魔王出陣
「皆の者!」
意見が出尽くして、会議が平行線になったころ、魔王が突如として声を発した。
幹部たちはみな、魔王の言葉に耳を傾けた。
「我が国は偉大な魔族の国である! 人間ごときが何万攻めてこようが恐れることはない!」
「皆の者! 私が全軍の指揮を執る! 私についてまいれ!」
これまで、魔王自身が戦の大小を問わず、兵を率いたことは一度もなかった! 現在の魔王は賢王と呼ばれるほど、その治世はとても優れたもので魔王国は経済的に過去のれきしに類を見ない繁栄を遂げていた。
戦の能力は未知数であるが、彼が言うならそうなんだろうと、誰もが思えるほど、魔王の言葉には、何故か説得力があった!
玉座の間は静まり返っていたが、徐々に声が漏れだした。
「魔王様がおっしゃるなら」
「魔王軍は最強だ!」
部屋のあちこちから勇猛な声が上がった。
これは魔王が持つ魔王覇気の権能であったが、部屋にいたもので、それに気づいたのはディアだけであった。
「おおっ! 人間など踏みつぶせ!」
「皆殺しだ!」
何の根拠もない自信が玉座の間を埋め尽くした!
「ちょ、ちょっとマクマグ殿! 皆急に張り切っていますけど、大丈夫ですか!」
ディアはマクマグの背中越しから小声で話しかけた。
マクマグはディアの方を振り返って大げさそぶりでディアの両肩を掴んだ
「どうしたんだディア! そんな弱気で! オレ達は魔王軍だぞ! 人間等相手にならぬわハハハハハ!」
マクマグの目は血走っていて、どこかいってしまっているような表情であった。
「ええっ・・・・おおおおっ」
ディアは仕方なく周りに合わせるような形で歓声をあげた!
こうして魔王国は5000の兵で王国軍10万を迎え撃つことになった。ディアの所属する近衛兵団第3支部総勢120名も、後方部隊として参戦することになった。
後方部隊の役割は、兵糧の調達や兵站の確保であったので、ディアの役割は大きく、忙しく働くことになってしまった。
すでに先遣隊が出発しディア達後方部隊も出陣を間近に控えている頃、ランドたち冒険者3人組が事務長室にやってきた。
「久しぶりだな!」
彼らはどうやら旅支度をしているようであった。
「どこか行くのか?」
ディアは、少し寂しそうに尋ねた。
「ああ、ここ魔都も戦場になるって噂だし、ひょっとすると、この国自体がやばいって話も聞くからな・・・・」
ランドたちはミストレアに帰ることも検討したようであったが、魔王国の都市はどこも王国に占領される危険があるということで、とりあえずもう国から離れるべきだと判断していた。
「ディア、お前も一緒に来ないか? 事務長って言ったて、折り合えず臨時バイトのようなものだろう! 魔族でもないオレ達が、この国で戦に係る必要はないはずだ!」
ランドの熱い語りはディアの心を揺さぶった。
「そうだな・・・・だけど、もう少し協力しようかと思う・・・・」
ディアはマクマグ達第3支部の面々が好きであった。途方に暮れていたディアに仕事を紹介してくれた恩もあったが、それ以上に屈託なく上下の別もほとんどない、この支部が性に合っていた。
「そうか、わかったよ! だけど本当に危ないと思ったら、すぐに逃げるんだぞ!」
ランドたちとディアは固い握手をして別れた。




