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誘拐

「おい、いつまでもにやにやしてるんじゃねえ」

 男の一人が吾郎を激しく恫喝した。


「おっと、いけない! まだ質問に答えていませんでしたね! 僕は山から来ました」

 吾郎は数十キロ離れている山脈の頂を指さした。


「嘘つくな! あんな魔物だらけのところにお前みたいのがいけるはずないだろう!」

 男たちは吾郎の言うことが信じられないようだ。


「魔物って・・・・ああ! あの耳がやたらとでかい兎みたいな動物のことか! 確かに見たことはない動物だったけど、田舎の人は動物の事をマモノっていうんだな」

 吾郎は勝手な解釈をして、納得した。

「そういえば山を下りてくる途中にも、動物に何度か襲ってきたけど、ちょっと蹴ったりしたら追ってこなかったな・・・・」

 吾郎は一人ぼーっと考え込んでいた。


「おい、今度はボケっとしやがって」

 男たちは人を馬鹿にしたような吾郎の態度に苛立っていた。

「有り金を全部出せ! そうすれば命は助けてやる」


「お金を出せって・・・・まるで盗賊みたいな・・・・そうか! 遭難してるオレを助けてくれるからお礼を欲しいってことか!」

 吾郎は田舎の方言を理解することはなかなか難しいなと感じていた。


「お金は今持ってないんです。だけど後でちゃんとお礼を差し上げます」

 吾郎は再び満面の笑みで答えた。


「金がないだと!」

 男たちは吾郎の衣服の中を調べて、吾郎が何も持っていないことを確認して、相談を始めた。

「こいつは、なんだか変な奴だが身なりは綺麗だ! きっと馬鹿な金持ちに違いない」

「誘拐して、身代金をもらうか!」

 男たちは持っていた縄で吾郎を縛り付けた。


「えっ?」

 吾郎は突然のことで顔色が変わり、男たちは本当に盗賊かもしれないと思い恐怖を感じた。

 吾郎は縄を振りほどこうと少し力を入れた。それだけで縄がはじけ飛んだ。

「なんだ、この縄! まるで綿菓子の様に柔らかいんだな!」

「そうか、田舎の風習なんだな! 彼らに悪いことしちゃった」

 吾郎は勝手に悪人判定したことを心から反省した。


「!!!!」

 男たちは突然、吾郎を縛っていた縄がはじけ飛んで驚きを隠せなかった。

「お前、何をした!」

 男たちを恐る恐る、再び予備の縄で吾郎を縛り付けた。今度は先ほどよりもかなりしっかりと強く縛り付けた。


「ん―っ! 今度はさっきよりかなり強いな! だけど仕方ないな、オレが縄をボロボロにしちゃったからな・・・・」

 吾郎は反省し、おとなしく男たちに連行された。


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