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大和の薬師  作者: ガランドウ
第一章  暗闘
3/9

#3 フラッシュバック


 PM7時 ファムアシスト社関西支店会議室。


 20畳ほどのスペースがある会議室の窓際に大きなホワイトボードが置かれ、アストロラインを中心に関係する人物名が書かれた相関図と、現場写真などが貼り付けられている。


 その脇に設けられたデスクに憮然とした表情で腕を組み座るのは73部隊曹長剣崎。

 デスクの向かいに直立不動で2人並び立っているのは同部隊1曹宮迫と士長竹田。


 因みにだが、それぞれが持つ肩書は剣崎の部署だけに通じる、単なる剣崎の趣味、ただのミリオタだ。


 「報告ですが、本目の望月は死亡を確認。当該組織の方は、火災によって識別が困難なほど焼かれていますが、周防会の平井以下2名と・・」

 「ああそれはいい。でだ、望月の死亡理由がトリカブト中毒・・附子か」

 宮迫の報告を遮り、デスクに両肘を付き2人に顔を寄せるように手招きする。


 「これって・・顕さんは、この案件の全貌を把握してるってことよな?」

 宮迫と竹田は顔を見合し、お互い顔をしかめる。


 「それより顕さんは?当然ココに待機してもらっているよな?」

 剣崎の質問に竹田は困惑しながらも答える。

 「えーと、それがですね・・用事があるとか何とかで‥」


 剣崎はダン!と両手でデスクを叩き、立ち上がると天井を仰ぎ見る。

 「なんでこうなるの!」


                ・

                ・


 同時刻 某大学附属病院。


 集中治療室の前にあるベンチシートに一人、榊原瑞江は祈りを捧げる様に顔の前で手を組み、沈痛な面持ちで座っている。

 (スミちゃん、ゴメン・・私が不甲斐ないばっかりに・・)


 自分がやってきたこと全てが後悔ばかりと、完全に信念を打ち砕かれた榊原は、この仕事から離れる覚悟を決めていた。


 集中治療室から一人の医師が現れ、榊原を見止める。

 「土田澄香さんはもう大丈夫ですよ、状態は安定してきています。それと・・」

 榊原は立ち上がり、目に涙を浮かべてコクコクと医師の言葉に肯く。


 「レイプ被害についても処置は済んでいます。ただ、やはり外傷の跡は残りますね」

 「先生!私出来る事なら何でもします、皮膚がいるなら私のを!ですからどうか・・」

 榊原は医師にすがり、その場に泣き崩れた。


 「イクさん、泣かないで」

 いつの間にか医師の隣に現れた顕が、榊原を抱き寄せ頭を撫でる。


 「え、顕さ・・う、ふえぇぇん」

 榊原は一瞬、顕の抱擁に驚くが、堰を切ったかのように大声で泣き出す。

 「もう・・泣かないでイクさん、大丈夫だよもう大丈夫」

 榊原が落ち着くまで、頭を撫で続けるのだった。

               


