指
姉は恐る恐る右手を差し出した・・・・
「ぽちゃん」
何かが姉のスープに落ちて小さな波紋がスープに広がった。
呆けたような顔をしていた姉だったが、次の瞬間事実を知った恐怖と激痛で大声で叫んだ。
「きゃああああああああっ」
「ガンッ」
ワクがテーブルを強くたたいたことにより、テーブルの上のスープの大半が飛び散った。
それを見た姉は、必死で唇をかんで叫び声を抑えた。
「うるさいぞ!」
ワクはそういうと姉を一蹴睨みつけたが、次の瞬間には笑顔になった。
「姉上、やはりお仕置きは必要ですよね! えへへ」
ワクはかわいい幼児のような笑顔を皆に振りまいた。それを見た部屋の面々はさらなる恐怖で全身を震わせた。
「さて、せっかくなので姉上にもらった虫もおいしくいただきますか」
そういうとワクはスープの中に入っていた虫を生きたまま食べた。
「まあ、そこそこの味だな! さあ姉上今度は私のプレゼントを食べてください」
ワクは姉の顔を真顔で凝視した。
「・・・・!」
姉はワクの言っていることが理解できなかったが、自分から目を離さないワクの目を見て何を意味しているのか理解した。
「そうです、さあ! さあ!」
ワクは嬉しそうに姉に語り掛けた。ワクは自分が切り落としてスープに落とした姉の指を姉に食せと、迫っていたのだ。
「ごめんなさい! 許してください!」
姉は痛みを堪えながら必死で頭を下げた。
「姉上、何を誤っているのですか! 姉上が私に許しを請うこと等何もないではないですか! ただ、私のプレゼントを頂かないということになれば・・・・許しを請うくらいでは済まなくなりますが・・・・さあ、どうぞ!」
ワクは般若のような表情と笑顔を繰り返し、さらに姉に迫った。
「申し訳ありません! もう許してください!」
たまらず男爵夫人が声を掛けた。
「うるさいぞ、メスブタが!」
ワクは突然、野太いドスの利いた声で男爵夫人を責めた。
「ひいいいっ」
男爵夫人はそれ以上何も言葉を発する勇気がなかった。
「カタカタカタ」
ワクの姉は体を震わせながら、スプーンを使ってゆっくりとスープの中の自らの指を救い上げた。
「これは、なかなか美味そうだ!」
ワクは嬉しそうに、姉をあおった。
「コンコン」
突然、扉をノックする音が聞こえた。ワクは楽しみを邪魔され、怒りを前面に表した表情でドアから入ってくる人物を睨みつける。




