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番外編短編・南蛮漬け

 霊媒師の事件が解決してすぐの頃、11月の半ば、塚田から手紙をもらった。


 今は洋食屋や酒屋の仕事をしながら、小説の執筆を頑張っているという事だった。


 小説の新作は、神様を意識したものにすると意気込みも書かれていた。


 塚田の事は心配無いだろうとホッとした。


 手紙には、天ぷらやパエリアのレシピも入っていた。それだけでなく、「エスカベッシュ」という見た事も聞いた事もない料理のレシピが書いてあり、私を大変困惑させた。材料も白ワインやベイリーフやワインビネガーなど未知な名前が書いてある。


「ねえ、隆さん。この料理、どんなものか想像つく?」


 私は書斎で読書をしている隆さんにちょっと話しかけてみた。礼拝が終わった後で、少し時間も開いていた。


「どれどれ。ああ、これは見た事ない料理だな。たぶん、スペイン料理だろう」

「絵も書いてないし、どんなものができるかさっぱりわからないわ。お手上げよ」


 私はお手上げだったが、隆さんはレシピをよく読んで謎を解いてくれた。


「たぶん、これが南蛮漬けの元になったスペイン料理だと思う」

「あ!確かの魚を揚げて酢漬けするところはそっくりね」

「たぶん、南蛮漬けは日本の調味料に置き換えて作られたものだろうな」

「レシピを見ていると南蛮漬けのほうが甘味は強そうね」

「本当に日本で美味しい洋食は、ほとんど外国の宣教師が持ち込んだのかってぐらい多いな」


 そんな話をしていたら、二人とも南蛮漬けが食べたくなってしまった。


 夕飯は南蛮漬けに決定した。


 エスカベッシュという未知の料理はできなかったが、日本人好みの味に定着したと思われる南蛮漬けを作りながら、それはそれで良いだろうと思った。


 今の時代は西洋の文化が多く日本に入り、そのうち日本文化が無くなる事に警鐘を鳴らす知識人もいたが、日本人は外から入った文化を取り入れて、全く別のものにしていくのが上手く国民だ。


 たぶん、日本文化は消える事なくかえって独自なものが生まれるかも知れない。


 南蛮漬けを作りながら、そんな事を思った。

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