【第12章】帝国の真の目的
悠月たちはナイサスの神殿を後にし、次なる目的地——ヴェルゼ砦へと向かっていた。
「……まさか、"神託の書"が未来を決めるものじゃなく、"選ぶ"ものだったなんてね」
桃子が険しい表情で呟く。
「しかも、その未来の一つに悠月がいた……」
佐弥香の声にはまだ驚きが残っていた。
悠月は黙ったまま、拳を握りしめる。
(もし、俺が"あの黒いマントの男"になる未来を選んだら……?)
「悠月」
明日望が静かに声をかける。
「未来は、"確定したもの"じゃない。"選択"の積み重ねで決まるの」
「……分かってる」
悠月は深く息を吐き、視線を前に戻した。
「だから、"真実"を知る必要がある。ヴェルゼ砦で、帝国が何を隠しているのかを」
「その前に……問題があるぞ」
仁典が地図を広げながら言った。
「ヴェルゼ砦は帝国の重要拠点のひとつ。正面突破は絶対に無理だ」
「また"潜入"作戦か……?」
賢有が苦笑する。
悠月は慎重に地図を見つめた。
「前回、黒木聡彦からヴェルゼ砦の情報をもらっていたよな?」
「そうね。"裏口"があるって言ってたわ」
桃子が指を地図の一点に置く。
「ここ……砦の地下水路。これを使えば内部に潜入できるはず」
「でも、どうやってそこまで近づく?」
佐弥香が不安そうに尋ねる。
「ヴェルゼ砦周辺には帝国軍の巡回部隊がいる。近づけばすぐに怪しまれるぞ」
悠月は考え込んだ。
(何か方法は……)
すると、明日望が静かに言った。
「"隠れ蓑"があるわ」
「隠れ蓑?」
「ヴェルゼ砦の近くには"労働キャンプ"がある。帝国が使役する人々が働かされている場所」
悠月の心臓がざわつく。
(……帝国が人々を強制労働させている?)
「そこに潜り込めば、自然に砦へ接近できるわ」
「……なるほど」
仁典が頷く。
「帝国の監視が厳しくても、労働者なら目立たず砦に入れる」
「でも、危険よ」
佐弥香が不安そうに眉をひそめる。
「バレたら即刻処刑される可能性だって……」
悠月は拳を握りしめた。
(それでも……やるしかない)
「決まりだな」
悠月は仲間たちを見渡し、強く言った。
「ヴェルゼ砦への潜入作戦——"労働者になりすまし、砦内部へ侵入する"」
仲間たちは緊張しながらも頷いた。
「行こう。"神託の書"の真実を知るために!」
こうして、悠月たちはヴェルゼ砦への潜入を決行する——!
悠月たちは、ヴェルゼ砦の近くにある労働キャンプへと向かっていた。
「ここが……帝国が管理している労働者の収容所か」
仁典が険しい表情で呟く。
視線の先には、高い柵と監視塔が建てられた敷地が広がっていた。
「ひどい……」
佐弥香が声を震わせる。
中には、鎖につながれた人々が重い荷物を運ばされていた。
「帝国は、こんなことを……」
悠月は拳を握りしめる。
("神託の書"の真実を知る前に、まずはこの"現実"を知らなければならない)
「行こう」
悠月たちは、労働者に紛れるため、慎重に行動を開始した。
***
——夜、労働キャンプ
悠月たちは、身を汚し、労働者に扮して収容所へと潜り込んでいた。
「……警備は思ったより厳しいな」
賢有が低く呟く。
周囲には武装した帝国兵が巡回し、逃亡を防いでいた。
「悠月、このままじゃ砦には入れないぞ」
仁典が慎重に言う。
「どうする?」
悠月は深く息を吐き、周囲を観察した。
(何か、砦に近づく手がかりは……)
すると、明日望が静かに呟いた。
「……"搬送"の機会があるわ」
「搬送?」
桃子が首を傾げる。
「このキャンプの労働者の一部は、定期的にヴェルゼ砦へ運ばれるみたい」
「……つまり、その搬送の機会を利用すれば、自然と砦へ潜入できる」
悠月は確信する。
「よし、その作戦で行く!」
悠月たちは、次の搬送機会に紛れ込み、ヴェルゼ砦へ向かうことを決めた——!
