救出隊出発
救出隊の見送りには男爵夫人をはじめ、ほとんどの村人が参加していた。
「皆々、主人の事よろしくお願いします」
男爵夫人は、深々と頭を下げた。
「奥様、頭をあげてください! 我々が必ず救出してまいります!」
チンクルの目にも涙がにじんでいた。
「ちょっと待った!」
救出隊が出発しようとしたとき、元気な声がかかった。男爵の一人息子ワクであった。
「ぼくもチンクルと一緒に父様の救出に行く!」
「ワク、そなたはまだ6歳ではありませんか! 救出隊の皆さまのご迷惑になります」
男爵夫人はワクを両手で抱きしめた。
「嫌だ! 僕も父様を助けるんだ!」
ワクは男爵夫人の腕の中でバタバタと暴れている。
「奥様、ワク様は6歳とは言えほぼ―男爵家の跡取りです。ワク様の事は必ず私がお守りいたします」
ワクの思いを知っているチンクルが見かねて、助け船を出した。
「・・・・」
しばらく考え込んでいた男爵夫人であったが、心を決めて息子に語り掛けた。
「ワク、わかりました! しかし必ず生きて帰ってくるのですよ」
「はい、わかりました! 母上!」
ワクは元気に答えた。こうしてワクを含めた総勢21名は盗賊のアジトに向かった。
半日ほど行軍した頃、救出隊は盗賊のアジトである洞窟が目視できるところまでやってきた。
「チンクル殿、我らが先行し、見張り等を排除します! 合図をしたら、一気に洞窟の中に攻め入ってください」
ドレッドはそういうと、戦士見習いの二人を除いた4名でアジトに向かった。
チンクルたちは茂みに潜んで合図をまった。姿を見られないように洞窟の入口に近づいたドレッドたちは、あっさりと入口にいた2名の見張りを排除して洞窟の中に潜入した。
「おおっ! ドレッド殿さすがはB級冒険者! あれほどあっさりと見張りを倒すとは!」
チンクルはドレッドたちの鮮やかな戦いぶりを見て心から感心していた。
ワクは武者震いか恐怖からか、全身が小刻みに震えていた。
「チンクル殿、この分では救出作戦は、旨く行きそうですな」
ドレッドたちの力量について半信半疑であった騎士団長も、その戦いぶりを見て納得したようだった。
やがて入り口付近にドレッドの姿が再び確認された。ドレッドはチンクルたちに向けて、大きく腕をふった。
「おお、あれはまさしく合図だな!」
チンクル達救出隊は、騎士団を先頭にチンクル、ワク、従者、村人、戦士見習いの順で洞窟に向かった。
6歳のワクも腰に差した子供用の剣を抜いて、チンクルに続いている。




