木こり
村の中に入った冒険者3人は、そのあまりの静けさに異様さを感じた。誰かが門を開けて、さらには門を閉じたはずなのだが、付近には人影を見ることはできなかった。
村の奥には男爵屋敷と思われる大きな屋敷があり、門からは1本道だった。道はメイン通りのようで、その周りには商店や家々が立ち並んでいた。
「あの門は、どうやって開いたんだ? それに人の姿が全く見られないぞ!」
リーダーは振り返り、門を強く押した! しかし門は何かの力で固く閉ざさせているようで、びくともしなった。
「これって、冗談じゃなくて本当に悪魔の仕業ってやつ?」
冒険者の女は身震いしながらあたりを見回して警戒している。
「とにかく、この事態はオレ達だけで、どうにかできるような代物じゃないぞ! 門が開かなくても、どこかに出口があるはずだ! どうにかして、ここから抜け出すぞ!」
さすがは、冒険者である危険察知能力は常人より優れているようで、彼らは即座に脱出の決断をくだした。
「そうと決まれば、こんなところにいつまでもとどまっているのは危険だ! 行くぞ!」
冒険者達は警戒しながら、出口を捜索するために村の中に入っていった。
冒険者たちが、門前からいなくなって、数分後ガスツーンとメイスンが門を開けて村の中に入ってきた。
やはり二人も村の中のおかしな雰囲気に、すぐに気づいた。
「彼らは、もういないようですね」
ガスツーンはあたりを見回したが、冒険者たちの姿は、何処にも見当たらなかった。
「ガスツーン殿、そんなことより、死にたくなければ私から離れないことだ!」
そういうとメイスンは速足で。男爵屋敷の方にどんどんと進んでいった。
ガスツーンは慌てて、小走りでメイスンの後を追った。
木こりと漁師は二手に分かれて、裏門に向かっていた。
「全くあんな陰気そうな爺と一緒に行動できるかっていうんだ! 盗賊って聞いていたのに、なんだか変な雰囲気だからな、やばそうなら、オレは一人で逃げてやる!」
木こりは恐怖心を隠すように独り言を放しながら裏門に向かっていた。
「ガルルルルッ」
どこからか、獣のような唸り声が聞こえてきた。
「な、なんだよ! 獣でもいやがるのか!」
木こりは何もいない空中に向かって斧をぶんぶんと振り回した。
「ハハハハッ! オレの斧さばきを、恐れて逃げていきやがったか!」
木こりは気配が消えたことで安心したようだ、
「やはり、ここは逃げるか! あのガスツーンとかいう爺に義理があるわけでもないしな! 前金だけで十分だ!」
ガスツーンは独り言を言いながら逃げるために振り返った。
「エッ・・・・」
木こりは凍り付いた! 気配は一切なかったはずである! しかし今自分の目の前に、大きな犬がいた! いや犬のようでもあり、オオカミのようでもあるが、どちらにしてもただの獣ではないことは、木こりにも一目でわかった。その存在は全身の皮膚がなく、真っ赤な血を前進から垂れ流していた。
「・・・・これって、魔物ってやつなのか・・・・」
「ガチガチガチ」
「うるさいな・・・・静かに・・・・」
木こりは自身の歯が恐怖で震えて音をたてていることに気づいていなかった。
犬のような存在は、木こりの周りをゆっくりとグルグル回っている。
「えへへへ、よく見ると、ただの犬ころだな・・・・」
木こりの目は血走って、彼の精神はとっくに限界を超えていた。木こりは斧を振りかぶった!
「オレはこんなところで死なないぞ! 死んでたまるか! おおおおおっ」
木こりは斧を振り降ろした! いや振り降ろしたつもりだった!
「あ、あれ・・・・」
木こりは自身の目線が一気に地面と同じ高さになっていることに気が付いた! 眼前には何故か自身の頭部のない体が首から血を噴き出している。
彼の意識は次の瞬間、永遠に消滅した。




