親友
魔王はザンダーマの剣を軽く握ると、剣を握りつぶした! 魔王はそのままザンダーマの首を掴んで城門の外へ落とした!
ザンダーマはさすがは魔王軍最高幹部であった。これだけ高い城壁から落とされても、打撲や擦り傷程度の傷のみであった。
しかし、それこそがザンダーマの悲劇であった。ザンダーマの前には巨大鬼蜘蛛がいた。巨大鬼蜘蛛はザンダーマの胸を鋭い前足で貫いた!
彼は痛みで声尾をあげることもできなかったが、彼は目の前に親友の顔があったことに気づいてしまった。
その巨大鬼蜘蛛は、アーグンドを食べた鬼雲であった。巨大鬼蜘蛛は一口でザンダーマの下半身をかみ砕いた。彼はこれまで味わったことのない激しい痛みでもがき苦しんだが、すぐに頭部を含む上半身も鬼蜘蛛に食べられた。
そうしてザンダーマの顔が鬼蜘蛛の体の前面に現れた。後頭部にあるアーグンドとちょうど目が合う位置である!
その一部始終を眺めていた、兵士たちは恐怖のあまり失禁するものや気絶するものも少なくなかった。悲惨なのは気絶して城門の下に落ちたものである。彼らは例外なく鬼蜘蛛たちに食された。
アストラ王は目の前で繰り広げられる悲劇に放心状態である。すでに王国軍はバラバラで、皆四方八方に逃げ出していた!
「王! ここは危険です! 一刻も早くお逃げください!」
彼には兵士の言葉も耳に入ってきていない。協定破りを行い、魔王国陥落も目の前であったのだ。それが今や、軍は壊滅し自らの命さえ危うい状態である!
「私は何を間違えたのだ! なにがいけなかったのだ・・・・」
覇王と唄われたアストラ王はただ、うわごとを呟くのみであった。
「ごめん!」
ひときわ大柄で屈強な一人の兵士が鎧を着たままのアストラ王を担ぎ上げた!
彼は近衛騎士団長ロンバード!
ロンバードは、鬼蜘蛛が魔王軍の兵士の体を食べだした時に、すぐに馬車をアストラ王のテントに向かわせていた。
「アストラ王、こちらに!」
ロンバードはアストラ王を馬車に乗せると、すぐに御者席に着き、馬にムチ打った。馬は驚き全力で走り出した。
「ロンバードよ! まだ兵士が残って戦っている・・・・私だけが逃げるわけには・・・・」
やっと我を取りもどしたアストラ王はロンバードにか細い声で話しかけた。
「申し訳ありません! 罰ならばあとでいくらでもこの身で受けます! しかし今は王の命令といえど従うわけにはまいりません! 王さえ生きていれば、まだこの国は何とかなります!」
ロンバードはそういうと、さらに激しく馬にムチ打った。
アストラ王が戦場を去った後も、鬼蜘蛛たちの食事という蹂躙は続いていた。鬼蜘蛛たちは多くの兵を食べることによりさらに巨大化していた!
「そろそろ始まるか!」
城壁の上で恍惚の表情で戦場を眺めていた魔王は小さく独り言を漏らした!
それを近くで聞いていた兵士達は、これ以上どんな悲劇が起こるのだろうかと狂いそうな頭を必死で抑えていた。
巨大化した鬼蜘蛛が兵士の首をはねずに四肢を切断した。その兵士に尻尾のようなものが鬼蜘蛛から伸びて、兵士の腹部に突き刺さった。
兵士は痛みでもがき苦しんだが、鬼雲たちはその兵士を殺さずに放置した。
さらに鬼蜘蛛は近くの兵士を殺すことなく逃げる兵士の横をすり抜け、追い越した。
「なんだ?」
追い越された兵士たちは、意味が分からなかったが、前方に巨大鬼蜘蛛たちがいるため、それ以上進むことができず、立ち尽くしていた!
「何だっていうんだ! オレ達を捕虜にでもするつもりか・・・・」
兵たちは少し安堵していた。少なくとも捕虜ならば食い殺されることはないからである。




