変化
「・・・・」
死体の山の前で、笑っている吾郎をみてホビー男爵は、無理もないと感じた。極限の恐怖は人を狂わせてしまうのだと・・・・
「彼は、関係ない。彼のことは見逃してはくれないか」
ホビー男爵はあったばかりの吾郎の命乞いをドレッドにした。
「身代金も、奴からは取れないようだしな! もういらないな!」
ドレッドは目で部下に合図した。それだけ言うと吾郎に興味がないのか振り返り騎士団長を蹴りつけて笑っている。
「へへへへ、お前も運がないな!」
吾郎の前にいた盗賊がそういうと剣を吾郎に首に振り降ろした。
「ゴンッ」
剣は吾郎の首を斬り落とすことはなかった! 盗賊は剣が吾郎の首で跳ね返されたことに驚き、そのまま尻もちをついた。
「ガシッ」
吾郎は目の前で座り込んでいる盗賊の頭を鷲掴みにした。
「燃え上がれ!」
吾郎の腕に掴まれた、盗賊の頭が突如燃え上がった。盗賊は声をあげる間もなく頭から全身へ炎が回り、跡形もなく灰になった。
「えっ、オレ今何したの?」
自らの目の前で起きたことに吾郎は戸惑った。
「魔法か! お前魔法使いか?」
吾郎と盗賊の一部始終を見ていた盗賊が声をあげた!
ドレッドは振り返ったが訳が分からず、声をあげた盗賊をいぶかし気に睨みつけた。
「何が起きた?」
吾郎は眼前の出来事に戸惑いながらも、自らの心の高揚から笑みをたたえていた。
「何が起きたんだ・・・・」
「一斉にかかれ」
何人かの盗賊たちが吾郎にめがけて飛びかかってきた。
「ドサッ!」
吾郎に向かってきた数人の盗賊の上半身と下半身が綺麗に切断されて地面に倒れた。
「あれは・・・・」
吾郎の姿をみたドレッドは声を詰まらせた! 吾郎の両手の甲から禍々しい長剣が生えていた。
「化け物・・・・」
「えっ、何だこれ!」
剣が生えて一番驚いていたのは吾郎だった!
「だけど、今の気持ちよかったな! あの人間たちの胴体がスパッと切れて! もう一回やってみたいな!」
吾郎はニマニマしながら、心の声が出てしまっていた。そして吾郎はこの時まだ気づいていなかった! 自身に全く恐怖心や、人の死に対する憐憫といった人が感じるべき心の変化がなかったことを・・・・
「いや、それにしても今日はなんだか、いい日だな」
吾郎の心は晴れ渡っていた!




