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うるさい女

 ワクは、チンクルと騎士団長を引き連れ自領に戻ってきた。

「あなた! どうしてこんなことに!」

 男爵夫人はホビー男爵の亡骸を抱きしめ泣き叫んでいた。


「うるさい女だな!」

 ワクは男爵夫人を横目で眺めて舌打ちをした。


「屋敷の皆を集めよ」

 ワクはチンクルに命じて使用人たちや騎士団の面々を大広間に集めた。

「父である男爵が不幸な事件で亡くなった! この後は私がワク男爵として、この領地を引き継ぐ!」

 ワクが、そう宣言すると大広間に集まった面々がざわついた。

 「何か問題があるのか!」

 ワクは不服そうに声を荒げた。


「ワク様、父君が亡くなられて動揺して見えるのだと思われますが、そもそも男爵領を引き継ぐには国王の許可が必要になります。」

 初老の身なりがしっかりとした男性が代表して話しかけた。彼は男爵領の行政を取り仕切っていた長官である。彼はさらに、続けた。

「ワク様はまだ幼いからわからないことも多いでしょうが、男爵を引き継いだ場合ワク様はホビー男爵になられます」

 長官はワクを少し小ばかにしたような話し方であった。


「貴様、オレはワクという名前を授けられたのだ! 我の名を汚すとは万死に値する!」

 ワクの表情は悪鬼のようである。


 長官はまだ幼子であるワクの気配に押されて、尻もちをついた。

「騎士団長、この無礼者の両腕を斬れ!」

 ワクは果物でも切るように騎士団長に命じた。


 大広間にいた大半の者はワクの言っている意味がすぐには、理解できなかった。理解できた者も、騎士団長が子供のたわ言を実行するとは思わなかった。


「御意!」

 騎士団長は剣を抜き、尻もちをついている長官の前に仁王立ちとなった。


「えっ? はは・・・・」

 長官は何が起こっているのかわからないようで、目を丸くして騎士団長を見て首を傾げた。


「ザンッ」

 騎士団長は剣を鮮やかに振り降ろした。


「ああああああああっ!」

 長官の右腕は床に転げ落ち、切られた胴体から大量の血が噴き出した。


「うるさいな!」

 ワクは騎士団長に指を動かして何やら指示を出した。


「ううううっ」

 騎士団長は床に落ちた長官の腕を拾い上げ、長官の口に無理やり押し込んだ。


「きゃあああああああっ」

 この光景を見て、大広間にいた面々もようやく事態を理解し、あちこちで叫び声が上がった。


「ええい、沈まれ!」

 温厚なチンクルの怒声が大広間に響き渡った。

 さらに、長官が剣を頭上に掲げたことにより、大広間の中は一気に静まり返った。


「私こそがワク男爵である!」

 改めてワクが宣言をした。


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