第3話
この世界では魔力が全てだ。そのはずだが、俺は今剣の扱いを学ばせられている。
「いいかお前ら!魔素が枯渇状態になったとき、最後に頼れるのは己の肉体だ!鍛えておいて損はないぞ!」
魔素枯渇。ある程度密閉された場所では、その場の魔素が一時的に少なくなってしまうことがある。そうなってしまえば魔力の多い少ないは関係ない。まぁ基本的にそのようなことが起こることははないが、念には念をということだろうか。それにしても剣がクソ重い。
「将来の就職先に困ったら兵士になるという選択肢もあるぞ!こう見えても俺は兵士から教員になったからな!」
「ナバラ先生、一目でわかります…」
筋骨隆々なナバラ先生は実践体育の教師だ。見ての通り熱血!根性!夕日に向かって走ろう!って感じの。
「おぉ!そうか!お前は…景斗だな!たしか日の国の出身だとか!」
「はい。両親が日の国出身です」
「そうか!日の国には独特な体技や魔法があるらしいが、お前はなにか知っているのか?」
「俺は一度も日の国に行ったことがないので、詳しくはわかりません」
「そうか!俺も一度は行ってみたいものだ!」
ふぅ〜、今日の授業が終わった。さっさと家に帰ろう。
「リューゼ、早く帰ろうぜ」
「景斗、ごめん!今日は学校の用事があって一緒に帰れないや!」
「あぁ、そうか。用事頑張ってな」
「うん!じゃあね!」
一人になってしまった。まぁやることもないし、一人で帰るか。
「あ、あの!」
「ん?あぁ、ロシェルさん。どうかしたの?」
「こ、このあとひ、ひまだったり、する?」
「あー、うん。もう帰ろうと思ってたから。」
「も、もしよかったら、少し、魔法の特訓、手伝ってほしい…」
そこまで言い切って、顔をカバンで隠してしまった。
「いいよ。ちょうど暇してたし」
「ほ、ほんと!ありがとう」
「うん、それじゃいこっか」
魔法を扱うには専用の場所がある。そこにいくためには担任の許可証が必要だ。
「失礼します。シュテラ先生はいらっしゃいまかしら
「あら、景斗くんにロシェルさん。なにか御用かしら」
「魔法の訓練がしたくて、魔法場の許可証をいただけますか」
「魔法場ね、わかったわ。少し待っていてね」
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「はい。これが許可証ね。あと、入場の掟。これを行くついでに読んでおいてね。いってらっしゃい」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
入場の証を読んだり話したりしているうちに、魔法場についた。
「こんにちは。これ許可証です」
「はい、大丈夫です。安全に魔法を使うように」
「ありがとうございます」
「そういえば特訓って言ってたけど、具体的に何をするの?」
「じ、じつはまだ、魔法の適性がわからなくて、コツとか、あったら教えてほしいなって…」
「うーん、コツかぁ。魔力と魔素の感覚は掴めてるの?」
「魔力は、なんとなく、だけど魔素が、よくわからない」
「そうだなぁ、じゃあまず、目を瞑って魔力の流れを感じてみて」
「う、うん」
「手から火をだすイメージをしてみよう。そうしたら空気中の魔素と繋がる感じがわかるかも」
「う、うーん、あ!これかな…あ、あれ、うまく出来ない…」
「うーん、じゃあなにか媒体を使ってみようか。授業ではやらないみたいだけど、魔素がある媒体を使うと魔法をだしやすいらしいんだ」
「そ、そうなんだ!媒体か…なにかいいのあるかな」
「案外土とかでもいけるもんだよ」
「つ、土ね。わかった、やってみる!」
土を少し掬い、魔力を通してもらう。
「あ、土のほうが、わかりやすい、かも」
ボッ
「おー!できたじゃん!」
「や、やった!は、初めてできた!うれしい…!」
「おめでとう、ロシェルさん」
「あ、ありがとう!でも、なんで、こんないいやり方、学校で教えないのかな…」
「下の人はどうでもいいのかもなー」
「な、なんか、悲しいな」
「そんなもんだよ」
「き、今日は、ありがとう、景斗くん」
「俺も楽しかったし、全然大丈夫だよ。それじゃあね」
「う、うん。またね」
いい暇つぶしができた。それにしても、ロシェルさんの喜んだ顔、可愛かったな。