番外編短編・豆大福
霊媒師の事件が終わり、年があけ、季節は寒い時期が続いていた。茶の間には、こたつを出し、暖かい空間を作った。
私のお腹もかなり大きくなり、動悸や息切れも出てきて疲れやすい時期だった。
家庭教師ち作家業をしている隆さんは、学校に通っている時と比べて時間があり、家事も手伝ってくれて助かった。
「志乃、ただいま」
隆さんが、家庭教師先から帰ってきた。今は教え方が上手だと三上さんの家だけではなく、この町の子供にも何人か勉強を教えていた。
「おかえりなさい」
「おぉ、こうして改めて見るとお腹が大きくなったな」
「もうすぐ臨月ですもの」
まだ、時間は15時ぐらいだった。まだ、夕飯まで時間があり、茶の間でお菓子でも食べる事になった。
なんと、今日は隆さんがお土産で豆大福を和菓子屋から買ってきてくれた。
さっそくお茶を淹れて二人で食べる。
もちもちとした塩がちょっと効いたお餅と豆、それに対して甘い餡子の対比が美味しく、あっという間食べてしまった。
「志乃。意外と食い意地が張ってるな」
「そんな事ないわよ」
窓の外を見ると、雪がちらちらと降っているようだった。でもこの茶の間が温かく、こたつの中にいると天国のいるような気分だ。もっとも天国は神様を賛美する場所ではあるが。
「そういえば、霊媒師の事件の時はこうして二人でおやつ食べられなかったわね」
「そういえばそうだな」
隆さんはゆっくりと茶をすする。そのために煎餅や豆大福などのお菓子用意していたのに、ことごとく邪魔されて居たのを思い出す。
「昔、寒い時期は豆大福を売り歩く事が流行して居たそうだよ。あと、焼き大福なんてものもあったそうだ」
「へぇ。そんなものもあったのね」
「大福は縁起物で食べる人もいるらしいが」
「それはちょっと気持ち悪いわね。こんな美味しいのに!」
笑顔でそう言うと、隆さんに頬をふにふにと触られる。
「え、何?」
「いや、こっちもかなり大福感があつというか」
「え?そう? 太ったかな?」
「そんな事は無いが」
隆さんは、ちょっと苦笑しながらも私の頬を触りつづけ、結局いつものように唇を重ねていた。ようやく、二人でこうしておやつの時間を楽しむ事が出来、いつもより口付けは甘く感じた。
番外編完結です。
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