エピソード0 「終わりの始まり」
どうして生きているんだろう。
こんなにも役に立たない自分が。
いっそいない方が世の中のためになるんじゃないか。
退勤してからずっとそう考えて歩いていると、思考に白い靄がかかったような状態になり、気づいたら終電のホームに着いていた。
「危ないっっ!!!!!」
誰かの叫び声が聞こえる。そう感じた時にはすでに自分の身はホームの白線を超えて、迫り来る電車に身を乗り出して、まるで自殺しようとしているようだった。
そうか。死にたかったんだ、俺は。
死ぬ前には不思議とゆっくり時間が経過するとよく言われているが、本当にその通りだった。いままでの人生が頭の中でフラッシュバックした。
生まれてから多少貧乏ではあったが、優しい両親のもとに生まれ、奨学金フル活用で何とか大学へ行き、薬学部でひたすら教授の実験に付き合わされたっけなぁ。彼女もできたけどそれが原因で別れたし、おのれ教授。
就職先は希望通り製薬会社だったけど、希望部署に回されず営業部に入ってからが地獄だった。過酷なノルマの強要、出来なければ上司からのパワハラ、モラハラの嵐。日に日に病んで行ったけど独身一人暮らしの心配なんて誰もしてくれないから、ひたすら業績伸ばすために頑張ったけど、多分限界がきていたんだなぁ‥
両親には申し訳ないけど、もう生きるのが辛いのでこれで今世は終了とさせていただきます。
さらば。来世に期待。
ここまでコンマ1秒で考えて、いよいよ電車と激突する瞬間、ものすごい光が目に入って来て、俺は気を失った。