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「皆、そう遠慮せずに食べるがいい」

 男爵屋敷のダイニングには、中央にワク、両サイドに男爵夫人、ワクの姉、さらに従者が2名部屋の中に直立不動で立っていた。

「ふふふ、そう緊張せずとも家族ではないですか! そうですよね母上!」


男爵夫人の目は血走っていた。

「あれは、一体何なの・・・・絶対に私の息子なんかじゃないわ・・・・」


「おや、これはなんだ!」

 ワクはそういうと自身の眼前のスープの中から親指大の虫を取り出した!


「ひ、ひいいっ!」

 部屋にいた従者二人は、恐怖により思わず悲鳴を出した。そもそも、ワクに提供する料理は特に念入りに調べている、虫などが入っているはずはなかった。


「これは、いかんね・・・・」

 ワクはそういうと部屋の面々の顔を見渡した。誰もがワクと目を合わすまいと、下を向いて固まっている。


「お前達がやったのか!」

 ワクは従者たちの顔に笑みを浮かべて見渡した。


「い、いえ私どもが確認したときにそのようなものは・・・・」

 従者2名は必死で弁解した。


「そうか、ではお前たちの責任ではないということか・・・・ではどうして私のスープにこんなものが」

「おかしいですよね、母上!」

 ワクはそういうと鋭い視線で男爵夫人を凝視した。


「わ、私にはわかりませんが・・・・は、早く新しいものを!」

 男爵夫人は声を震わせながら従者に指示を出した。


「母上!」

 ワクは男爵夫人に再び声を掛けた。


「ひっ、ひえええっ」

 男爵夫人は恐怖で自身のスープをこぼしてしまった。


「まさか、犯人は母上ですか?」

 ワクは視線を外さないまま男爵夫人に問いた。その間1度も瞬きをしていない。


「私ではありません! 決してそのようなことは・・・・」

 男爵夫人は大量の涙を流しながらワクに答えた。


「おや、母上ではないのですか・・・・それではそのように怯えなくても・・・・しかしおかしいな。従者でもなく、母上でもないとすると、後は一人しかいませんね」

 ワクは母の正面に座る姉の目をみた。

「ですよね、姉上!」

 従者たちはそのやり取りを見て同じことを考えていたが、声に出すことはできなかった。「もう一人いるだろう、あんたがと」


「っ・・・・」

 姉はあまりの恐怖で声が出せなかった。さらに失禁しているようで、ワクはその姿をみて笑みを浮かべた。


「姉上、食事をとる場所で、そのような・・・・」

 ワクはダメな姉にわざと呆れたようなそぶりをした。

「姉上もまだまだ子供だから、いたずらだったんだね! 僕は子供には寛容なんだ!」

 ワクは満面の笑みだった。男爵夫人や従者達は、このやり取りが、やっと終わると思い少し安心した。

「姉上、手を出して」

 ワクは自身も手を差し出して、仲直りの握手をするように促した。


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