ロバート子爵
ドアから入ってきたのは使用人の一人である。
「ひえっ!」
彼はワクから発せられた、殺気に気おされ言葉を発することも忘れ、その場で立ち尽くした。
「何の用だ!」
ワクは使用人を怒鳴りつけた。
さらなる殺気に、逃げ出したくなる気持ちを必死に抑えて使用人は答えた。
「ロバート子爵のご使者がおみえです・・・・」
「ロバート?誰だ」
ワクは使用人に尋ねたが、それに答えたのは男爵夫人である。
「知らないの? 領地を接している隣の領主よ」
男爵夫人はワクを小ばかにしたような表情で応えた。
ワクは男爵夫人を睨みつけたが、すぐに使用人に向き直った。
「わかった、その使者とやらに会おうではないか」
ワクは立ち上がり応接室に使者を通すように使用人に伝え、自身も応接室に向かった。
ワクがいなくなった室内では男爵夫人が指を切り落とされた娘のもとに駆け寄り、村唯一の回復魔法が使える男の元へ娘を送り届かせた。
「使者というのは、お前か!」
「はい私でございます」
使者はいくら貴族であっても、ほぼ初対面の他国の使者に対する態度とは到底思えない不遜なワクの態度に嫌悪感を覚えつつも冷静に対応した。
「失礼ながら男爵様のご子息とお見受け申し上げます。 ホビー男爵がお亡くなりになったこと、まことに残念なことでございます。 わが主は何かお力になることはできないかと私を派遣されました」
ホビー男爵の死を聞きつけた隣地を支配するロバート子爵は、まだ幼い子供しかいないホビー男爵家を乗っ取ろうと画策し、使者を遣わしたのであった。
「ほおお、それはご丁寧に・・・・」
ワクは少し考え込んで使者に伝えた。
「とてもありがたい申し出である。さっそく子爵様をご招待してぜひお力をお貸し願いたいです」
ワクはとても丁寧に使者に対応し、使者は満足し子爵領に戻っていった。
ロバート子爵は使者から、ホビー男爵領でのやり取りを聞いて、大変ご機嫌だった。
「やはり、ホビー男爵は亡くなっていたのか! うわさだけは聞いていたが、一向に男爵家の相続のお許しを国王陛下に奏上しないためにおかしいと思ってはいたが・・・・女、子供ばかりで途方に暮れていたのだろう!」
ロバート子爵はだらしない笑みを浮かべた!
「よし、早速ホビー男爵領に向かう準備をせよ!」
ロバート子爵は薄ら笑いを抑えることができないでいた!
彼はホビー男爵領を奪い取るだけでなく、これをうまく利用すれば、伯爵位まで自らが手に入れることができるのではないかと考えていた。
実際は、こんなことで伯爵になることはできないのではあったが、彼にはわからない。
翌日、ロバート子爵は配下をひきつれ、喜び勇んでホビー男爵領に向かった。この後、訪れる悲劇もしらないで・・・・




