第二話~山の小屋~
どすっ
腹に一撃、もらった際の痛みで目が覚めた。
一体何があったのかと飛び起きたのだが、その姿を見る前に思い出した。家族と同居していたときには、よくこうやって起きたもんだった。いや、起こされたもんだった。
「ぅう・・あいから、わず。アグレッ、シブ・・・・」
みると星香が満面の笑みでそこに立っていた。ただし、その笑顔は邪悪色だ。
「早く起きないとおにぃがわるいんだぞっ」
なんでそんなに上機嫌なのかとおもっだが、口にはしなかった。そんなことよりも聞くことがあったからだ。
なんとか呼吸を整えてから透は言った。
「ところで、ここは?」
帰ってきた答えは実にあっけらかんとしたものだった。
「分かんない」
取り敢えず俺は体を起こすことにした。すると気付いた、自分がいまベッドの上にいることを。もちろん、実家ではない。
さっぱりわけが分からない。
星香が言った。
「山の中を倒れてたところを助けてくれたんだって。」
「誰が」
「きれいなお姉さんといかつい、おに…おじさん?」
その時、扉の開く音が聞こえた。
入って来たのはピンとした背筋をした女性と、筋骨たくましい大男だった。二人とも年の頃では20代半ば程度だと分かったが、なるほど、小学生みたらおじさんだと判断してもおかしくはない。
そこまで考えると同時に、ここが彼らの家だと判断した透は急いでベッドから降りた。
「おお、にぃちゃんも起きたか。」
おじさん呼ばわりされた男が言った。
ニッと笑う顔はとても愛想があった。
とにかく、助けてもらった礼をすることにした。
「あの、どうやら山で行き倒れていたところを助けていただいたようで、どうもありがとうございます。」
「いやぁ、いいんだよ。それよりもお前らどっから来たんだ?」
と言ったかと思うと、すぐに首を振り、
「すまん、今のことはわすれてくれ。山の中に倒れてたんなんてきっとただ事じゃないんだろうからな。聞いて悪かった」
何やら深読みしたらしいが、おかしな話だが自分でもそこらへんはよくわかっていないので、好都合だった。
「ところであなたたち、どこか行くところはあるの?」
聞いてきたのは女性のほうだった。
「いや、まったく」
そもそもここがどこだかすら分かっていないのに、行くあてなどあるはずもない。
すると女性はよしっといった。何がよしっなのかと思った。
「よしっ、ならうちに泊まってくね」
「おお!そりゃぁいい案だ!」
そうして今夜はここに泊っていくことになった。