裏切り
救出隊はドレッドの案内で洞窟の中に入っていった。
「うわあああっ!」
突然チンクル達の背後から、大きな叫び声が上がった! 騎士団やチンクルが振り返ると、救出隊の後方にいた村人や従者が血を流して倒れていた。
「な、何故だ!」
チンクルが声をあげたのは、村人たちの前で血のりがついた剣を持ち不敵に笑う戦士見習いたちにだった。
さらにドレッドたちが倒した洞窟入り口の見張りたちまでが、元気に立ち上がり攻撃を仕掛けたようだった。
「ぐわああああっ」
再び叫び声が上がったのは、救出隊の先頭にいた騎士団たちからであった。
「皆の者、洞窟から退避だ!」
呆然としているチンクル達に檄を飛ばしたのは騎士団長だった。
チンクルは、その声で我に返ってワクを小脇に抱え洞窟を飛び出した。
洞窟を出てきた救出隊は、チンクルとワク、騎士団長と2名の騎士だけだった。洞窟の中では取り残された救出隊の叫び声があがっていた。
「騎士団長殿、これは?」
チンクルが騎士団長を見ると、彼は洞窟の入口を苦々しい顔で睨んでいた。
やがて洞窟から出てきたのは、べっとりと体中に返り血を浴びたドレッドたち冒険者と盗賊たちであった。
「ドレッド、貴様裏切ったな!」
やっと状況を理解したチンクルはドレッドたちを激しく非難した。
「あははははははは!」
ドレッドは激怒しているチンクルを見て大笑いした。周りにいた盗賊たちも、くすくすと笑いを隠せないようだ!
「裏切った? 馬鹿だな! まだわからないのか?」
ドレッドはそういうと、にやにや笑みを浮かべて騎士団長を見た。
「チンクル殿、奴らは裏切ったのではなく、奴らこそが盗賊なのです・・・・」
騎士団長は歯を食いしばりながらチンクルに答えた。
「あははは、ようやくわかったか! そうだよ、オレこそが、この盗賊団の頭ドレッド様だ」
ドレッドは自慢げに話している。
「な、なんだと・・・・」
チンクルは怒りでおかしくなりそうだったが、自らにしがみついているワクの事を何としても守らないといけないと冷静に考えていた。
「なぜだ! なぜこんな手の込んだことを!」
チンクルはドレッドに話しながら、何とか打開策はないかを考えていた。
「ああ、それはな・・・・まあお前に説明する必要はないが・・・・男爵の領地を手に入れるためだ!」
ドレッドはもともと、他国の騎士であったが、ケンカ沙汰で騎士団を追われ盗賊にまでおちていた、再び這い上がるために小さなホビー男爵領を狙っていたのだ。
「正面から襲ってもよかったんだが、さすがに小さいとはいえ城壁もある領地を攻めるのは手間取りそうだったんだよ」
ドレッドは作戦がうまくいったため、自慢げにぺらぺらしゃべっていた。