 「先生、河守といいます。これから治療室に入りますが、いいですよね?」

 榊原を落ち着かせベンチシートに座らせると、医師に断りを入れる。

 「ああ、話は聞いてるが患者は絶対安静ですし、会話も出来ないですが・・」

 既に連絡済みのようで、医師は了承する。

 「イクさんここで待ってて。もう安心して、澄香さんの事は僕に任せてね」


                ・

                ・


 薬師会総本部 総師室


 「失礼致します。沖様、滋賀での会報と総会の草案をお持ち・・」

 秘書と思われる女性が資料の束を抱え室内を見渡すが、目当ての沖が見当たらず、ふうと溜息を吐き奥にある扉をノックし扉を開ける。


 「沖様、本日は外出の予定ではございませんが?」

 その部屋はウォーキングクローゼットになっており、下着姿のままあれやこれやと洋服を物色している沖玲子がいる。


 「夜の予定はキャンセル、総会の議題書は出来てるから持って行って。それよりこのワンピースどう?まだちょっと寒いかなぁ・・」

 赤いノースリーブのワンピースを身体に当てがい、姿見の前ではにかんで見せる。


 総帥沖玲子の仕事ぶりは優秀そのもの。秘書としてサポートをしているが、先の事まで把握し仕事を回している沖は尊敬出来る上司である。

 だが・・


 「沖様、その・・派手といいますか、もう少し落ち着いた感じの方が」

 「う~ん。じゃあいっその事ミニ履いて薄手のニットとか・・」

 分かりやすいのだが、河守様の事になるとこの体たらく・・でも23才という年相応の目で見れば、恋も必要。


 「でしたら、こちらの白のブラウスにスワロフスキーのネックレスをあしらってみては?多分ですが、河守様はこういった感じが好まれるかと」

 目を見開き、顔を真っ赤にする沖。


 「な、な、なんです?べ、別に顕は関係ない!・・というか・・そう思う?」

 「さぁどうでしょう?」とあざとくお道化る秘書は、少し声色を替える。

 「ところで、今朝ご依頼いただきました案件の精査を致しましたが、今お読みいたしましょうか?」

 いそいそと白のブラウスに袖を通していた玲子は、姿見の前に立ち肯く。


 「剣崎部長の報告では、望月という人物が今回の本目のようです。従ってその人物の裏を私共の方で調べてみたのですが、とある大学の研究室に頻繁に足を運んでいたようです」

 「とある大学?」

 服装に余念が無い沖であったが、秘書の言葉に反応を示す。


 「はい、城北薬科大の陣内東洋医学研究会とのことです」

 沖はネックレスを巻こうとした手が止まる。


 「そう、この件は剣崎で大丈夫でしょう。ですので精査結果はこの場で破棄、私はファムアシストに向かうわ」

 「では、下に車を回しておきますので」


 素知らぬ顔で退出し、自分のカウンターに戻った秘書は独り言ちる。

 「沖様は結構積極的なんだけど、河守様ときたら・・う~ん」


 部屋に残された玲子は、姿見の前で自分を見据えたまま思いに耽り、立ち尽くしていた。


                ・

                ・


 某大学病院


 土田澄香の容態が劇的に回復し、一般病棟の個室に移されていた。


 担当医や看護婦たちはその回復ぶりに狐につままれた表情をし、担当医は精密検査をしたいと申し出るが、顕によって丁重に断られた。


 「スミちゃん、本当に良かった本当に・・」

 榊原は病室のベッドに寝かされた土田澄香の手を握り、涙を流す。


 全身に酷い痣があった澄香の身体が元通り綺麗な身体に治療され、榊原は改めて顕の持つ薬師の力に感嘆する。そして先程までの進退の思いは晴れ、今ではこの仕事に邁進する事を誓うのだった。



 「う、う~ん・・」

 意識が戻ったのか澄香は目を覚まし、辺りを寝ぼけ眼で見渡す。


 「あ、スミちゃん私だよ瑞江、わかる?」

 焦点の合わない視線を巡らすが、突然顔をしかめ震え出す。

 「だ、大丈夫だよ落ち着いて!ここは病院でもう心配ないから!」

 榊原は澄香の手を強く握り落ち着かせようと必死に話しかけるが、悪夢がフラッシュバックしたのだろう、錯乱状態に陥る。


 「イクさんここは任せて剣崎さんのとこに戻っておいて、心配してるだろうから」

 病室に入ってきた顕は、榊原に戻る様に指示し、手に持ったサイドバッグからピレットを取り出し、頭を抱え悲鳴を上げながら泣き叫ぶ澄香に優しく声を掛ける。

 「澄香さん、僕の事覚えてる?あの頃の事少し思い出そうか・・」


 ピレットを握りつぶし、「 解 」と呟くとその手が金色に輝き出す。

 金色の光が手から膨張し出すと、手を広げその光を澄香の頭上に撒くかのように振る。

 すると恐怖に歪んだ澄香の顔がすっと穏やかになり、眠りに落ちた。



 (澄香さん、僕の事がわかる?研修で一緒だった河守。さぁ、僕の手を取って)

