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騎士団長

「チンクル殿、ワク様をなるべく遠くへ!」

 騎士団長は小声でチンクルに語りかけた。


「しかし、騎士団長殿、この人数を相手では・・・・」

 敵は偽冒険者であるドレッドたちを含め30人近くいるようだった。チンクルは騎士団長の実力をしらなかったが、いくら騎士団長が強くても、この人数を相手にするのは無理だと感じていた。


「お前達2人はワク様とチンクル殿を守れ!」

 そういうと、騎士団長は一歩前に出た。


「おやおや、これは騎士団長殿。もしかして、この人数相手に戦うつもりですかな?」

 ドレッドは剣をぶんぶん振り回しながら、騎士団長を威嚇した。

「オレは、別にお前たちに興味はない! あの坊主さえ置いていけば逃げてもいいぞ!」


「問題ない!」

 そういうと、騎士団長はさらに前に出て剣の柄に手をかけた。


「・・・・くそっ、お前達いけ!」

 ドレッドは騎士団長の態度に、戸惑いながらも部下に指示を出した。


「えへへへっかっこつけやがって」

 盗賊2名が一斉に騎士団長に斬りかかった。


「ドサッ」

 とびかかった盗賊たちは一瞬で騎士団長に切り捨てられた。


「な、なんだと!」

 ドレッドは、騎士団長のあまりにあざかたな剣さばきに驚きを隠せなかった。


「チンクル殿、こちらに」

 騎士がチンクルとワクを誘導して駆け出した。


「くそっ、お前達一斉にかかれ!」

 騎士団長の実力を垣間見たドレッドは部下に命令を下した。


「キン、キン、キン!」

 騎士団長は、数十人の盗賊たちの攻撃を華麗な剣さばきでかわしながら、逆に攻撃を仕掛けていた。有象無象の盗賊の攻撃とはいえ、貧乏貴族の騎士団長の強さとしては異常だった。


「お前はいったい!」

 ドレッドは騎士団長のあまりの強さに完璧な計画が崩れていく恐怖をかすかに感じていた。


「彼は一人で大丈夫なのか・・・・」

 チンクルは護衛をしている騎士に尋ねた。


「我らはともかく、騎士団長なら大丈夫でしょう!」

 騎士は騎士団長を心から信頼しているようだった。

 騎士団長はもともと隣国のA級冒険者だった。旅先で妻が病気になり途方に暮れていたところを、ホビー男爵に救われた。その恩義に報いるため、そしてホビー男爵の人間性に惹かれたため、薄給の田舎貴族の騎士団長に引き受けたのである。

 彼は今こそ、これまで受けた恩義を返す時だと感じていた。


「お前の強さはわかった! オレが新しい領主になったら今の倍の報酬でお前を雇ってやる!」

 ドレッドは騎士団長を力づくで倒すことを諦めた。しかし彼はドレッドの話に耳を傾けることは一切なく、さらに剣を振るいドレッドに迫ってきた。


「クソッ・・・・そうだ!」

 ドレッドは不敵な笑みを浮かべて、部下の一人に指示を出した・・・・


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