秘密の告白
本題に入るまでが長いですがお付き合いいただけると嬉しいです。
私、五十鈴川 美愛はどこにでもいるごく普通の高校二年生だ。
物語性があるとしたら、幼少期から高校生である現在に至るまでを共にする幼馴染がいる事くらい。それが、柏木 勇輝。彼と私は家も近所で、幼稚園に入る前からの付き合いだ。それから今までずっと、家族ぐるみの付き合いだ。
小学校の登下校は一緒だったけど、中学、高校と部活が始まると、登下校を共にすることはなくなった。それでも私達は仲が良かった。
中学までは互いの家を行き来して遊んだり、一緒に勉強することもあった。家から近いという理由で選んだ高校の進路が重なった時は笑ったけど、二人とも無事に合格して、入学して部活が始まるまでは一緒に登校していた。別々に登校するようになっても、用事がなくてもメッセージのやり取りはするし、廊下ですれ違えば雑談をする。私達は、仲のいい幼馴染を継続していた。
高校生活二年目が始まった頃、私と勇輝が付き合っているのでは? という噂を耳にした。私と勇輝の間にそんな空気が流れたことは一度もない。中学校の頃は私達の関係をよく知る同級生ばかりだったからそんな噂は聞かなかったけど、高校は環境ががらりと変わる。そんなことない、と私は中学の頃と同じように否定したが、女子高生は恋の話が大好きだ。異性として勇輝が魅力的である、という話をし始めた。
「柏木君、かっこいいじゃん。背、高いし」
「結構人気あるよね」
「幼馴染とか、関係ないよー。むしろ、子供の頃と比べて大人っぽくなったなって、ドキッとしない?」
そんな風に言われて、初めて、私は勇輝を異性として分析しなおした。
勇輝は確かに世間一般でいうイケメンの部類に入るだろう。背も高く、顔も悪くない。ちょっと調子がいいところもあるけど一緒にいて楽しいし、優しいところもある。……とかなんとか考えだしたら、「あれ?勇輝ってかっこいいんじゃない?」と思い始めた。
……周りに流された感がある事は認めます。でも、仕方ない。その時は確かにそう思ったんだから。友達も「勇輝の事が好きかも」と打ち明けたら盛り上がっていたし。恋愛の話、楽しいよね。楽だし。
でもそうして「好きかも」と思いながら勇輝を目で追いかけていたら、一か月ほど前から勇輝の様子がおかしいことに気付いた。何となくそわそわしているような、それでいて私の様子を窺っているような感じだった。私はそんな勇輝の様子を見て、
「もしかして私に告白しようとしているのでは?」
と思った。都合よすぎる思考回路をお持ちのようで。私の事だけど。
でもこれについては言い訳させてほしい。実際、友達からも「柏木君、最近美愛のこと意識してない?」「告白されるんじゃない?」なんてことを囁かれていたのだ。ご都合のよろしい頭の私は真に受けて、そうかもしれないと思っていた。まぁ、そんな事はなかったわけだが。
勇輝は、確かに告白したがっていたのだ。自分が異世界の勇者に選ばれたという秘密を。
そして告白された私は、異世界の勇者のサポーターになった。
何を言っているのか分からないけど、私にもよく分からない。あの日の私に問うても、きっと分からないけど。
美愛は恋愛に鈍感なので、周囲の子が「かっこいい」という男の子を目で追ってしまい、「好きかも」と思っちゃうような子です。