食糧難
現在、獣国の獣はすべてライオンやトラといった肉食獣のみである。かつては多くの草食獣も存在していたが、無秩序に肉食獣たちが草食獣を襲っていたため、獣国の草食獣は大幅にその数を減らした。
危機的事態に陥って、肉食獣たちは初めて理性的に話をするということを始めた。やがて肉食獣たちは、二足歩行となり、知能も発展し国を作るようになった。
しかし、その頃には草食獣は獣国ではさらに数を減らし、肉食獣たちは深刻な食糧不足に陥っていた。
彼らが草食獣に変わる食料としたのが、人間であった。しかし彼らは考えた!依然の草食獣たちの時のように、無差別に人間を食べていると、また同じような事態に陥るのではないだろうかと・・・・
獣国の時の大統領が提案し、法律が制定された! その内容は、野生の人間、つまり旅行者等を勝手に襲うことを禁止するというものであった。
獣国において、人間を発見した場合、直ちに捕縛して人間牧場に送ることになったのである。そうして計画的に人間を増やし、ある程度育った段階で、出荷し、獣国国民に公平に分配していった。
それから200年、獣国では食糧難に襲われることもなく、平和であった。獣たちは肉体的、精神的に健康な人間を育てるため、人間に与える餌を研究し、時にはクラッシック音楽を聞かせ、時には適度な運動となる体操を教えた。
さらには最低限の知識がある人間の方が美味であることが分かってからは牧場学校を建設し、人間たちに最低限の知識まで教えるようになっていた。
このような国に旅行者等の人間が訪れるわけもなく、獣国にいる人間はすべて牧場で生まれ育った人間だけになってしまった。
外から人間を調達するという話もこれまで幾度が、提案はされたが、国土を山脈と海に囲まれている獣国では、ほとんど不可能であった。
大きな帆船等の船があれば、そこから外の世界とつながることも可能であったが、獣国にはその技術がなく、昔の様に海から人間が来ることもなくなった今、ほぼ鎖国状態であった。
そのため長い間平和に暮らしていた獣たちであったが、悪魔城ができてからは、悪魔達が山脈方面から頻繁に表れるようになり、その撃退に苦慮していた。
クマ将軍は悪魔達との戦いを終えて、首都の自宅に帰ってきた。
「パパおかえり!」
5歳になる娘が、玄関まで走ってきて、クマ将軍に飛びついた。
「ただいま」
歴戦の戦士も娘には甘いようで、顔がデレデレしている。
「お帰りなさい!」
続いて飛びついてきたのは娘と同じ5歳の人間の女の子であった。
「エミリもいい子にしてたか!」
クマ将軍はエミリの頭をやさしく撫でた! エミリは娘が生まれた時に、娘のために購入したペットの人間である。クマ将軍をはじめ、彼の家族はエミリをペットとして家族同様にかわいがっていた。
「はい、ご主人様! エミリはお腹がすきました!」
エミリはそういうとクマ将軍の太い腕にしがみついた。
クマ将軍は土産のお菓子を、娘とエミリに手渡した! 2人は仲良くお菓子を分け合って、仲良く食べている。
クマ将軍にとってエミリはかわいいペットであって、決して食料などではなかった!
「あなた、おかえりなさい!」
続いて現れたのクマ将軍の愛する妻である。
「今日は隣の奥様と新しくオープンしたステーキ店でランチしたのよ! 今度家族で行きましょう!」
奥様はとてもご機嫌であった。当然彼女の言うステーキとは人間ステーキである・・・・
「ああ、それは楽しみだ! だけど悪魔達がいつまたやってくるかわからないからな・・・・」
クマ将軍はこの家族を何としても守らなければならないと、心の底から思っていた。




