違和感の始まり
面接の連絡がきた。
「池村美和子さんですね。応募のキッカケを教えてもらえますか。」
一次面接は主任といわれる女性に人選を任されているようで、私の性格や営業に向いているか確認された。経験者であっても道半ばで挫折する人もいるからだ。
私は前職で約6年弱務めた経験や退職理由など、主任から見ると特に採用しない要素はなく、合格したようだった。
一次審査が合格すると、最終面接に呼ばれた。
次は営業所所長から、研修期間の説明、報酬のランク説明など、給与の説明がなされた。そして、最終的に入社するかの可否を問われた。
もちろん、入社することに決めた。まずは2週間の試験勉強で、保険に関する一般課程試験を合格しなければならない。合格ラインは90点以上。
12月、入社オリエンテーションに同期となる仲間が私を含め6人、これから一緒に研修することになる。
生保経験者は私を含め2人で、残り4人は未経験者だった。
その内、同じ営業所での勤務になるのが3人で、そこに唯一の生保経験者も含まれていたことで、仲良くなった。
彼女は西村綾子。私より10歳年上で、だいぶブランクが開いていたが、この業界に戻って来た理由は、子供の進学費用が必要で、就活したのがキッカケだった。
未経験者として入社したもう一人の彼女は河合治代。子育て世代の30代前半。義父母と同居していて、子供の面倒を見てもらえることがキッカケだったらしい。
二人とも、私と同じく自分で希望して求人に応募していた。一般的に生保では勧誘して仕事に誘われることが多いが、外資系では、ハローワークに求人を出しているのが当たり前で、自分から応募してくることは珍しくないらしい。
それは研修が始まってすぐ、違和感を覚えるものだった。授業というほどのレベルではなく、動画を見ることや、試験に出る要所部分のみを掻い摘んで説明されるといったものだった。
当然、治代にとっては、専門用語が飛び交うような授業はついて行けるはずもなく、理解することが難しそうだった。
私は初めて生保の研修をした時を思い出していた。
そこは初めて生命保険の営業をする事に不安や苦手意識が入混じった人たちの集まりでもあった。
そんな人たちの不安を取り除くように、保険の仕組みをより面白く興味がわくような工夫がされた授業だった。
生保経験者だった綾子に前職の研修はどうだったか聞いてみたが、動画等を見る講習で、こことそれほど変わらないと言っていた。
そうか、私の元職場が特別だったのか...別の職場に来て初めて理解した。
こんな時、勧誘して仕事を誘わていた場合、誘った人が親代わりとして勉強の補習など面倒を見てくれるものだが、ここは自分から志願している人が多いため、講師以外の人を頼れるはずもなかった。
更に追い打ちをかけるかのように試験勉強以外、この会社の商品の勉強も追加されていた。
まだ、一般課程の勉強をクリアしてもいないのに、詰め込みすぎだと感じた。
一度経験している私たちは感を取り戻すのは容易だったため、治代に授業の後は勉強会を開いていた。
彼女は呑み込みが早く理解できれば模擬テストでも高得点が取れるようになった。
私たちは無事、そろって合格した。
しっかりした研修ができれば、良い人材育成になるはずなのに、とても残念に感じた。




