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茶飲み友達

今気づいたけど、展開が早いからタイトルがそぐわない事になっている気がします。

ストックが切れたので、ここで一度区切ります。

申し訳ありません…。


「それでさぁ、私は走ったのに、後から普通に歩いてくるんだよ? ちょっと!って言ったのに全然聞いてくれない! それで連帯責任っておかしくない?」

『確かに。だが連帯責任とはそういうものだ』

「分かってるよ。だから余計にむかつく!」


 私は冷めた紅茶を一気に飲み干して、ビスケットを口に放り込んだ。固焼きビスケット、美味し。


『ミア、そんなことで苛ついていては上には立てんぞ。私のように、朝一番の会議で決めたことが半日で破られても平常心を保っていられる胆力をつけろ』

「人の上に立つつもりはないからいいよ。というか、滅茶苦茶キレてたじゃん」


 珍しく不機嫌な顔をしていた日だ。どうしたのか聞いたら、およそ一ヶ月、協議を重ねてようやく会議で決をとった事案が半日で無に帰したらしい。あまりにも腹が立ったらしく、私との茶飲みの時間の間、終始やけ食いをしていた。部下への悪態を吐かないところは流石と言ったところか。


『部下の前では努めて冷静だった。だからセーフだ』

「セーフかな?」

『セーフだ。部下の前で取り乱すところを見せていないから。完全無欠な魔王のこんなところ、お前にしか見せられない』


 私にしか。ふーん。


「まぁ、私には遠慮せず吐き出していいよ。私もそうしてるしね」

『そうさせてもらう』


 魔王――ディーが正体を明かしても尚、交流を続けることにしてからそれなりに時間が経った。

 私達は、前よりも互いに砕けて、本音も交えて話すようになっていた。

 私は最初、魔王だし、勇輝の敵だし……と身構える気持ちもあったのだが、そんなものはすぐに霧散した。今は勇輝と話す時間の方がはるかに少ない。物資の運搬の手伝いは相変わらずしているけど、それだって必要最低限のやり取りで済ませてしまう。

 あとは勇輝が異世界の話をしたいとき。そんな話、私にしかできないから、向こうの世界の事を話したくなると私のところへ来るけど、私とディーはもっと頻繁にやり取りをしていた。

 私から向こうの世界へ呼びかけることはできないから、ディーに時間がある時、彼が繋いでくれた時が、私達のティータイムの始まりだった。


 ディーは、前よりもたくさんの事を話してくれるようになった。

 ピュールさんのフリをしていた頃は、正体がばれないように余計な話をしないよう気を遣っていたのだろうけど、その心配がなくなってからは、色々な話をするようになった。


 異世界での生活や文化、魔法と……魔族の事も。ディーは何でも知っている。

 私は彼の質問に必死に勉強して答えていたが、彼は私の質問にすらすらと答えてくれた。しかも分かりやすい。

 今は多分、勇輝より私の方が異世界に詳しいだろう。

 そしてディーは前よりも、私のことを色々聞いてくるようになった。それが少し嬉しい。


「ねぇ、今日はこの前話していた道具について教えて。ほら、魔力で明かりが点くって言ってた」

『ああ、あれか。それはな――』


 ディーは自分の世界の事を楽しそうに語る。そんな彼を見るたびに、私は思う。

 ――異世界の魔族は、本当に悪なのだろうか。


 ディーと話していても、彼から人間への嫌悪や憎しみのようなものを感じた事はない。異世界を征服する、したいと言ったようなことも聞かない。私が敵であるはずの勇者――勇輝の話をしても、だ。

 隠していると言われたらそれまでだが、こうも完璧に隠せるものなのか。

 ずっとずっと気になっていたけど、聞かないようにしていた。でも、今日聞こうと思った。


 ――美愛。聞いてくれ。この前、魔族の将軍って呼ばれてるやつを倒したんだ!もうすぐ、魔族の土地に入るんだ!


 勇輝が倒した魔族は、ディーの部下という事だろう。それを聞いたら、なんだか落ち着かなくなってしまい、堪えきれなかったのだ。


 「ディー。もう一つ聞いてもいい?」

 『いいぞ。どうした?』

 

 ディーはいつもと変わらない様子で、私の話に耳を傾けてくれる。

 もし、彼が怒ったら。この時間は終わりになってしまうのだろうか。

 本当はずっと、人間が嫌いなのに我慢していたと言われたら、私はきっと傷つく。

 でもそれ以上に、ちゃんと知りたいと思った。

 ディーの気持ち。

 結局は、私自身の為だ。


 「ディーは、本当に人間を滅ぼして、世界征服をしたいって思ってるの?」


 私の問に、ディーは目を見開いた。

 そのまま身じろぎもしない。

 私は地雷を踏んでしまったようだ。


「ごめん、忘れて。怒らせたなら、本当にごめん」

『――いや、すまない。大丈夫だ。怒っていない』

「そうなの……?」

『そうだ。お前は聡いから、もしかしたらいつか聞かれるかもしれないとは思っていた。――その時が来ただけだ。答えられない事なんかじゃない。全然答えられる』


 ディーは急ぐように言った。それから、ちらりと視線がよそを見る。


『だが、長い話になる。日を改めよう。次に勇者がこちらに来るのは……二日後か?』

「うん。連休があるからね」


 ディーは、こちらの暦を何となく理解している。以前にカレンダーを見せて説明したことを覚えているのだ。

 

『では、二日後の夜は空いているか?』

「大丈夫」

『では、その夜に。食べ物や飲み物はきちんと用意しとけよ』

「それ、いつものことじゃん」


 冗談交じりに笑うと、ディーも少し笑った。私はホッとする。

 ディーは手元のワイングラスの中身を飲み干した。


 『飲み物がなくなったから、今日はここまでだ。二日後、また』

 「うん、わかった。おやすみ、ディー」

『おやすみ、ミア』


 鏡に向かって手を振ると、鏡面がゆらゆら揺らいで、ディーの姿がぼんやりとしていく。しばらく経たない間に、鏡像はディーではなく私に変わっていた。


 「二日後……」


 彼は来てくれるだろうか。このままさよならになったら、嫌すぎる。

 

 私は二日間を悶々と過ごした。正直、二日間の記憶は曖昧だ。勇輝にサポーターを頼まれたけど断ったことは覚えているが。


 そして二日後の夜。

 ドレッサーに紅茶とお菓子を用意して、緊張して鏡の前に座る私の前で、鏡面が揺らいだ。

 

 鏡の向こうには、今までで一番疲れたような、草臥れた魔王がいた。

このあたりが一番書きたかったのですが、たどり着くまでに力尽きてしまいました…

ストックはここまでです。

色々アイデアが浮かぶと浮気してあちこち書きますが、どれも完結させたいとはおもっています!

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