怪しい男
「ちょ、ちょっと待ってください! 決して怪しいものではありません・・・・」
笹の中から現れたのは、全身ボロボロの男だった。
「人か! こんなところに一人で現れるとは十分に怪しいぞ! やはり黒焦げになれ!」
メイスンは再び男に手をかざした。
「い、いや待ってください!」
男は慌てて川の中に入り、全身の汚れをくまなく洗い流した。
渓流が男の汚れで汚されるのが嫌で、ディアは眉を寄せて男を睨みつけた。
「あらためて、私はロバート子爵家の執事ガスツーンでございます」
顔や服の表面の汚れはとれたが、相変わらずボロボロであった。
「そんな奴は知らん! やはり死ね」
メイスンは剣を振りかぶった!
「えっ、えっ、ええええっ、どうしてそうなるのですか・・・・!」
ガスツーンはあわてて横にいたディアに助けを求めた。
メイスンはディアの方を振り返り、処分を確認した。
「いいんじゃないのか!」
ディアは渓流を汚された恨みを晴らしてやろうと考えていた。
「ちょ、ちょっと待っていただきたい!」
ガスツーンは膝をついて、ロバート子爵がホビー男爵領に赴いて帰ってこないこと、自らは救出隊のメンバーを集めるために領内を探し回っていることを伝えた。
「話は終わったか、じゃあもういいな! そろそろ死ね!」
メイスンは1歩踏み出して、ガスツーンの首を飛ばすために剣を振りかざした!
「ホビー? どこかで聞いたことが・・・・」
ディアの一言でメイスンの件はガスツーンの首の皮一枚切ったところで停止した。
「ひ、ひ、ひいいいい」
ガスツーンは放尿していた。
「よく覚えてないが、まあ殺す必要はないか・・・・」
ディアがそういうと、メイスンは剣をおさめた。
ガスツーンはへなへなと崩れ落ちた。
「邪魔だ! 命は助けてやるから、さっさと消えろ!」
ディアはそっけなくガスツーンをつけはなした!
「お、お待ちください! お二人は旅の方とお見受け申します! どうか、私共にお力をお貸しください!」
ガスツーンは跪き懇願した。
「うざい、やはり死ね!」
メイスンは再び剣を構えた。ディアも止める気配はなかった。
「お、お待ちください! 男爵領の状況は以上です! こんな事態は魔物か悪魔の仕業に違いないです! お二人のようなお強いお方の力が必要なのです!」
ガスツーンはできる限りの早口で命がけの懇願をした。
「んっ、今何と言った?」
これまで無関心だったディアが初めて興味を示した。
「お二入のような御強いお方に・・・・」
ガスツーンはやっと興味を示してもらえて、喜んで話をした。
「違う! そこじゃない!」
ディアはガスツーンの前までやってきて顔を凝視した。




