番外編短編・いつかのハーブティー
結婚して半月がたった。
隆さんと二人で生活は楽しい事も多かったが、結婚式や新居の準備などで忙しく風邪をひいてしまった。
大した風邪ではなかったが、土曜日の午後から具合が悪く寝室で寝込んでいた。
「志乃、大丈夫か」
隆さんは、半ドンだったが、いつもの土曜日より早く帰ってきてくれた。
私は上半身だけ起き、枕元であぐらをかいて座る隆さんと視線を合わせる。
「医者、呼ぶか?」
「いえ、大丈夫」
そうは言っても声が掠れてしまった。結局、後で町医者の三上さんを呼ぶ事になった。
その間、隆さんはハンスさんから貰ったハーブティーを作って持ってきてくれた。
「まあ、いい匂い」
湯呑みに注がれた暖かいハーブティーの匂いをかいでいると、風邪もすぐ治りそうな気がする。
「そういえば、出会った頃もこんな風に風邪ひいてハーブティーを作ってくれたわね」
「そうだな」
隆さんは風邪がうつる危険も犯して、汗を拭いてくれたり、氷まくらを作ってくれたりして看病してくれた。
「あのち時、隆さん、本当に素敵だったわ」
出会った頃、風邪をひいた時、一緒に龍神という悪霊を追い出してくれた事を思い出した。
「いやいや、そうでも無いさ」
「本当よ」
私は、珍しくちょっと恥ずかしがっている隆さんを横目に見ながら、暖かいハーブティーを口に含む。
爽やかな口当たりなのに、なぜか甘く感じた。
まだ甘めな新婚生活は始まったばかりだと感じていた。