——夜明け前、労働キャンプ
悠月たちは、ヴェルゼ砦への搬送を利用するため、慎重に動いていた。
「……搬送される労働者の名簿があるはずだ」
仁典が周囲を警戒しながら囁く。
「俺たちの名前がないと、当然乗せてもらえねぇ」
「どうする?」
佐弥香が不安そうに尋ねる。
悠月は静かに答えた。
「名簿を改ざんする」
「名簿の管理場所はどこにある?」
桃子が辺りを見回す。
「キャンプの事務所の中だろうな」
賢有が慎重に言う。
「でも、兵士が見張ってるぞ」
悠月は拳を握り、考えを巡らせた。
(正面から行けば確実に怪しまれる……なら、別の方法を)
「……明日望、"未来"は見えてるか?」
悠月が尋ねると、明日望は静かに頷いた。
「"一人だけなら"、うまく侵入できるタイミングがある」
「……俺が行く」
悠月は決断した。
「えっ、悠月一人で?」
佐弥香が驚く。
「誰かがついていったら、リスクが高くなる。それに、俺は足音を殺して動ける」
「確かに……」
仁典が頷く。
「なら、お前が行け」
「気をつけてね」
桃子が心配そうに言う。
「任せろ」
悠月は身を低くし、事務所へと向かって走り出した——!
***
——キャンプ管理事務所
悠月は慎重に扉の隙間から中を覗く。
(兵士が一人だけ……机に座っている)
「チャンスは一度きり……!」
悠月は静かに忍び込み、兵士に気づかれないように名簿を探す。
——ガサッ!
(あった……!)
悠月は、素早く名簿の一部を修正し、自分たちの名前を追加する。
「……これで、俺たちも搬送対象になった」
悠月は慎重に書類を元に戻し、事務所を後にした。
***
「どうだった?」
悠月が戻ると、桃子が小声で尋ねた。
「成功した。俺たちの名前は名簿に載った」
「よし、これでヴェルゼ砦へ行けるな」
賢有が拳を握る。
「次は……搬送の時を待つだけだ」
悠月たちは息を潜め、ヴェルゼ砦への道が開かれる瞬間を待った——。
——夜明け、労働キャンプ
悠月たちは搬送の準備が始まる瞬間を待っていた。
「来た……!」
佐弥香が小声で囁く。
帝国兵たちが、労働者たちを選別し、馬車へと誘導している。
「名簿は問題ないはず……」
悠月は緊張しながら、自分たちの名前が呼ばれるのを待つ。
「次、こっちに乗れ!」
帝国兵の指示とともに、悠月たちは他の労働者とともに馬車へと乗り込んだ。
「よし……計画通りだ」
仁典が小さく呟く。
「でも、気を抜くなよ。ヴェルゼ砦に着いたら、すぐに行動を開始しないと」
賢有が警戒を強める。
悠月は頷いた。
(ここからが本番だ……!)
***
——数時間後、ヴェルゼ砦・搬送所
「着いたぞ!」
帝国兵の声とともに、悠月たちは馬車から降ろされた。
「おい、お前らはこっちだ!」
悠月たちは、他の労働者とともに砦内部へと誘導される。
「悠月……作戦は?」
桃子が小声で尋ねる。
悠月は慎重に辺りを見渡しながら答えた。
「まずは、内部の構造を把握する。警備の状況を確認し、"神託の書"の情報がある場所を探る」
「手早くやらないと、動きが取れなくなるぞ」
仁典が鋭く言う。
悠月は拳を握りしめた。
("神託の書"の真実が、この砦にある……なら、必ず突き止める!)
悠月たちは、ヴェルゼ砦内部での潜入作戦を開始した——!
——ヴェルゼ砦・内部
悠月たちは、労働者として砦内部に潜入した。
「……とにかく、まずはこの場所を把握しないと」
悠月は周囲を見渡す。
砦の内部は、巨大な石造りの建物で、いくつもの廊下や階段が入り組んでいる。
「帝国兵の数が多いな……」
賢有が低く呟く。
「簡単には動けないってことか」
桃子が慎重に警戒する。
悠月は拳を握りしめた。
(この砦のどこかに、"神託の書"の情報がある……)
その時——
「おい、お前たち!」
帝国兵が近づいてきた。
悠月たちは一瞬身構えたが、帝国兵は無表情のまま言った。
「新入りか? なら、倉庫の整理を手伝え」
悠月たちは顔を見合わせた。
(倉庫……?)