 そこは澄香の意識下、顕が持つ能力の中でも、誰も成し得ない唯一の力。


 (顕さん・・?ここはどこ?何か薄暗くてすごく寂しいの・・)

 弄りながらも顕の手を取った澄香を引き起こすと、不安そうな顔をする澄香の頬に手を当てる。


 (そうだね、ここには何もないから。でもあそこを見て、僕と澄香さんが初めて逢ったあの日)

 顕は薄暗い空間の隅を指差す。するとその方向に星空の様に光の粒が現れ、その内の1つの光がこちらに向かって飛来し、二人を包む。



 顕と澄香は研修センターの一室にいた。

 顕は薬師の講師として教壇に立っている、そして澄香はその研修生の一人。


 3時間にも及ぶ午後の講習が終わり、澄香は一人居残り、顕を質問攻めにしていた。

 「河守先生は彼女とかいるんですか?」

 「な、何を突然・・そんなのいないです・・」

 「あ、先生初めて動揺した!かわいいなぁ」

 「動揺・・してませんよ!そんな話ならもうお終い!さぁ宿舎に戻りましょう」

 「えー、じゃあ私が彼女になってあげよっか?」

 「えぇぇ!・・もう土田さん、完全に僕をからかってますよね?」

 「赤くなってもう、ホントかわいいんだから!」


 思わず抱きしめてやろうと立ち上がった時、廊下の方から声がかかる。

 「スミちゃんいる?あ、ここにいた、早く風呂行かないと時間無くなっちゃうぞ!」

 廊下から教室を覗き込んで話しかけるは榊原瑞江。



 3人揃って宿舎までの道すがら、今度の休息日に琵琶湖まで遊びに行こうと瑞江が提案し、澄香が強引に顕を誘う。


 研修期間、辛いことの方が多かったが、それでも顕という存在が自分を後押しし、修羅の術を身に宿す道を歩みながらも、本来の自分を見失わずに居れた。


 薄闇の空間に戻ってきた2人。


 (この頃の澄香さん、今も変わらないよ。いつだって元気でみんなを楽しくさせる)

 顕は澄香を慈しむような笑顔で語り掛けた。

 (私、河守先生が好きです・・)

 涙を流しながら顕に触れようと手を差し伸べるが、思い直したように手を胸に引き戻し、震え出す。

 (でも、でも・・もう私は違うんです・・こんなに薄汚れ、穢れて・・こんなにも!)

 澄香の流す涙が血の涙に変わり、綺麗だった顔も歪みだす。


 薄闇の空間の一点が渦を巻くように歪みだし、その中心に向かって周りの星々が吸い込まれていく。

 ブラックホールの様な渦が全てを飲み込もうと膨張し出すが、顕は手を翳し、その渦を抉り取るように掴みだす。


 (河守先生!やめて、見ないでぇ!)

 暴行を受けた当時の姿へと変貌した澄香は顕にしがみ付き、懇願する。

 (これは、澄香さんには必要のない記憶、もう忘れていい事なんだよ)

