逃走
わずかな兵士たちと逃げ延びたアストラ王は魔王国との国境付近にある王国領の小さな町に命からがらたどり着いた。
アストラ王たちの疲れてた表情を見て、街の住民たちは戦に敗れて逃れてきたことを察したが、あえてそのことには触れずに、彼らを歓待してくれた。アストラ王たちにとって、それは、ありがたいことであった。
王たちは、食事をとり、湯あみまでして町長の家の大広間でくつろいでいた。
「陛下、あの化け物は王国まで追ってくるでしょうか?」
アストラ王に声を掛けたのは、かれの命を救ったロンバードであった。
「それは、私も考えていた・・・・しかし、いくらあの化け物といっても、ここまで追ってくることはないだろう・・・・」
アストラ王は小声で答えた。
「とにかく、いつでも出発できるように馬を準備してきます」
ロンバードはそういうと部屋を出ていった。ここまで、1台の馬車と数頭の馬で休みなく逃げてきたが、町に到着して、馬たちは力尽きたように倒れてしまっていた。
その後アストラ王と兵士たちは、久々の休息のため、深い眠りについた。しかしロンバードだけは、休むことなく見張りについていた。
「バタン!」
突然、部屋の扉が荒々しく開け放たれた!
「陛下! 準備はできております! すぐに出発を!」
ロンバードはアストラ王や部屋にいた兵士たちに、何が起こっているか目で合図した!
ロンバードの案内でアストラ王たちは足早に村人に用意された馬車や馬にまたがり、村人に何も告げることなく出発した。
「ロンバード! せめて世話になった町長たちに避難するよう伝えたい!」
ロンバードはアストラ王の言も無視して、馬車を走らせた。
「陛下、もはやその時間はありません! それに町にはもはや馬はいません」
ロンバードは唇をかみしめた。
「なんだあれは!」
「うわーっ!」
「助けて!」
アストラ王たちは町から聞こえる悲鳴を無視して町から少しでも離れるため馬を走らせた。
「すまない・・・・」
覇王と呼ばれたアストラ王は自らのあまりの無力さに顔をあげることができなかった。
その後、アストラ王一行はいくつかの町や村を経由して王都にたどり着いた。途中馬を取り換えて、食事等の提供を受けたが、一度も町民や村人たちに化け物の事を口にすることはなかった。
途中の町や村を犠牲にして、少しでも化け物たちとの距離をとるためであった。王都にたどり着いた後、少しでも、対策をとるための時間を稼ぐためでもあったのだが、国民を犠牲にすることは苦渋の選択だった。
命からがら王都にたどり着いた、アストラ王たちは休むことなく重臣を集め、魔王国軍との戦い、化け物の事等、包み隠さず話をした!
それを聞いた重臣たちは、とても信じることはできなかったが、王やトンバードの表情を見ると信じざるをえなかった。