「……わかりました」
悠月は素直に従うふりをしながら、情報を探ることにした。
***
——ヴェルゼ砦・倉庫
悠月たちは、大量の木箱や麻袋が積まれた倉庫へと案内された。
「ここで何をすればいい?」
仁典が尋ねると、帝国兵は淡々と言った。
「運び出す準備をしろ。今夜、"本部"へ送る物資がある」
「本部……?」
佐弥香が小さく呟く。
悠月はすぐに察した。
("神託の書"に関するものが含まれているかもしれない!)
「今夜、ここから何が運び出されるんですか?」
悠月はあえて無邪気な労働者を装いながら尋ねた。
帝国兵は一瞬こちらを睨んだが、すぐに言った。
「余計な詮索はするな。お前らは言われたことをやればいい」
「……わかりました」
悠月は大人しく頷いた。
(確実に何かある……この"本部"へ向かう輸送に、何としてでも関わらないと!)
「悠月、どうする?」
桃子が小声で尋ねる。
悠月は決意を込めて言った。
「今夜、この"輸送"に紛れ込む。"神託の書"の真実を知るために!」
悠月たちは、決死の覚悟で次の作戦を決行する——!
——夜、ヴェルゼ砦・倉庫
悠月たちは、輸送の準備が進められる倉庫の中で慎重に動いていた。
「……あの木箱の中に紛れ込めば、輸送される先へ行けるはずだ」
仁典が低く呟く。
「問題は、どうやって気づかれずに入るか、ね」
桃子が周囲を見渡す。
倉庫内には複数の帝国兵が警備しており、無防備に動けばすぐに怪しまれる。
「……時間を稼ぐ必要があるな」
賢有が慎重に言う。
悠月は考えを巡らせた。
(直接入り込むのは難しい……なら、帝国兵の注意を逸らすしかない)
「……倉庫の奥にあるランプを割る」
悠月が小声で言った。
「ランプを割れば、火の気を警戒して帝国兵が動くはず。その隙に俺たちは箱に紛れ込む」
「なるほど……やってみる価値はあるな」
仁典が頷いた。
「私がやる」
佐弥香が小石を拾い、慎重に狙いを定める。
「……よし、行く!」
***
——ガシャン!!
倉庫の奥で、ガラスの割れる音が響く。
「……何だ?」
帝国兵たちがそちらに意識を向ける。
「火の手は!? 確認しろ!」
兵士たちが慌てて動き出す。
「今だ……!」
悠月たちは素早く動き、輸送用の木箱の中に滑り込んだ。
「……ふぅ、なんとか成功したな」
仁典が安堵の息をつく。
「でも、ここからが本番よ」
桃子が低く呟く。
悠月は木箱の中で拳を握りしめた。
(この輸送の先に、"神託の書"の真実がある……)
***
——深夜、輸送開始
馬車に積まれた木箱が揺れる。
悠月たちは、息を潜めながら目的地へと運ばれていった——。
"帝国の真の目的"が、ついに明らかになる。
——深夜、輸送馬車
悠月たちは木箱の中でじっと息を潜めながら、馬車が揺れる感覚に身を委ねていた。
「……どれくらい走った?」
桃子が小声で囁く。
「感覚的には……一時間以上は経ってるな」
仁典が慎重に答える。
悠月は箱の隙間から外を覗き込んだ。
月明かりに照らされた道が続いている。周囲には森が広がり、遠くには砦の灯りが小さく見える。
(ヴェルゼ砦を出て、どこへ向かってる……?)
「目的地は、"本部"って言ってたよね」
佐弥香が小声で言う。
「でも、それがどこなのかは……」
悠月は考え込んだ。
(帝国が"神託の書"の真実を隠そうとしているなら、それに関する場所へ向かっているはず)
「……そろそろ、確認する必要があるな」
賢有が低く呟いた。
悠月は頷き、慎重に木箱の蓋を少しだけ開けた。
——そして、目に飛び込んできたのは……巨大な要塞だった。
「……あれが"本部"?」
悠月は息を呑んだ。
要塞の周囲には高い城壁と見張り台が並び、帝国の旗が翻っている。
「ただの拠点じゃない……これは、帝国の"心臓部"だ」
仁典が険しい表情で言う。
悠月は拳を握る。
(ここに"神託の書"の真実がある……!)
しかし、その時——
——ガタン!
突然、馬車が止まり、兵士たちの声が響いた。
「到着したぞ! 物資を運び出せ!」
「まずは中身の確認だ!」
悠月たちは、身を強張らせた。
(……このままじゃ、見つかる!)
「どうする、悠月?」
桃子が緊張した声で囁く。
悠月は、素早く状況を判断する。
(今、動けば怪しまれる……でも、何か手を打たないと!)
