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番外編短編・結婚指輪

 クリスマスが終わると、教会の奉仕の仕事は少し暇になった。霊媒師の事件も解決し、穏やかな日々を送っていた。


 神道や仏教が根付く日本では、年末年始は大掃除や様々な飾り付けや初詣で忙しいようだが、私達はせいぜい年賀状作りぐらいしかやる事はない。おい大掃除もするが、新しい歳神様を迎えるという意味は全くない。そもそも神様にはいつも見られているので、掃除もあまり手が抜けないのだ。


 とはいえ、普段手が届かないところも掃除する事になった。年末だからというよりは、牧師さんや隆さんの手が空いているという部分が大きかったが。


 子供達は窓や庭の掃除を担当し、私は牧師館の書斎を掃除する事になった。隆さんは、男手という事で大きなゴミの処理を担当という事に決まる。


 私はさっそく書斎に行くと、牧師さんに細かい指示を貰う。


「それとこの箱の中身は絶対捨てないで下さいね」


 文机の上にある小さな箱を指差してながら、牧師さんが言う。確かに箱の中には手紙類が入っていて大事なもののようだった。


「わかりました。あら、これは指輪?」


 手のひらほどの大きさの箱は、明らかに指輪が入っている物と思われた。私も結婚した時に隆さんに贈られた。結婚指輪ちは別に控えめながらダイヤモンドの石が飾られた指輪も貰い、大切にしていた。


「ええ。これは亡くなった妻の結婚指輪なんです」

「あら。それなら絶対無くしたらダメね」

「実は結婚指輪は明治期にキリスト教関係者が用いたのが始めてなんです。我々もこの件に関しては相当早かったんじゃないかな」


 牧師さんは懐かしそうの指輪のケースを取り上げて、呟く。


 今は、宗教に関係なく結婚指輪は定着している文化だ。私も結婚した時違和感なく、指輪を受け取ったものだが。


「そういえば、誕生石の指輪も人気ですね」


 東京のデパートに行くと、誕生石の広告なども出ていて賑やかなだった。


「志乃さんも隆にまた指輪でも買って貰ったらどうですか?」

「いや、そんな」


 考えてもみない事だった。


「もうすぐ、志乃さんも誕生日でしょう」

「すっかり忘れてたわ」


 年末に誕生日がある事はすっかり忘れていた。去年が、隆さんと箱根に旅行に行ったが今年は子供も生まれるのでそれも難しいだろう。


「まあ、今日は頑張って掃除しましょう」

「そうですね」


 こうして私は、牧師さんと一緒に書斎を掃除した。


 指輪など着飾るものも素敵だが、こうしていつも使う場所が綺麗になる方が気持ちがいい。


 掃除をしていると、指輪や誕生日の事はすっかり忘れてしまった。

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