続行
やっとタイトル回収です!
『おい……おい。どうした。そんなに落ち込むことか?』
「だから何であんたはさっきから私に気を遣ってんの」
何なのこの魔王。何だか知らないけど、私に遠慮しているようだ。魔族の王に気を遣われるようなことって何だろう。
「別に何でもない。……それより、ピュールさんに何もしてないっていうのはまぁ分かったけど、私と話すことが目的だったってのは何? 勇者の情報を引き出して、有利に戦うつもりだった?」
自分で言いながら、違うだろうなと思った。魔王は、勇者である勇輝のことは一切尋ねなかった。どちらかと言えば、私のことの方を知りたがっていた。本来の目的はこの世界の話の方だったようだから、私のことなんて話のついでくらいだろうけど。
『だから違うと言っている。私はお前の――違うか。自分とは全く違う世界のことを知りたかった。どんな生き物がどんな環境で暮らし、どんな技術があって文化が生まれたのか。そういった、異世界の話を聞きたくて、お前に話しかけたのだ』
「……ふーん。それで、勇者本人には聞けないから、勇者の協力者の私に目を付けたわけ?」
『そうだ。……だが、それも最初の一回でやめるつもりだった。先程も言った通り、いずれは破綻することが前提の杜撰な計画だったから、早々に切り上げるつもりだったのだ』
初めてピュールさん――ピュールさんに成りすました魔王が私と話したいと言ってくれた時から、私達は何度も鏡越しに会話をした。終わりには、次はこんな話を聞きたいとリクエストされることがほとんどで、「もう終わりにしよう」みたいな言葉は、一度だって聞かなかった。
『誤算だったのは、お前と話す時間が楽しすぎたことだ。異世界の話が興味深かったのはもちろん、お前自身が感じたことや、過去の思い出、日常の些細な出来事……。感情豊かに、一生懸命伝えようとしてくれるお前と話す時間は、私の想像以上に充実した時間だった。一度で辞めるにはあまりに惜しく、今日までずるずると続けてしまったのだ』
「は……」
これは、褒められているのだろうか。
私が楽しいと感じていた時間は、魔王にとっても楽しい時間だったのか。有益な時間だけでなく、楽しい時間。
「ふ、ふーん。そうなんだ。……じゃ、じゃあ、どうする?」
『どうする、とは?』
二人で話している時間が楽しいと言われて、悪い気がする人間はいないと思う。私も例に漏れなかった。楽しかった。だからちょっと調子に乗ってしまった。
「だから、その……これからも、こうして話すのを続けようかってこと」
魔王は目を見開いた。私の提案に驚いているようだった。そんなに驚かなくたっていいじゃない。
私だって、あの時間がこのまま終わってしまうのは惜しいと思っているのだ。
『その……いいのか。私としては願ってもない申し出だが……私は、お前を利用していた。そのことを、もっと問い詰められるかと思ったが』
この魔王、何でもかんでも正直に言いすぎだ。せっかく曖昧にしておこうと思ったのに……。
「よくないこともあるけど。いいことの方が、たくさんあったし……私も楽しかったから。あなたが勇輝やピュールさんに何もしていないなら、このまま続けても、何も問題ないわけでしょう?」
『……』
魔王はまじまじと私を見て、それから少し笑った。先程見せた、ニヤリとした笑いではなく、嬉しくてつい笑ってしまった、そんな笑い方。
『素直に嬉しい。お前の寛大さに感謝する、ミア』
急に名前で呼ばれてドキリとした。確かに、ピュールさんになりすましていたんだから、私の名前は知っていて当たり前なんだけど……魔王の姿で呼ばれたのは今が初めてだし、いい声出し……不意打ちを食らったような気分だ。
「私はあなたの名前、知らないんだけど。魔王って呼んだ方がいいの?」
『いいわけあるか』
魔王は即答すると、コホン、と勿体ぶった謎の前振りを入れた。
『私は魔王、ディミオル。気軽にディーと呼ぶといい』
魔王の赤い瞳が、何に反射したわけでもないの煌めいた気がした。
こうして私は、勇者のサポーターであり、魔王の茶飲み友達となったのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
まだ続きますよ!
でもストックが切れそうです!泣




