ガスツーン
「子爵様はまだ戻らぬのか?」
ロバート子爵家の執事長ガスツーンは屋敷の中を右往左往している。
ロバート子爵一行がホビー男爵領に向かってから、すでに2週間が経過しているが、子爵が戻ってくる気配はなく、何度か送った使者からも何の連絡もなかった。
「おそらく何かあったに違いない! 救出隊を送らねば!」
ガスツーンは屋敷の主だったものを集めた。
「というわけで救出隊を結成し、男爵領にいってもらうことにする」
ガスツーンは立ち上がり、握りこぶしを作った。
「救出隊といってもガスツーン殿、騎士団長以下多くの者は子爵様に同行して、今屋敷に残っているのは年寄りや、女子供ばかりです! 隣領とはいえ、男爵領まではそれなりに距離があります! 」
部屋に集まった面々はお互い顔を見合わせて思案している。
「それについては領民の有志を集めようと思っている」
ガスツーンは、しっかり考えているぞと自慢げだ。
「・・・・」
それを聞いた、面々はさらに不安気であった。
数日後、再び屋敷で集まった面々はガスツーンの言葉を待った。救出隊結成の報告を聞くためだ。
「えー、救出隊に参加する有志は・・・・今のところ・・・・ゼロ・・・・」
ガスツーンは肩を落として報告した。
「やっぱり・・・・」
部屋に集まった面々はガスツーンの方向を聞いて一様に納得していた。ロバート子爵は決して良い領主ではなく、領民達からは、嫌われているといっていいだろう。
「ガスツーン殿、ここはやはり王都に救援を要請するべきではありませんか」
集まったうちの一人が提案した。
「いや、それはまだ早計ではないでしょうか! そんなことをして大きな問題になれば、あとで我々が子爵様にどんな仕打ちを受けることになることか・・・・」
別の者がしかめっ面になりながら、重々しい口調で話した。
「どうでしょう、領内には町や村から離れた山や谷に住んでいる子爵様とほとんど関わりないもの達もおります! そういうものに多少の金銭を渡してでも集まってもらうというのは・・・・やはり、そのようなものを集めて回るのは、かなり労力が必要になりますし・・・・」
提案したものは自身が辺境の村出身であったために提案したのであったが、今集まっているもの達に、辺境の村のさらに奥に住んでいるようなものを集めて回ることができるものがいないことに気づいて、馬鹿なことを言ったと思った。
「そうですね、そのような者がこの中にいれば、そもそもその方が救出隊として男爵領に行けますものね・・・・」
給仕係の女性が、ため息交じりに言葉を吐いた。
「いや、もはやそれしかないだろう! 」
ガスツーンは立ち上がって声を荒げた。
「しかし、ガスツーン殿、我らにそんな奥地に行けるものが・・・・」
給仕係の女性は、か細い声でガスツーンに話した。
「皆に、無理をさせるつもりはない! 私が一人で集めてまいります!」
ガスツーンは力強く宣言した。
「・・・・ガスツーン殿を一人で行かせるわけには・・・・」
何人かが渋々ながらも手をあげた。
こうして数人が手分けをして、救出隊に参加する人材集めを行うことになった。




