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「れば」は接続助詞として正しいのか

 いきなりですが、また例文をふたつご用意しました。ご覧ください。


【例文1】

 その日孝史は、妹が留守中なのをいいことに、家族兼用のパソコンでアダルト要素の強いギャルゲーにいそしんでいた。やっと攻略対象を絞り込み、効果的なアプローチを始めた時だった。背後で音がしたことに驚いて振り向けば、そこには帰りが遅くなるはずの妹が立っていた。


【例文2】

 その日孝史は、妹が留守中なのをいいことに、家族兼用のパソコンでアダルト要素の強いギャルゲーにいそしんでいた。やっと攻略対象を絞り込み、効果的なアプローチを始めた時だった。背後で音がしたことに驚いて振り向くと、そこには帰りが遅くなるはずの妹が立っていた。


 上記の文章は、ある一箇所を除いて同じですが、気づきましたでしょうか。そうです。「振り向くと」「振り向けば」という、ほんの些細な表現の違いです。


 本来、「と」という接続助詞を使うべき箇所が、「けば(文章の前後によって異なりますが、そのほとんどは「れば」です)」になっています。特に同人小説に多くみられる、この「れば」についてお話します。



 接続詞・接続助詞だけに言えることではないのですが、ここが間違っていると、文章全体がおかしくなったり、意味そのものが変わってしまいます。「てにをは」に関しては、小説を書きたいという人にとっては最初に通る道だと思いますので、この本の中では省きます。



 さて、いよいよ「れば」の詳細ですが、「接続詞」「接続助詞」で検索をした際に、「れば」は一覧に書かれていないのです。誤用なのかと更に調べましたが、その根拠となる記述は、残念ながら見つけることが出来ませんでした。


 つまり、私程度の知識で結論を申し上げますと、誤用かもしれないし、そうでないかもしれない。世の中には「確信犯」「一生懸命」のように、誤っていながらも、そちらの方が有名になり、日々使われている単語も確かに存在しますし、その法則で言えば「れば」で繋いでもいいのかもしれません。なのでこの項では、私個人の好みの要素が強くなってしまいますが、それを踏まえてお読み頂けると幸いです。


 そもそも、「れば」はどうして広まってしまったのか。それは、「なんとなく、その方が「締まる」からだと思います。


 たとえば、1993年に放送されたテレビドラマ『振り返れば奴がいる』。『振り返ると奴がいる』では、なんとなくホラーを連想してしまいますが、「れば~」だとバディもの(実際には正反対の性格の二人)のように思えます。


 また、「れば」は、曲の中にもたくさん登場します。2011年発売 ClariSの『コネクト』。『魔法少女まどか☆マギカ』のOPとして有名な、あの曲です。


 二番の歌詞『振り返れば仲間がいて 気がつけば優しく包まれてた』と、「れば」「けば」が連続します。これは、歌詞といえどもあまり完成度が高いとは言えない箇所ですが、このように、詞・詩の世界では、割と当たり前に使われています。おそらく何かのタイトル、歌詞の中で見聞きした「れば」が記憶に残り、また、それを用いた小説を読む機会があることから、こんにちの「れば文化」に繋がってしまったと推測されます。接続助詞だけに。



 歌詞では、おなじみの「れば」。歌詞は言うまでもなく、メロディに合わせる必要から、文字数制限があります。詞は文法やその他ルールを無視しても良い、作者独特の世界だからこそ、「れば」を多用しても許されます。


 タイトルや歌詞では「締まる」印象だった「れば」が、小説で使われるとどうでしょうか。何かがおかしい。正解は、「と」で結ぶことです。こっちの方がすっきりしていて、シーンをイメージしやすくありませんか?


【例文3】

 すると、中から髪をオレンジ色に染めた老婆が出て来て、綾を睨んだ。


 接続詞の「すると」は、「と」を文頭に置いた時の姿です。「と」だけでも構いません。ですが、「れば」はどう考えても間違っているでしょう。普段何気なく接続助詞として「れば」を使う人も、さすがに文頭には書いていないはずです。誤用と断言は出来ませんが、【例文3】を参考にすると、その可能性がかなり高くなってきました。


 正しいのか正しくないのかに加え、文章には好みがあります。好みの文体、似たような単語がいくつもある中で、どれを選ぶか、どの接続詞でくっつけるか。


 自分の書くものこそが「好みの文章」になるように基礎を学び、個性を伸ばしていきましょう。私は好みでないことから、「れば」をお勧めしません。

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