馬車移動
「おそらく、大きな盗賊団あたりが男爵領を占拠したと私は思っている! この人数でまともに戦って勝てるとは私も思っていない! 救出隊とはいっても、救出よりも、状況を調査する情報収集が本来の役割だと思ってほしい! その上で、王都や、冒険者組合に正式に依頼を出そうと考えている!」
「だから無理に救出しようとしたり、あまり目立った行動はしないように気を付けてほしい!」
ガスツーンは馬車の中で、丁寧に今回のそれぞれの任務について説明した。
「弱気だな! 盗賊ごとき、オレの剛腕で打ち倒してやるよ! 山で木を切ってると、盗賊なんかと出くわすことなんて、珍しくないからな! 襲ってきても毎回返り討ちにしてるからな」
木こりの男は力こぶを作って、筋肉をアピールした。
「全くだ、ワシも猟師として何十年、山にいるが、これまで討伐した盗賊など星の数ほどいるからな! どれだけ人数がいても、所詮盗賊など我らでだけで問題ない!」
猟師の男も巨大な弓をアピールして木こりに賛同した。
2人とも、長年自分の腕だけで盗賊を撃退して木を切り、猟をしてきたため、確かな自信を持っていた。
「素人が、あまり無理したら怪我するよ! こういうことはプロに任せるのが1番だよ!」
冒険者の女が木こりたちを横目で馬鹿にしたような口調で話をした。
「なんだと、この女! そんなに言うならここで勝負しろ!」
木こりが突然立ち上がったため馬車が大きく揺れた。
「皆さまのお力は信用しています! 信用しているので、どうかこんなところで仲間割れしないでいただきたい! 報酬を支払っているのは子爵家ですよ!」
ガスツーンが強い口調で馬車に乗っている救出隊のメンバーをたしなめた。
メイスーンは一連のやり取りにイライラを募らせているようだったが、ディアが必死で暴走を止めていた。
数日後、馬車は男爵領に入った!
「あと数時間で男爵領の村に到着するでしょう!」
ガスツーンは、かつて何度かホビー男爵に会うために訪れたことがあった。
「だけど、なんだかおかしくないか! 静かすぎる!」
御者の男が馬車の中に声を掛けた。
「確かに、獣や魔物の声どころか、鳥や昆虫の泣き声さえ聞こえないぞ!」
木こりの男も、御者の言葉に反応して耳を澄ましている。
「これは盗賊とかじゃないかもな・・・・」
冒険者のリーダーが馬車の外を見ながら不安そうな声をあげた。
「だったら、何だっていうんだ!」
表面的には強がっている木こりだが、内心ではかなり不安を感じていた。
「皆さま、ここからは特に慎重に参りましょう! 前にもお話しましたが、この救出隊で無理に何かをしようとする必要はありません!」
ガスツーンは自らの不安を押し殺し、依頼主として救出隊のメンバー一人一人にパニックを起こさないように声を掛けて回った。
やがて村の城壁が見える位置までやってきたところで、救出隊は馬車を停止させた。遠くからでもわかる異様な雰囲気に村は包まれていた。




