が始まった——!




 ——オルディアの地下神殿

 悠月たちは"影の王"を前に、戦闘態勢を整えていた。

「証明しろ……お前たちの"未来"を!」

 影の王が叫ぶと同時に、黒いエネルギーが空間を満たしていく。

「……来る!」

 悠月は木剣を握りしめた。

 ——ズドンッ!!

 影の王が放った黒い衝撃波が床を砕き、悠月たちは飛び散る破片の中を跳ぶ。

「うわっ……!」

 佐弥香が後退しながら身をかわす。

「くそっ、こんな力……!」

 賢有が剣を振るが、影の王の周囲を覆う闇の壁にはじかれる。

「悠月、どうする!?」

 仁典が叫ぶ。

 悠月は慎重に影の王の動きを観察する。

(直接攻撃は効かない……なら、"神託の書"にある答えを見つけるしかない!)

「桃子、神託の書を確認してくれ!」

「了解!」

 桃子はすばやく"神託の書"へと駆け寄る。

「悠月、時間を稼ぐぞ!」

 仁典と賢有が影の王に向かって同時に飛びかかる。

 悠月もそれに続き、影の王の意識をそらすように動いた。

「フッ……無駄なあがきだ」

 影の王は手をかざし、闇の刃を生み出す。

「悠月、危ない!」

 佐弥香の叫びとともに、影の刃が悠月へと襲いかかった——

 ——だが、その刹那!

「"未来の鍵"……開くわ!」

 明日望が"未来の鍵"を掲げると、光が奔り、影の刃を弾き飛ばした。

「……何?」

 影の王がわずかに驚いた表情を見せる。

「"未来"は……お前のものじゃない!」

 悠月は一気に踏み込み、木剣を振り下ろした——!

 "神託の書"を巡る最終決戦は、まだ続く——!




 ——オルディアの地下神殿・最深部

 悠月の木剣が影の王へと振り下ろされる。

 ——ガキンッ!!

「……っ!」

 悠月の攻撃は、影の王の周囲を覆う闇の障壁に弾かれた。

「甘いな……"選ばれし者"よ」

 影の王が手をかざすと、黒いエネルギーの刃が悠月を弾き飛ばす。

「うわっ……!」

 悠月は地面を転がり、必死に体勢を立て直した。

「悠月、大丈夫!?」

 桃子が駆け寄る。

「……くそっ、どうすれば"こいつ"に攻撃が通るんだ?」

 賢有が剣を握りしめる。

 影の王は悠然と笑った。

「お前たちの力では、私の"闇"を断ち切ることはできない」

 悠月は立ち上がり、影の王をにらみつけた。

(こいつの力を打ち破る方法が、何かあるはずだ……!)

 その時——

「悠月、"神託の書"に記されている言葉を見つけた!」

 桃子が古代文字が刻まれた書を開き、声を張る。

「そこには……"影の王を討つには、選びし者が"真の未来"を示せ"とある!」

「"真の未来"を示す……?」

 悠月は拳を握った。

(影の王は、未来を支配しようとしている……でも、未来は"選ぶ"ものだ!)

「悠月、"未来の鍵"を使って!」

 明日望が叫ぶ。

 悠月は"未来の鍵"を手に取り、強く握りしめた。

「未来は、俺たちが決める……! 影の王、お前の"支配"なんて、認めない!!」

 悠月の言葉とともに、"未来の鍵"が眩い光を放つ。

「……何!?」

 影の王が驚愕の表情を浮かべる。

 ——ゴゴゴゴゴ……!!

 神殿全体が揺れ、"未来の鍵"が悠月の手の中で形を変え始めた。

「悠月、それが"真の選択"よ!」

 明日望が確信を込めて叫ぶ。

 悠月は、変化した鍵を剣のように構え——

「お前の"偽りの未来"を、ここで終わらせる!」

 悠月は、光の刃を影の王へと振り下ろした——!!

 "神託の書"を巡る最終決戦、ついに決着へ——!




 ——オルディアの地下神殿・最深部

 悠月は"未来の鍵"を剣のように構え、影の王に向かって全力で駆け出した。

「お前の"偽りの未来"を……ここで終わらせる!!」

 悠月の叫びとともに、光の刃が大きく輝く。

 ——ズバァッ!!