 顕は澄香を強く抱きしめ、手に持った漆黒の渦を握り潰した。


PM8時 ファムアシスト社


 「ただいま戻りました」

 剣崎へ報告を上げる為、社に戻った榊原。


 「お、おおイクちゃん、土田の容態はどうだ?」

 剣崎は榊原の様子から、土田澄香の容態はいい方向に向かっていると推測出来たが、懸案事項は別のところにある。


 「ええ、それはもう、顕さんが来てくれて・・」

 「ちょっと待て!病院に顕さんがいるのか!?」

 剣崎は宮迫に目で合図を送り、宮迫は急いで受話器を取る。


 「そうですよ。顕さんがスミちゃんの治療とか色々してくれてますけど・・」

 「竹田!今すぐ病院に河守を迎えに行け!秒で連れ帰ってこい!秒で!!」

 剣崎の指示に、血相を変えて部屋を飛び出していく竹田。


 「それと宮迫、お前はロビー行って時間稼げ!分かってるな、それとなくだぞ!」

 「へい!今まだ病院にいるみたいっすよ!玲子さんの事は任せてください!」

 受話器を置いた宮迫は剣崎に敬礼をし、颯爽とロビーへ向かう。


 「よし、よし!首の皮一枚繋がった!」

 剣崎はデストラーデばりのガッツポーズを決め、歓喜する。


 「え?玲子さんって沖様?・・さっき下のロビーでお会いしましたけど?」

 榊原の言に、弓引くポーズで固まる剣崎。

 「はい?今なんつった・・?」

 「いや、だから沖様と会いましたよ?うーんいつもお綺麗な人なのに、今日はまた違った美しさというか・・なんか可愛らしいって感じで・・」

 沖玲子の姿を思い出し、両頬に手を当て上気する榊原。


 「えっと、イクちゃん・・もしかして、もしかするんだけど、河守が病院にいる事話した?・・いやまさかそんなことないよね?ハハハァ」

 「あ、それは・・」

 会議室内の電話機から呼び出し音が鳴りだした。




 催馬楽は自室のソファーに身を沈めながら、受話器に向かって話している。

 「ダイジョブ、ダイジョブ心配いらんよ、ちゃんと本部に話通してあっから。この件はこっちで捌いた、それだけの事。顕も話合わしてくれるって言ってたから」

 徐にタバコとライターを引き寄せ、火をつける。


 「剣崎も心配するの分かるけど、勝手に動いたのは顕自身だろ?いくら総師だからって、ちょっと甘やかしすぎでない?・・・まぁそっちの事情だろうから俺がいうのもなんだけどさ、それにしてもあそこまで顕にご執心なのは何なんだろうね?」

受話器を置き、たばこをもみ消した催馬楽は窓際に立つと、少し半笑いになる。


 「それにしても、沖玲子と顕・・普通に聞けば沖の心配性が異常なだけの話だが、その事で人一人平気で消えるほどの剣崎の言い方はどうなんだ・・?」

 新たなたばこに火をつけ、深々と紫煙を灰に取り込む。


「まぁけど、病院で鉢合わせた時に顕はどういうかな・・痴話ゲンカ?その様子でも聞ければ把握できるってなもんだが」




 竹田は自慢のFCのロータリーエンジンを唸らせ病院前に滑り込むが、タッチアウト。

 既にロビーで沖と河守が邂逅を遂げていた。


 植え込みに身を隠した竹田は、ロビー内を覗き見る。

 ロビー内で2人は対峙しているが、不思議な事に河守が沖をしかりつけているように詰め寄り、沖は身を縮込めているように見える。


 「はて?・・どういう成り行き?」

 訝しむ竹田ではあるが、会話の内容が聞き取れない為状況が分からない。



 「礼子さん、澄香さんは僕の教え子なんです。心配するのは当然でしょ?」

 顕は困り顔をするも、強い口調で玲子に説明をする。


 「でも!だからって顕が直接来なくても、私たちには沢山の治癒専門がいるのよ?その人たちにとっては沽券に係わる問題なの、顕も分かるでしょ?」

 玲子も引かないが、どこか置き換えて物を言っている。


 「じゃあ聞くよ?もし、玲ちゃんが傷付いたら、僕が手当しなくてもいい?」

 そう言われてしまうのが分かっていたのか、玲子は俯きながらイヤイヤと首を振る。


 「うん、僕も絶対に他の人にさせない。だけど、本当はこうなってからじゃダメなんだ、誰かが傷付く前に僕達は・・」

 そこまで言い、顕は溜息を付く。

 

