【第10章】追跡者と脱出劇
——夜、帝国監視施設前
悠月たちは、闇に紛れながら監視施設の外壁沿いに身を潜めていた。
「……警備は確かに手薄になってる」
仁典が小声で呟く。
「でも、完全に隙があるわけじゃないな。見張りの巡回がある」
悠月は施設の構造を確認しながら、作戦を整理する。
("未来の鍵"は施設の中央保管室にある……そこまで最短で行くには——)
「こっちだ」
悠月は手早く裏門の方へ移動した。
「監視の目を避けながら進むぞ」
桃子がすばやく周囲を確認しながら、壁際を走る。
賢有と仁典がそれに続く。
「静かに……」
明日望が小さく囁く。
「もうすぐ"交代の隙"がくるわ」
悠月たちは、施設の影に身を潜めながら、巡回の交代の瞬間を待つ。
——そして、ついにその時が訪れた。
「今だ!」
悠月たちは、闇に紛れて施設の内部へと侵入した——。
悠月たちは、帝国監視施設の裏門から内部へと侵入した。
「急げ、次の巡回が来る前に!」
仁典が小声で指示を出す。
施設内の廊下は薄暗く、静寂が支配していた。
「中央保管室はこの先だ」
悠月はラヴィスから受け取った設計図を確認しながら、進むべき道を決める。
——ギィ……
慎重に扉を開け、素早く中に滑り込む。
「ここが……」
目の前には、鉄の檻のような保管庫が並び、棚には様々な書類や宝箱が収められていた。
「"未来の鍵"は……どこだ?」
賢有が周囲を警戒しながら、素早く探索を開始する。
「おい、こっちだ!」
桃子が棚の奥から小さな黒い箱を引き出した。
「"未来の鍵"……たぶんこれだよね?」
悠月は箱を慎重に受け取り、中身を確認する。
——そこには、不思議な紋様が刻まれた銀色のプレートが入っていた。
「……これが"未来の鍵"?」
悠月は、手のひらに乗せたプレートを見つめる。
しかし、その瞬間——
——ガタン!!
「何だ!?」
仁典が振り返ると、廊下の奥で足音が響いた。
「……侵入者がいる!」
帝国兵の声!
「バレた……!」
悠月たちは、一気に緊張する。
「くそ、急いで脱出するぞ!」
仁典が剣を抜き、敵の足止めに備える。
「南側の廊下を抜ければ、裏門に戻れる!」
悠月は"未来の鍵"を握りしめ、仲間たちを見渡す。
「戦わずに逃げ切るぞ!」
「了解!」
悠月たちは、一気に走り出した——!
——帝国監視施設からの脱出劇が始まる。
「急げ!」
悠月の声とともに、仲間たちは帝国監視施設の廊下を全力で駆け抜けた。
——ダン!ダン!ダン!
背後から響くのは、帝国兵たちの追跡の足音。
「侵入者を捕らえろ!!」
怒号が飛び交い、警報の鐘が鳴り響く。
「まずいな……!」
賢有が前方を確認しながら低く唸る。
「悠月、どっちに逃げる!?」
悠月は瞬時に考えた。
(正面突破は無理だ……裏門に向かうしかない!)
「裏門へ! 走り抜けるぞ!」
仲間たちは声を合わせ、裏門へ向かって一斉に駆け出す。
しかし——
——バン!!
「……っ!」
廊下の先に、帝国兵たちが立ちはだかった。
「包囲されてる……!」
桃子が歯を食いしばる。
「どうする!? 悠月!」
佐弥香が短剣を構えながら叫ぶ。
悠月は、一瞬で状況を判断する。
(ここで立ち止まれば、確実に捕まる……!)
その時——
「……"未来の鍵"を持って、真っ直ぐ突っ切って」
明日望が悠月に囁いた。
「敵の動きを"読む"ことができる。私を信じて」
悠月は彼女の言葉を信じ、決断した。
「全員、俺についてこい!」
悠月たちは、裏門へ向けて突撃を開始した!
——決死の脱出劇が始まる。
「行くぞ!」
悠月が叫ぶと、仲間たちは一斉に動いた。
——ダン!ダン!ダン!
帝国兵たちは剣を抜き、こちらへ殺到する。
「全員、突破するぞ!」
悠月は"未来の鍵"をしっかり握りしめ、正面の兵士たちに向かって駆けた。
「悠月、右!」
明日望が指示を出す。
悠月は素早く横へ回避。
——ヒュン!
兵士の剣がギリギリで悠月の頬をかすめる。
「次、左から攻撃が来る!」
明日望の声に合わせ、悠月はすぐに屈み込む。
——ザッ!
兵士の剣が空を切り、その隙をついて悠月は兵士の脇をすり抜けた。
「すごい……!」
桃子が驚きながらも、後に続く。
「賢有、突破口を開く!」
「任せろ!」
賢有が前方の敵に向かって突進。
「おらぁ!」
大剣を振り下ろし、兵士たちの陣形を乱す。
「今だ、行け!」
仁典と佐弥香が敵の注意を引きつける。
悠月たちはその隙に、裏門への通路へと飛び込んだ。
「あと少し……!」
悠月が裏門を目指して走る。
しかし——
——ガシャアアアアン!!
「くそっ、門が閉まった!?」
賢有が歯を食いしばる。
「……どうする、悠月?」
桃子が息を切らしながら振り返る。
悠月は冷静に状況を見渡す。
(まだ脱出の道はある……!)
「屋根に登る!」
悠月は即座に決断した。
「えっ!? そんなことできるの!?」
佐弥香が驚く。
「できる、やるしかない!」
悠月は壁際の木箱を足場にし、一気に跳び上がる。
「ついてこい!」
仲間たちも次々に壁を駆け上がる。
「くそっ、逃がすな!」
帝国兵たちが矢を番える。
「矢が来る!」
明日望が叫ぶ。
悠月は即座に反応し、瓦屋根へ飛び込んだ。
——ヒュン! ヒュン!
矢が次々に飛ぶが、悠月たちはなんとか回避。
「よし、抜けた……!」
悠月たちは屋根を駆け、帝国監視施設からの脱出に成功した。
「はぁ……なんとかなったな」
仁典が息を整えながら笑う。
「さて、"未来の鍵"の謎を解くか……」
悠月は手のひらの銀色のプレートを見つめた。
この鍵が、"神託の書"へと導くのか——
悠月たちの旅は、新たな局面を迎えようとしていた。