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身代金

 突然、柵の扉が開いて吾郎を連れえ来た男が入ってきた。

「これを食え」

 男は木で作ったお椀に入った、スープのようなものを吾郎に手渡した。


「おおっ、早速歓迎の食事かな」

 吾郎は、お腹がすいていたこともあり、がっつきながら渡されたお椀に飛びついた。

「ま、まずい・・・・」

 お椀の中は、水の中に芋をそのまま放り込んだだけのものであった。

「田舎の人たちは、こんなものを食べているのか・・・・」

 吾郎は満面の笑顔で、さもおいしそうにお椀の中身をすべて食べた。


「なんだこいつ、やっぱり気持ち悪いな・・・・こんなまずいものを美味そうに食いやがって!」

 男は吾郎の事を少し頭のゆるいと男とみている。

「お前の家族の居場所を教えろ」

 男は身代金の要求を家族にするつもりだった。


「やっぱり田舎の人は優しいな・・・・オレが一人でフラフラしてるから家族の事を心配してるんだな・・・・」

 吾郎は少し涙ぐみながら、自分が独り身で、もはや家族といえるような存在がいないことを伝えた。


「なんだと! ちょっと小奇麗な格好してるから小金持ちだとばかり思って連れてきたのに、とんだ大損だな!」

 男は吾郎の腕をつかみ牢から引きずりだそうとした。


「ま、待て!」

 男に声を掛けたのは、牢の奥にいたホビー男爵だった。

「その男の身代金もわが家で責任をもって支払う!」


「その話は本当か!」

 男は吾郎の腕を放して、ホビー男爵に詰め寄った。

「2人分の身代金を払わなかったら、お前の解放もないぞ!」

 男はホビー男爵にすごんだ。


「もちろん、それでいい! だから彼に乱暴するな!」

 ホビー男爵の目は真剣だった。


「お前も、物好きだな! こんな変わり者のために!」

 男はホビー男爵の話が偽りがないと思ったようで、牢を静かに出ていった。


「吾郎とやら、先ほど聞いた話ではそなたに家族はいないのか・・・・」

 男爵は訳が分からず呆けている吾郎に話しかけた。吾郎は以前は家族がいたが、今は一人きりになって山奥で一人生きていこうと思っていると男爵に話した。


「一人で・・・・山奥といっても山には魔物がいるぞ! 人が一人で生きていけるはずがない!」

 男爵は吾郎を自分の屋敷に誘った。

「男爵といっても田舎の貧しい小領主で、贅沢はできないが、生きていくことはできるぞ!」


「じゃあ、お世話になろうかな・・・・」

 吾郎はイタイプレイだと思いながらも逆らってはいけないと考え話を合わせた。


「わかった、お前のことは私が責任をもって面倒みよう」

 男爵は吾郎の事を不憫に感じ、下人にしようと考えていた。

「間もなく、わが領地から身代金をもってやってくる、そうすれば、我々は解放されるであろう! それまでの辛抱だ!」

 男爵は吾郎の腕を両手でがっしりと掴んで励ました。男爵は吾郎の事を共につかまっている同士のように感じていた。


「ドガッ」

その時、洞窟の入口付近で大きな音がはじけた。


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