デビルシャドウ
ドレッドは迷っていた。目の前の化け物と戦うべきか・・・・せっかく男爵領を乗っ取る寸前まで来たのだ。今逃げ出せば、またこれまでのような日陰の存在のままである。
その時ドレッドの前に膝まづきながらも吾郎の変化に目が離せないホビー男爵の姿が飛び込んできた。
「そうか、こいつさえいれば!」
「どけっ!」
ドレッドは馬に乗る部下の一人を切り捨て、その馬にまたがった。
「こいっ」
ホビー男爵を片腕一本で馬の背に乗せ、駆け出した。
「あんな化け物と戦えるわかないだろう・・・・こいつさえいれば・・・・」
ドレッドは一切振り返ることなく、アジトからどんどん遠ざかっていた。 チンクルは突然現れた怪物に驚愕しつつも、吾郎が盗賊たちを次々と倒していくのを見て、助かるかもしれないと感じていた。
そんな時に、目の前で男爵が再びドレッドに連れ去られた。
「君! 我々の事はいい! 男爵を助けてほしい!」
チンクルの目は真剣である。 化け物じみた姿の吾郎に懇願した。
しかし、吾郎は逃げたドレッドに興味がないようだった。ただひたすら目の前の盗賊たちを笑みを浮かべて切りつけていた。
一刀で切り殺すことなく、手足を切断し、なぶり殺しているようだ。
「チンクル殿!」
チンクルに声を掛けたのは騎士団長だった。
「男爵を追いかけましょう」
騎士団長は混乱の中、盗賊から馬を2頭奪っていた。
「そうだな!」
チンクルは吾郎の方を振り返ったが、すぐに馬に飛び乗り騎士団長とともにドレッドの後を追った。
「ああ、気持ちいい!」
吾郎は愉悦の域にいた、目の前には手足がない盗賊たちの死体が転がっていた。
ふと、ワクの転がっている頭部が目に入った。
吾郎は何げなくワクの頭髪を掴んだ、次の瞬間吾郎の腕から青黒い魔力があふれ出てワクの頭部を覆った。
吾郎は、その頭部を前方に投げ捨てた。
青黒い魔力で覆われたワクの頭部はどんどん大きくなり人の形を形成した。やがて完全なワクの元の姿を形成した。
ワクがよみがえった。
「悪魔神様!」
ワクは片膝をついて吾郎に挨拶した。
「えっ? なんとなく頭を掴んだら何か起きる気がしたから掴んでみたけど、何だこれ?」
吾郎は自らが生み出したにもかかわらず、目の前にあらわれた、小さな子供に困惑していた。
「君は誰?」
「はい、私は悪魔神様に生み出された、デビルシャドウでございます」
デビルシャドウと名のる子供は、さらに深く頭を下げた。
「デビルシャドウ・・・・、変わった名前だけど、もしかして悪魔とか・・・・」
吾郎はここに至ってやっと、シャーリーの言っていたことが本当かもしれないと理解を始めた。
「あの美人も、本当の悪魔だったのかな・・・・」