 「でも澄香さんを助ける事が出来なかった・・だからせめて・・」

 後悔に項垂れる顕。


 「うん、そうだね。私たちはその為にも、もっと頑張らなきゃ・・」

 潤んだ瞳で顕を見る玲子は、そこで頭を切り替えるように左右に振る。


 「それもそうだけど!でも戦闘を行う事を厳重に禁止したはずよ!私との約束はどうでもいいって事?」

 形勢逆転、顕は目を逸らし何か良い言い訳が無いかと、目を泳がせた。


 一つ盛大に溜息を吐いた玲子は、表情を変え少しはにかんで見せる。

 「ところで顕、今私の事、玲ちゃんって呼んだ?」


 ハッとなった顕はバツが悪そうにソッポを向く。

 「はい!今から私といるときは昔みたいに玲ちゃんと呼ぶように!そうじゃなきゃずっと機嫌悪いからね!」

 玲子はくるっとプリッツスカートをなびかせ、背を向ける。

 「もう澄香さんは大丈夫なんでしょ?一緒に帰ろ」

 顕は困り顔のまま「うん」と答える。


 だが顕はそこでハッとなり、少し顔を赤らめ、思いつくまま玲子の背に口を開く。

 「れ、玲ちゃん、その洋服とてもよく似合うね」

 (機嫌を損ねた時はその子の事を何でもいいから褒めろ)という催馬楽の教えを思い

出し実行したのだ。


 「え、え?似合う?ホントに?」

 未だかつてない顕の言動に効果覿面、顔を赤らめつつ戸惑う玲子。

 「うん、すごく可愛らしいし・・」

 追い打ちをかけられた玲子は、あまりの嬉しさに顕の腕に抱き着き体を密着させるのだった。


 「う・・と、兎に角帰ろうか・・れ、玲ちゃん」

 「うん!じゃあ、何か美味しい物でも食べに行こ!いいでしょ?」

 玲子は顕の手を引き、満面の笑顔でロビーを出る。


 「そうだね・・あ、それじゃ竹田さんも一緒にどう?」

 植え込みが大げさにがさつき数瞬後、竹田が勢いよく飛び出してきた。


 「お、お疲れ様です!私なんかをお誘いいただき・・・」

 バツが悪そうに頭を掻きながら二人に声を掛けるが、何かに魅入られたよう途中で言葉を失う。


 「いや、申し訳ございませんが、これより報告に戻らなければなりませんので失礼致します!!」

 竹田は直立不動のまま敬礼を素早く済ませ、回れ右をし、FCに飛び乗り去っていった。


 「さ、いくよ顕!」

 玲子は足早に横付けされていたベンツに乗り込む。


 「あれ・・玲子さん・・じゃない玲ちゃん・・怒ってる?」

 急にへそを曲げた態度をする玲子が分からないまま、玲子の後を追うのだった。


                ・

                ・


 絵に描いたような手入れの行き届いた日本庭園を、またその庭にふさわしく広々とした広間を持つ屋敷の縁側に、胡坐をかき、ぼんやりと眺めている男がいる。


 「望月が死んだようよ」

 広間から現れた女性が、その男の背後から声を掛けた。


 男は振り返ることなく、庭の隅に立つ火が灯された灯篭に目を向け、独り言のように呟いた。

 「まぁあれだ、撒き餌みたいなもんだしな。これが頭領が動いてくれる切っ掛け?にでもなりゃいいんだがよ・・」


 女性が一つ溜息を吐いて、その独り言に呼応する。

 「動いてくれるかな?」

 今度は男が盛大に溜息を吐き、足元に大の字に寝転がる。

 「・・・わっかんね」


 2人が押し黙ると、その庭に似合った静寂が訪れたが、ほんの一時で女が静寂を破った。


 「おい、パンツ覗こうとするな」

 「見てないし、ってか見えないし」


 「ブッ・・」

 「踏んづけるよ」

 「もう踏んづけてるし・・」


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