キャラクターの個性分け
創作編を解説するにあたり、連載中の『そして二人が出会うまで』をサンプルとして使っています。小説を読んでいなくても問題ありませんが、ネタバレがありますので、あとで読んでみようという方はご注意ください。
女性主人公、相手役の男性、それぞれの周囲の人間と、書き始めるにあたっての人物は充分に出来ました。名前をつけた時点で、ある程度は決まっていますが、次にキャラクターの個性分けをしていきます。
主人公: 一倉聡子 内気だが、やさしくて頑張り屋。ぬいぐるみが好き。
相手: 速水佳樹 真面目でやさしい性格。引っ込み思案。
脇役: アヤ 気が強く、正義感も強い。アイドルは「仕事」
ユリ 甘え上手で、あざとかわいい系。
マリル 楽しくかわいくアイドルがしたい女の子。怖がり。
不破美咲 世話好きなお姉さんタイプ。
一倉希未子 娘の幸せを願うあまり口うるさくなってしまうお母さん。
森川翔太 軽くておしゃべり。会話シーンを多用出来る。
山田裕人 ごく普通の男子。基本はいい奴なので、便利に使える。
佐々野涼 強引で男っぽい。そして自信家。
小説という、文字だけで伝えなくてはならない世界。右記のように、二言くらいで説明出来る個性分けをしておくと、あとから困りませんし、読者にとってやさしい文章になります。
私はあまり使いませんが、「渋谷系」「誰風」、そんな大雑把なもので良いのです。自分にとって一番わかりやすい言葉で表し、イメージしましょう。
メインの二人、男性キャラ、女性キャラとそれぞれ解説します。
まず聡子と佳樹。聡子か佳樹、あるいは二人ともが積極的な性格だったら、そこで話は終わってしまうんです。どちらかが会いたいと言って、相手がOKして、ハッピーエンドが目に見えています。読んでいるこっちが、何とかしてあげたくなってしまうほど、恋に対して内気で臆病な二人だからこその恋愛小説。私は、自分のキャラに試練を与えるのが大好きなので、せいぜい悩んでほしいと、似たように自分に自信が持てない二人にしました。
女性キャラ五人のうち、三人は地下アイドルグループ『Cherish』です。聡子はCherishのマネージャーで、当然この三人とのシーンが多く登場します。現実や二次元の女性アイドルもそうですが、ファン層がお目当ての女の子を見つけやすいように、公式から既にキャラクター分けされているのですね。
地下といっても、Cherishはアイドル。それなりに表と裏の顔はありますが、基本的な性格は変わらず、また、聡子には素の部分を見せてくれます。十代後半という多感な時期の少女たちと毎日を過ごす聡子は、自分がしっかりしなければと常に気を張っています。そんな聡子を癒してくれるのが、美咲。美咲も美咲で、不安や焦りを感じていますが、聡子を大切な友達だと認めているからこそ、応援したり慰めたり、たまには叱ってくれる。完全に対等な立場の人間関係なんてありえませんが、聡子と美咲には、それに近い友情を感じます。
聡子のお母さんは説明するまでもないとして、男性キャラに移りましょう。
聡子にとっての美咲同様、裕人も佳樹とは違い、そこそこ男らしい人です。声ヲタクだからというだけで、顔はいいのに閉じこもりがちな佳樹に苛立ち、急き立てるような発言をしたりします。それはもちろん、佳樹にもいい恋愛をしてほしい気持ちの裏返しで、佳樹は裕人のやさしさをわかっています。あらゆる恋愛小説(男女、BL、百合など様々)で描かれがちな、「いい奴枠」ですね。対して、口が軽そうな同僚。そして、キーマンとなる、涼。
涼は、聡子が合コンに参加した時に正面に座っていた人で、聡子を気に入ってぐいぐいとアプローチしてきます。聡子と佳樹にくっついてほしい我々としては、本当に邪魔で腹が立ちます。それが正解なんです。涼は、嫌われてナンボのキャラ。強引で男っぽくて自信家で……なんて、女性向けご都合主義恋愛小説ならありそうですが、この作品においては、ただただ不要、いや、とても重要。涼も、佳樹とは全く違う性格にするのが、成功の秘訣です。
キャラクターの役割を明確にしただけで、もうおおまかな話が出来ましたね。あとはお好みで、このキャラは、既存のあの作品のあの子が、もうちょっと年を取った感じ。とか、自分の中で決めていったり、絵も描ける方は、それを視覚化してもいいと思います。
また、これはあくまで私のやり方なので、必ずしも主人公を軸に肉付けする必要はありません。脇役や展開を先に作り、そこにキャラを当てはめるという方法も、楽しいと思います。




