お金がない
「奥様! 奥様!」
ホビー男爵夫人の部屋に向かうドカドカと走る男の声が2階建ての古めかしい屋敷に響き渡った。
「バンッ」
男は勢いよく扉を開けて部屋に入ってきた。
「騒々しいですよ!」
ホビー男爵夫人の部屋に入ってきたのは、執事のチンクルだった。
「こ、こんなものが届きました!」
小太りのチンクルは顔中に汗をかきながら男爵夫人に1通の手紙を手渡した。
「こ、これは・・・・」
そこにはホビー男爵が誘拐されたこと、そして身代金の要求が書かれていた。
ホビー男爵夫人は驚きながらもチンクルに毅然と指示した。
「すぐに身代金の用意を!」
「・・・・」
「・・・・」
多少どんくさいところがあるが、忠義に厚く指示にはすぐ従うチンクルが固まって動かなかった。
「どうしたのですチンクル、旦那様のピンチですよ!」
男爵夫人はチンクルを厳しい口調で叱咤した。
「申し訳ございません、奥様・・・・わが家には、これほど高額な身代金を支払うお金がありません・・・・」
チンクルはとても小さな声で答えた。
身代金の要求は100万ゴルドであった。一般的な使用人の給金が30万ゴルドであることを考えれば、それほど高額金額ではなかった。
「わが家には100万ゴルドもないというのか・・・・」
夫人も自身の家が貧乏貴族であることは認知していたが、そこまでお金がないとは思っていなかった。
「・・・・そ、それならば隣の領地の子爵殿にお借りせよ・・・・」
隣領地の子爵の事を夫人はあまり好きではなかったが、背に腹は変えられないと思いチンクルに命じた!
「それは・・・・無理でございます・・・・」
チンクルの声は、さらに小さくなっていた。
「子爵様には、すでに使用人の給金の支払いなどに500万ゴルドの借り入れがございます・・・・」
「なんと!」
夫人の顔は色んな思いが入り乱れて真っ赤になっていた!
「いったい我が家には、いくらのお金がよういできるの?」
夫人は懇願するような思いでチンクルに問いかけた。
「すでに代々受け継がれてきた家宝等すべて売り払っておりますゆえ、かき集めて20万ゴルドかと」
チンクルは、とても言いづらそうに夫人に答えた。
「そ、それでは旦那様はいったいどうすれば・・・・」
夫人は今にも泣き崩れそうだった。
「奥様、一つ方法がございます!」
チンクルは今度は自信ありげに答えた。




