勧誘
「あ、悪魔!」
ディアは声のする方を振り返って、その姿を見て叫んでしまった!
「みつかった・・・・」
ディアは悪魔神城からやってきた悪魔が自らを追ってきたのだと、肩をおとした。
「悪魔って・・・・ちょっとショックだな・・・・確かに顔が怖いってよく言われるけどな」
声を掛けてきたのは、魔人国近衛兵団第3部隊のマクマグであった。彼は魔族であり、額から大きな角が1つ生えていた。
「聞こえちゃったんだけど、仕事を探してるなら、うちで働かないかい?」
マクマグが言うには、魔界の地に建設された砦や城に多くの優秀な人材が移動し、近衛兵団の人手不足だということであった。
「それって、兵士ということですか?」
女冒険者のリウが驚いたように尋ねた。近衛兵団といえば魔王軍の精鋭中の精鋭である。いくら人手不足とはいえ、酒場であった見ず知らずの若者に声を掛けるとは思わなかったからだ。
「そういうのは、ちょっと・・・・」
ディアは慌てて否定した。
「い、いやっ、ちょっと待ってくれないか! 近衛兵団といっても、君に戦ってほしいわけではないんだ! 料理人、掃除担当、食材調達担当等、君の好きな仕事を担当してくれれば!」
マクマグは必死だった。
何でも兵隊だけでなく、近衛兵団の主だった、軍属つまり兵隊以外の人材はほぼ、新しく建設された、砦や城に移動になったのだそうだ。そのため残された兵たちが、慣れない掃除や、洗濯等、やっているのだそうだが、これがまたひどい状況だという・・・・
「なるほど、だけど、オレも掃除や洗濯とか、料理なんて、やったことないからな・・・・」
ディアは、やはり否定した!
「いや、何も君の苦手なことを無理やりやってほしいわけではないんだ! 例えば、君の得意なこととか、以前やっていた仕事みたいなことなんかを、やってもらえば・・・・」
マクマグは今にも泣きそうな顔である!
「以前の仕事って・・・・商社にいたときは、物品の調達とかなら・・・・」
ディアはなんとなく、呟いてしまった。
「了解した、君を食材や、消耗品、武具全般の調達責任者に任命する!」
マクマグは本気であった。
「ちなみに私は近衛兵団団3支部部隊長のマクマグだ!」
マクマグは満面の笑みを浮かべた。
「なにいってんだ、この人!」
ディアはマクマグの強引な勧誘に面食らいながらも、目下無一文であったため、短期の臨時でという条件付きで引き受けることにした。
「ありがとう、これでようやく安心して魔都に帰還できる!」
マクマグは1週間以上、人材を捜し歩いていたようだが、まだ1名も勧誘できていなかったそうだ。
「出発は明日の朝、近衛兵団の馬車で魔都に向かうから、決して逃げないでくださいよ!」
マクマグはディアの腕を両手でがっちりと掴んで、改めて頼み込んだ!
「は、はあぁ・・・・」
不安で一杯のディアであった。