「……気を引く手段を考える」
悠月は、小さな木片を拾い、隣の木箱の隙間に落とした。
——カサッ
「……ん?」
兵士の一人が振り向く。
「何か動いたか?」
「いや、気のせいじゃないか?」
「念のため確認するぞ!」
悠月は息を呑んだ。
(……くそ、バレるか!?)
すると、その時——
——ドゴォォォン!!!
要塞の遠くから、爆発音が響いた。
「何だ!?」
兵士たちが一斉にそちらを向く。
「侵入者か!? 配備を強化しろ!」
「確認に向かえ!」
悠月たちは、驚きながらも、すぐにその隙を突く準備を始めた。
「チャンスだ……!」
悠月は小声で仲間たちに合図を送る。
「今の混乱に乗じて、馬車から抜け出す!」
悠月たちは、要塞の真実へと迫るため、慎重に動き出した——!
——帝国要塞・輸送区域
爆発音の余韻が響く中、悠月たちは慎重に馬車の隙間から外を窺った。
「……警備が混乱してるな」
仁典が低く囁く。
「今が抜け出すチャンスだ」
悠月は静かに頷き、仲間たちに合図を送る。
「音を立てるな。静かに降りるぞ」
賢有が先に動き、周囲を警戒する。
「……よし、いける」
悠月たちは順番に馬車から抜け出し、物資の影に身を潜めた。
***
——帝国要塞・内部通路
「ここからどうする?」
桃子が小声で尋ねる。
「"神託の書"に関する情報がどこにあるかを探さないと……」
佐弥香が不安そうに言う。
悠月は周囲を見渡しながら考えた。
(この要塞は帝国の心臓部……情報が保管されている場所は限られるはずだ)
「……"中央管理棟"に向かう」
悠月は決断した。
「帝国の機密情報は、必ずそこにあるはず」
仁典が慎重に頷く。
「だが、警備が厳しいぞ」
「だからこそ、今の混乱を利用する」
悠月は素早く地図を確認する。
「こっちだ……!」
悠月たちは、帝国の秘密が眠る中央管理棟へ向かって動き出した——。
——帝国要塞・中央管理棟
悠月たちは混乱に乗じて要塞内部へと潜入し、中央管理棟の近くまでたどり着いていた。
「……ここが情報の中枢か」
仁典が壁に背を預けながら低く呟く。
建物の正面には、厳重な門と数名の帝国兵が配置されていた。
「どうやって中に入る?」
賢有が慎重に尋ねる。
悠月は辺りを見渡しながら考えた。
(正面突破は無理だ……他に入り口は?)
すると、明日望が静かに囁いた。
「"北側の壁"に、換気口があるわ」
悠月は驚きながらも頷く。
「換気口……なら、中へ忍び込めるかもしれない」
桃子が素早く周囲を確認する。
「警備の視線をどうやってかわす?」
悠月は拳を握り、考えた。
(何か……気を逸らせる手段が必要だ)
「……"別の場所"で騒ぎを起こす」
悠月は素早く決断した。
「俺が反対側で音を立てる。その隙に、みんなは換気口から中へ入れ」
「危なくない?」
佐弥香が不安そうに言う。
「やるしかない」
悠月は小さく息を吐いた。
「合図したら、すぐに動いてくれ」
仲間たちは静かに頷く。
***
——帝国要塞・管理棟周辺
悠月は慎重に兵士たちの背後へと回り込み、地面に転がっていた鉄片を拾った。
(これを投げて注意を逸らす……)
——カラン! カラン!
「ん? 何の音だ?」
帝国兵がそちらを向く。
「誰かいるのか?」
「確認しろ!」
悠月は即座に影に身を潜めた。
(……今だ!)
