老人
「ここが今日からお前の居場所だ!」
ディアはロックプリズンの一室に放り込まれた。
「全く乱暴だな・・・・さてここから、どうやって抜け出そうか・・・・」
ディアが放り込まれた個室の扉には小さな格子の窓が付いていたが、そこから様子を見ると廊下には常に数人の見張りがいるようだった。
「ここからは出られないよ!」
突然、背後から声を掛けられたディアは、驚いて振り向くと、顔中長く白いひげに覆われた一人の老人が座っていた。
「あまりに、部屋と同化して気づかなかった!」
ディアは振り返り警戒しながら、老人を観察した。おそらく、10年以上はそのままの服を着ているであろう、擦り切れた服、さらには、決していい空気とは言えないロックプリズンの中でもひときわ強烈な匂いを発する体臭! おそらく服と同じように10年以上風呂には入っていないのだろう・・・・
「非道いこという小僧だのう・・・・」
老人は、微笑を浮かべている。
「ここに何十年もいると、こうして数年に一度、同室の仲間ができると、うれしくて、ついにやついてしまうんじゃ」
「数十年? その間逃げようとは思わなかったのか?」
匂いが強烈すぎて、ディアは鼻をつまんで、やっと息をしている状態だった。
「そりゃ、わしだって最初のころは、逃げることばかり考えておったわ! じゃがな10年もたつと、そんな気も失せてしまうんじゃ・・・・」
老人は久々に人と話すようで、話が止まらないようだった。
「ワシが、ここに来たのもちょうど、あんたくらいの年のころじゃったかな・・・・今では、どうしてこんなところに入れられたのかも忘れてしまったくらいじゃ・・・・」
「オレは、こんなところにいつまでもいるわけにはいかないんだよ! 友達を助けに行かないといけないからな!」
ディアは、逃げることも諦めてしまった老人を哀れには思ったが、同情はできなかった。
「みんな、最初はそういうんじゃ! だけどな1年も経つと、逃げることを諦めるか、自ら死を選ぶやつか、どちらかになってしまうんじゃ・・・・」
老人は寂しそうに語った。
「あんた、オレが逃げるとき、一緒に連れて行ってほしいか?」
ディアは老人の目を見て尋ねた!
「逃げるか・・・・久しく考えたこと等なかったな・・・・そうじゃな、もう一度外の景色を見てみたいかの・・・・」
老人はどこか遠くを見ながら、かつての景色を思い浮かべていた。
「オレは、あんたみたいなやつは好きじゃないが、だからこそ、あんたみたいな諦めた目をした奴のケツをもう一度蹴飛ばしてやりたいとも思うんだよ!」
ディアは老人が座っている壁を見つめた。
「なんじゃ、なんじゃ!」
老人はディアが何かをしようとしていることを本能的に理解し、久々に心が躍っていることに気づいていなかった。




