夜襲
アストラ王は魔都の高い城壁を眺めて、考え込んでいた!
「わが軍はここまで破竹の勢いで進軍してまいったが、流石にこの城壁を崩すのは骨がいおれそうだ・・・・」
力押しで攻めれば、いずれ攻め落とすことも可能であろうが、おそらく魔王軍は城壁の上からお得意の魔法攻撃を仕掛けてくるに違いなかった。
そうなれば王国軍に甚大な被害が出るばかりではなく、時間をかけすぎた場合、死の大地の砦守備にあたっている魔王軍数万の援軍がやってきて前後で挟撃される恐れもあった。
アストラ王は考え抜いた末、結論を出した!
「明日、南門に総攻撃をかける!」
彼の出した結論は、犠牲を出してでも、一気に決着をつけるというものであった! まさに覇王の決断であった! 確かにここで攻めあぐねていては、他国に侵入を許す事態を招く恐れもあった。
「今宵はゆっくり休んで行軍の疲れをとるのだ! 明日の朝わが軍の恐ろしさを魔族どもに教えてやろうぞ」
アストラ王は、幹部たちに言葉を残し自身のテントに引き上げ、早々に眠りについた。
「敵襲だ!」
王国軍の陣内が突如慌ただしくなった! アストラ王のテントにも数人の兵がやってきた!
「敵襲でございます」
アストラ王は自ら剣を持ち状況の確認に向かった。
「なんだと・・・・」
アストラ王の目には数千はあるであろう松明の日が目に入ってきた。
「どういうことだ・・・・」
アストラ王の体は凍り付いた! 魔王城にいる魔王国軍は多くても5000だと聞いていた。
しかし、眼前の兵の数は少なくとも5000! この高い城壁で守っていれば、援軍が間に合う可能性もあり、全軍で城から抜け出して攻めてくるなど考えられなかった。
となると、城には少なくとも数万の兵がいることになる!
「どうする・・・・」
アストラ王は短い時間で思考をフル加速させた。本当に今場内の敵兵力が想定の数倍であった場合、もはや一刻の猶予もなく退却が必要となる事態である。しかし、魔王国にそこまでの兵力がいるという情報は、長年の調査でも一度も報告されていなかった!
「戦況は? 戦況はどうなっておる?」
アストラ王は前線からやってきた兵の胸ぐらをつかんで尋ねた。
「はい、魔族どもが思ったよりも屈強というか、どの兵もみな、狂人の様に暴れまわっております!」
報告を聞いたアウトラ王は益々混乱した。魔王軍の戦い方が夜襲の戦い方ではなかったからだ! 通常、夜襲では急襲してヒット&ウェイで、すぐに退却する戦い方であるからであった。
「これでは総攻撃か、最後の玉砕ではないか・・・・」
アストラ王は頭を悩ませながらも、近衛兵を引き連れ前線に向かった。
魔王城の城壁の上では、魔王と魔王国最高幹部ザンダーマが戦況を見ていた。
「魔王様の策、流石でございます! 最初に魔王様が全軍で夜襲をかけるとおっしゃったときは、無謀だと思いましたが、あの敵の慌てようを見ると、まさにこれこそが奇襲でございますな!」
ザンダーマは魔王軍が、王国軍を奇襲により蹴散らしている様をみて、こころから魔王の策のすばらしさを感じていた。