仲間たちはその隙に、換気口へと滑り込んだ。
悠月もすぐにその場を離れ、換気口へと向かった。
「よし、入る!」
悠月たちは慎重に換気ダクトを進み、中央管理棟の内部へと侵入することに成功した。
——帝国要塞・中央管理棟 内部
悠月たちは換気口を抜け、中央管理棟の奥深くへと潜入していた。
「……成功したな」
仁典が低く囁く。
「でも、ここからが本番よ」
桃子が慎重に辺りを見渡す。
廊下は静まり返っており、明かりの灯る扉がいくつも並んでいる。
「どこに"神託の書"の情報がある?」
佐弥香が小声で尋ねる。
悠月は慎重に考えた。
(機密情報があるなら、警備が最も厳重な場所に……)
「……"最奥の部屋"だ」
悠月は決断した。
「警備の配置を見ても、一番重要なものはそこにあるはず」
「でも、簡単には近づけなさそうね」
賢有が低く呟く。
悠月は息を整え、仲間たちを見渡した。
「見つからずに接近するしかない。このまま静かに進むぞ」
***
——中央管理棟 最奥部
扉の前には二人の帝国兵が警備についていた。
「どうする?」
仁典が囁く。
悠月は考えた。
(正面突破は無理……何か別の方法で)
その時——
「鍵が開いている……!」
明日望が小声で言う。
「……つまり、誰かがすでに中にいる?」
桃子が息を呑む。
悠月は慎重に決断した。
「兵士に気づかれないように、素早く中に入る……!」
仲間たちは頷き、息を潜めて慎重に扉の隙間から滑り込んだ。
***
——帝国機密保管室
「ここが……!」
悠月たちは目の前の光景に息を呑んだ。
部屋の中には、巨大な本棚と数多くの巻物、書物が保管されていた。
「"神託の書"に関する記録がここにある……!」
悠月は拳を握る。
しかし、その時——
「誰だ!?」
部屋の奥から、すでに何者かが資料を漁っている姿が見えた。
「……誰かいる!」
賢有が剣を抜く。
「侵入者は俺たちだけじゃないってことか……?」
悠月は、ゆっくりとその影へと近づいた——。
"神託の書"の真実に迫る者は、悠月たちだけではなかった……!
——帝国機密保管室
悠月たちは、部屋の奥で何者かが資料を漁る姿を見つけた。
「……誰だ?」
悠月が低く問いかける。
その影は、一瞬動きを止めた。
——ギィ……
わずかに振り返ったその人物は、黒いフードを被った男だった。
「……お前たちも"神託の書"を探しているのか?」
低く、落ち着いた声。
悠月たちは即座に身構える。
「お前は誰だ?」
仁典が鋭く尋ねる。
黒いフードの男は、ゆっくりと顔を上げた。
「俺の名は……"アークス"」
「……"影の爪"か」
賢有が警戒を強める。
「帝国の暗殺者が、なぜここに?」
「……俺は、もはや帝国の"手先"ではない」
アークスは静かに言った。
「"神託の書"に関する真実……それを知るために、俺は帝国を捨てた」
悠月はその言葉に驚く。
「お前も、それを探しているのか?」
アークスは淡々と答えた。
「……この部屋には"神託の書"そのものはない。だが、それに繋がる"最後の手がかり"が記されている」
悠月は拳を握った。
(……ここに、本当の真実がある)
「なら、俺たちも探す」
悠月たちは警戒を解かずに、部屋の資料を調べ始めた。
***
——数分後
「……これか?」
桃子が古い巻物を取り出す。
悠月は慎重に広げ、中の文字を読む。
「……"神託の書は帝国が創り出したものではない"……?」
「どういうことだ?」
仁典が眉をひそめる。
悠月はさらに読み進めた。
"それは遥か昔より存在し、世界の未来を決定するもの——"
「やっぱり"未来を選ぶ鍵"ってことか……」
悠月は呟く。
しかし、最後の一文に目が留まった。
"神託の書の本体は、"オルディアの地下都市"に封じられている"
「"オルディア"……!?」
佐弥香が驚きの声を上げる。
「そんな都市、聞いたことない……!」
「でも、これが"神託の書"の本当のありかなら……」
悠月は拳を握りしめた。
(帝国は、この事実を隠していた……!)
すると、アークスが静かに言った。
「……これが"帝国の真の目的"だ」
悠月たちは息を呑んだ。
「帝国は"神託の書"を手に入れ、世界の未来を"自分たちの望むもの"に作り変えようとしている」
悠月の心臓が大きく跳ねる。
(……未来は"選ぶ"もの。だが、それを帝国が独占すれば……)
「帝国がこの世界の未来を決めるということか」
桃子が険しい表情で呟く。
「……そんなこと、許せるかよ」
賢有が拳を握る。
悠月はゆっくりと息を吸い込んだ。
「……俺たちが止める」
悠月は決意を固めた。
「"神託の書"を見つけて、未来を"帝国のもの"にはさせない!」
アークスはしばらく悠月を見つめた後、静かに頷いた。
「なら……俺も協力しよう」
悠月たちは新たな仲間を得て、次なる目的地——"オルディアの地下都市"へ向かうことを決めた。
"神託の書"の本当の在り処、そして帝国の支配を阻止するために——!