 悠月の一撃が影の王の身体を切り裂いた——

 ……はずだった。

 しかし——

「……ふっ」

 影の王は微笑みながら、傷一つつかずに悠月の攻撃を受け止めていた。

「……!? そんな、効いていない!?」

 悠月の表情が強張る。

「どういうことだ!?」

 仁典が驚く。

 影の王は静かに言った。

「お前の"選択"には、まだ"確信"が足りない」

「……何?」

 悠月は眉をひそめた。

「未来を"選ぶ"とは、ただ"願う"ことではない。"全てを受け入れた上で、揺るぎなく歩む"ことだ」

 影の王は悠月の瞳をじっと見つめた。

「お前は、本当に"すべての未来"を受け入れられるのか?」

 悠月は息を呑んだ。

(……俺は、まだ迷っている?)

「悠月、あなたならできる!」

 明日望の声が響く。

「"どんな未来"でも、あなたが選ぶなら、それが"本物の未来"になる!」

 悠月は拳を握りしめ、深く息を吸った。

(俺は……どんな未来を望む?)

 過去の戦い、仲間との旅、そして"もう一人の自分"との対決——

 悠月はこれまでのすべてを振り返り、静かに目を閉じた。

 そして——

「……決めたよ」

 悠月はゆっくりと目を開き、"未来の鍵"をしっかりと握った。

「俺の未来は、俺自身が作る。どんな運命でも、俺が選んだ道なら、それが"本物"だ!」

 その瞬間——

 ——ドオオォォォン!!

 "未来の鍵"がさらに強く輝き、悠月の手の中で"真の剣"へと変化した。

「……そうか」

 影の王は小さく呟くと、初めて表情を変えた。

「ならば、その"未来"を示してみろ!」

 悠月は剣を構え——

「これが、俺の選ぶ未来だ!!」

 光の刃を、影の王の中心へと振り下ろした——!!

 "神託の書"を巡る最終決戦、ついに決着へ!!




 ——オルディアの地下神殿・最深部

 悠月の剣が、"未来の鍵"の力を宿し、強烈な光を放ちながら影の王へと振り下ろされた。

 ——ズバァァァッ!!

「……ッ!」

 影の王の身体を、純白の閃光が貫いた。

「これは……!」

 影の王が驚愕の表情を浮かべる。

 悠月は息を切らしながら、強く言い放った。

「お前がどんな未来を創ろうとしても……俺は、自分の選ぶ未来を歩む!」

 光がさらに強く輝き、影の王の身体を包み込んでいく。

「ぐっ……! まさか、"未来の鍵"が……ここまでの力を……」

 影の王の姿が揺らぎ始める。

 悠月の手の中にある剣は、まるで"真実の未来"を示すかのように鼓動を打っていた。

「悠月……勝ったの?」

 佐弥香が息を呑みながら尋ねる。

「いや……まだ、完全には……!」

 悠月は警戒を解かず、影の王の様子を見つめる。

 影の王は、淡く微笑みながら、ゆっくりと目を閉じた。

「お前が"未来を選ぶ者"か……」

 その声は、もはや敵意のない静かな響きだった。

「ならば……私は、お前にすべてを託そう」

 影の王の身体が光に包まれ、ゆっくりと消えていく。

「……消えていく?」

 賢有が慎重に呟く。

 影の王は、最後に悠月を見つめ、静かに言った。

「"神託の書"は、未来を決めるものではなく、選択の可能性を示すもの……それを忘れるな」

 そして——

 影の王は、完全に光の中へと消え去った。

 ***

 ——オルディアの地下神殿・静寂

「……終わったのか?」

 仁典が剣を下ろす。

 悠月はしばらく影の王がいた場所を見つめた後、"神託の書"へと視線を向けた。

「"未来は選ぶもの"……それを、俺たちが証明したんだ」

 桃子が深く息をつく。

「これで……"帝国の支配"は終わるの?」

 悠月は静かに頷いた。

「でも、俺たちの旅は……まだ続く」

 悠月は仲間たちを見渡し、静かに微笑んだ。

「俺たちは、自分たちの未来を選び、これからも歩んでいくんだ」

 仲間たちは、それぞれ力強く頷いた。

 こうして——

 悠月たちは"影の王"を打倒し、"未来を選ぶ力"を手に入れた。

 だが、それは終わりではなく、"新たな始まり"でしかなかった。

 彼らがこれから選ぶ道は——

 無限の可能性に満ちた、"未来"そのものだった。


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